研究領域 | 水圏機能材料:環境に調和・応答するマテリアル構築学の創成 |
研究課題/領域番号 |
22H04536
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研究種目 |
新学術領域研究(研究領域提案型)
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配分区分 | 補助金 |
審査区分 |
理工系
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
原 光生 名古屋大学, 工学研究科, 助教 (10631971)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2023年度: 2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
2022年度: 2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
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キーワード | 液晶 / モルフォロジー / 湿度応答 / 自己集合 / シリコーン / シリコーン材料 |
研究開始時の研究の概要 |
自然界には潮解・吸湿現象を巧みに利用する動物や植物が存在する。一方で人工材料に目を向けると、潮解や吸湿によって材料は液体化し操作性と純度が低下するため、「潮解を防ぐ」という概念が従来の材料学には存在した。すなわち、材料の機能化に潮解・吸湿現象を利用することは新たな機能創発の可能性を秘めているといえる。本研究では特に、加湿下で自己組織化する高分子材料に着目し、どのような主鎖構造、側鎖イオン種、中和度の材料設計が加湿誘起自己組織化に影響を与えるのかを理解する。本研究を通じて、ナノ水圏の形状やサイズ、配向を自在に制御可能な、革新的な水圏機能材料を創製するとともに、材料機能化の新たな学理構築を目指す。
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研究実績の概要 |
本研究の目的は、潮解・吸湿現象を材料の機能化に取り入れることで、高分子材料の新たな学理を構築するとともに革新的な水圏機能材料を創製することである。具体的には、潮解・吸湿で自己組織化するイオン性高分子材料について理解を深め、ナノメートル周期の水(ナノ水圏)の形状や配向を自在に操作する技術を開発する。 令和4年度は以下のルートに従い合成したアニオン種の異なるイオン性ポリシロキサンを評価した。まず中和度0%のアミノ基含有ポリシロキサンを2官能性シランカップリングから合成し、塩酸や臭化水素酸、ヨウ化水素酸などで中和することでアニオン種を変化させた。これらのポリマーを湿度制御下の各種in-situ測定(X線回折法や水晶振動子マイクロバランス(QCM)法、赤外分光法)にて系統的に自己集合挙動を評価した。その結果、自己集合の秩序や周期サイズ、湿度応答性が周期表の序列に依存しないことがわかった。塩化物イオンとヨウ化物イオンをもつポリシロキサンよりも、臭化物イオンをもつポリシロキサンの方が自己集合体の形成に由来するX線散乱の強度が高かった。塩化物イオンをもつポリシロキサンに関しては、イオン基の第一水和圏に存在する水分子がイオン基あたり1つであることがテラヘルツ分光の結果からわかり、それ以上の水分子が取り込まれる湿度域では自己集合体は崩壊した。よって、第一水和圏の水分子数が自己集合と密接に関わることが示唆された。ハロゲン種の異なるイオン性ポリシロキサンの周期表の序列に従わない原因に関してもテラヘルツ分光測定を積極的に活用して解明していく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
ハロゲン種によって自己集合の秩序やサイズが異なることを見いだすとともに、それらの差異が周期表の序列に依存しないという予期せぬ結果を得た。分子構造が非常に単純であり広く産業展開されているシリコーンにおいてこのような基礎的な知見が埋もれていたことに驚くとともに、シリコーンの新たな学理構築の端緒を得られたことは、本研究の計画段階には想定していない展開であった。 さらに、塩化物イオンを含むポリシロキサンの自己集合に第一水和圏の水分子数が関係するという、ポリシロキサンの湿度誘起自己集合のメカニズム解明にせまる重要な知見が得られた。以上のような経緯により、本研究は当初の計画以上に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
令和5年度は、領域内の班間連携を強化し、テラヘルツ分光や重水加湿赤外分光法、レオメータ測定などの測定法を取り入れる。新学術領域研究の目的に則った共同研究の積極利用により、自身のみでは達成が困難な評価ツールを用い、イオン性ポリシロキサンの湿度誘起自己集合のメカニズムを攻究する。特に、調湿環境において水分子が自己集合にどのような影響を与えているのかをバルク水と比較しながら理解することで、水圏機能材料の主役である水分子のナノスケール空間における挙動の理解に努める。
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