研究領域 | 水圏機能材料:環境に調和・応答するマテリアル構築学の創成 |
研究課題/領域番号 |
22H04543
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研究種目 |
新学術領域研究(研究領域提案型)
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配分区分 | 補助金 |
審査区分 |
理工系
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
後藤 知代 大阪大学, 高等共創研究院, 准教授 (60643682)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2023年度: 2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
2022年度: 2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
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キーワード | 水圏機能 / 水熱合成 / リン酸カルシウム / 水浄化 / 結晶形態 |
研究開始時の研究の概要 |
水酸アパタイト(HAp)は、骨の無機成分として知られ骨補填材として利用されている。さらに、HApは陽陰イオン交換反応およびユニークなタンパク質・分子吸着特性を示す。この特性を利用し、有機および無機汚染物質吸着・除去のための水環境浄化材料として応用が期待されており、機能を高めるためには水環境(水圏)中での反応の理解が重要である。本研究では、HAp結晶を基材とする水環境浄化材料の開発およびその高機能化を目指し、HAp結晶表面や結晶構造中への収着反応に対する水分子の影響を明らかにする。
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研究実績の概要 |
水酸アパタイト(HAp)は、骨の無機成分として知られるリン酸カルシウムの一種であり優れた骨親和性を有する。さらに、結晶表面の露出イオンが吸着サイトとなって作用し、タンパク質や有機分子の選択的吸着反応を示すと期待されるとともに、結晶構造内部のイオンとの陽陰イオン交換反応を示す。これらの諸特性を有するHApは、生体内部のみならず水圏環境下で優れた吸着剤やイオン交換体として機能すると期待される。表面吸着やイオン交換反応は、結晶表面と水圏の反応であることから結晶形態、形状の制御およびそれらと反応との関係の理解が高機能化のための材料設計において重要と考えられる。 そこで本研究では、水環境浄化材料への応用を視野に入れたHAp表面への有機分子やイオンの表面吸着、イオン交換や収着反応における結晶表面での水分子の影響の理解と、水圏機能デザインのための最適な結晶構造、形態、形状の材料設計指針の確立を研究目的とする。 2022年度は、HAp結晶のソルボサーマル合成においてエステル化反応により生成する水と原料との水和反応を利用した合成技術について、繊維状HAp結晶および米状リン酸三カルシウム(TCP)の同時合成を報告した。TCPは通常、水と反応するとHApを生成することから高温焼成などによる固相合成で合成される。しかし本研究では、非水系からの合成条件を検討することでTCPの液相合成を示し、特異な米状の単結晶を得ることができた。繊維状HAp結晶生成の結果とあわせて、これらの研究成果について論文発表や学会発表を実施した。 上述の手法により得られる材料は混合相であるため、単相で生成する条件を探索するとともに、他の液相合成による単相HAp結晶の合成と、その吸着やイオン交換特性の評価を引き続き実施する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、種々の結晶形態を有するHAp結晶の液相合成と、得られた結晶を用いたイオンや分子の吸着特性評価の研究を進めている。2022年度は、特に前者のHAp結晶の合成において合成反応中で水分子を生成させて原料との反応に利用するソルボサーマル合成法により、c軸方向へ伸長したひげ状や繊維状HAp結晶、米状リン酸三カルシウムおよび板状リン酸カルシウム無水物を得ることがで、種々の生成物と合成条件の関係を把握することができた。本手法によりHAp結晶の単相材料を得るまでには至っていないものの、得られた研究成果を国際会議や論文などで発表を行うことができ、今後の吸着試験における候補材料の合成条件を得ることができたことから、おおむね順調と判断する。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、水熱およびソルボサーマル合成による種々のHAp結晶を用いて、無機イオンや分子に対する吸着試験を実施する。最初は、有機分子吸着の傾向がある程度把握できているアスペクト比が異なる針状結晶をソルボサーマル合成により調製し、それらの結晶に対してSr2+などの陽イオンやF-などの陰イオンの吸着試験を実施する。本針状結晶はアスペクト比により比表面積やゼータ電位が異なることが既に把握できており、露出結晶面との関係も考慮して吸着、イオン交換や収着反応を考察する。さらに吸着挙動を分子に広げるとともに、領域内連携を模索し評価物質の対象を広げるなどして研究を進める予定である。
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