研究領域 | 水圏機能材料:環境に調和・応答するマテリアル構築学の創成 |
研究課題/領域番号 |
22H04555
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研究種目 |
新学術領域研究(研究領域提案型)
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配分区分 | 補助金 |
審査区分 |
理工系
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研究機関 | 大分大学 |
研究代表者 |
檜垣 勇次 大分大学, 理工学部, 准教授 (40619649)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2023年度: 2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
2022年度: 2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
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キーワード | 相分離 / ブロック共重合体 / 水溶性高分子 / メソ構造 |
研究開始時の研究の概要 |
生命現象において重要な役割を担う細胞内液滴に代表される液-液相分離が生命科学分野で注目 されており、水圏における親水性高分子のユニークな特性として関心が高まっている。本研究では、両親水性ブロック共重合体が形成する水圏ミクロ相分離構造と水和水の構造について先端計測技術を利用して明らかにし、新たな分子集積体の構造形成機構を解明する。
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研究実績の概要 |
本研究は、両親水性ブロック共重合体水溶液で形成される水圏ミクロ相分離構造と構造形成機構の解明を目指している。今年度は、ナノスケールの双性イオン高分子ドメインに閉じ込められた水の水素結合状態を放射光軟X線発光分光測定、ブロック共重合体水和水の結晶化挙動を示差走査熱量測定により計測し、ミクロ相分離と水和水の状態の相関を研究した。その結果、ミクロ相分離により水和水の水素結合状態が僅かに歪んだ氷様のネットワーク構造となっており、緩やかに水素結合して結晶化が抑制された水和水が形成されやすいことを明らかにした。すなわち、相分離したブロック共重合体の界面近傍の分子鎖に水和している水は、分子鎖の界面への束縛、あるいは界面張力に起因して異常な状態にあることを示している。これらの研究は、新学術領域の研究者との共同研究として実施された。 さらに、水溶性双性イオン高分子であるポリカルボキシベタインが、水、エタノールに可溶で、水とエタノールの混合溶媒に不溶である共貧溶媒効果を発見した。統計力学シミュレーションにより双性イオンの分子構造に応じて水、エタノールとの相互作用が変調され、共貧溶媒効果による分子鎖凝集挙動が変化することを明らかにした。このポリカルボキシベタインの共貧溶媒効果を制御することで、共貧溶媒効果によって特定の溶媒組成において特異的にミクロ相分離が誘導され、溶媒組成と濃度に応じて相分離構造が変化する新たな分子システムを構築することに成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画していた軟X線発光分光測定と示差走査熱量測定によるブロック共重合体水和水の分析を実施し、水和水構造のミクロ相分離による変化を示唆する結果を得た。今年度は実験結果の詳細な解析と学術論文の公開をする予定であり、概ね順調に研究が進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
水溶性ブロック共重合体薄膜の加湿状態における水和状態を中性子反射率測定により研究する。ミクロ相分離構造の周期相当の膜厚である薄膜は、界面張力に応じてミクロ相分離構造が配向すると推測される。加湿により共重合体が水和することで、体積分率と界面張力の変調が協奏的に作用することでモルフォロジー転移や周期構造の配向変化が惹起されると推測している。このように、量子ビームの相補利用により両親水性ブロック共重合体の水和の実態を追求する。 さらに、シミュレーションや理論を専門とする領域研究者との共同研究を発展させ、実験結果から普遍的原理を導く。
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