研究領域 | 水圏機能材料:環境に調和・応答するマテリアル構築学の創成 |
研究課題/領域番号 |
22H04562
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研究種目 |
新学術領域研究(研究領域提案型)
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配分区分 | 補助金 |
審査区分 |
理工系
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研究機関 | 東京理科大学 |
研究代表者 |
根岸 雄一 東京理科大学, 理学部第一部応用化学科, 教授 (20332182)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2023年度: 2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
2022年度: 2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
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キーワード | 金属クラスター / 癌治療 / 新規化学組成 / 親水性機能材料 / 多孔質材料 / 共有結合性有機構造体 / ドラッグデリバリー / 水浄化 |
研究開始時の研究の概要 |
親水性金属NCsは、光線力学的療法における新たな光増感剤として期待されてはいるものの、現状では、1O2の生成効率に課題が残されている。本研究では、申請者らの分離技術を発展させることで、様々な化学組成の親水性金属NCsを高分解能にて単離する。それにより、親水性金属NCsにおける化学組成と電子構造の相関を解明するとともに、1O2を高い効率にて生成し得る親水性金属NCsの創製を実現する。
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研究実績の概要 |
多孔質材料とは内部にさまざまな大きさの空隙を有する物質のことで、身近なものには活性炭やシリカゲル、ゼオライトなどがある。近年、それらに代わる新たな多孔質材料として共有結合性有機構造体(COF)が注目を集めている。COFは官能基の連結により有機分子が規則的に配列した多孔質材料である。我々は今回、1)ドラッグデリバリーに適したCOFと2)水浄化(水から色素を除去)に適したCOF膜を新たに開発することに成功した。 【ドラッグデリバリーに適したCOF】正方形平面型に相当する分子(TAPP)と正方形プリズム型に相当する分子(DPTB-Me)を組み合わせることで、3次元網目構造のCOFを合成することに成功した。このCOFの比表面積は679 m2/gと大きく、内部にさまざまなガスを吸蔵できることが確認された。さらに、解熱剤や鎮痛剤の主成分であるイブプロフェンを対象とした薬剤送達実験を行い、他のキャリア分子と比較してゆっくり薬剤を放出する性質があることを見出した。この性質を利用すると、原因箇所に長期間、薬剤を送り続けることができるので、投薬量や投薬頻度を抑制し、患者の負担を減らすことが可能となる。 【水浄化に適したCOF膜】COFは、細孔サイズやその形状制御が容易という特徴から、分離膜としての応用が注目されている。なかでも、繊維工場などから排出される廃水から、染色に用いられる有機色素のみを高度に分離する染料分離膜としての研究が盛んに行われている。一方で、分離膜の応用に向けては、高い染料除去率を有するだけでなく、優れた水透過率を持つ必要がある。我々は、孔径と機能性を精密に設計し、遊離アルデヒド官能基を有する新規親水性COF担持膜を作製した。このCOF膜は、高い染料除去率と優れた水透過率の両方を併せ持った膜であることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2つの新たな親水性機能材料の作製に成功した。また、本領域の複数の研究者との水に関する共同研究が開始された。これらの事実より、研究は順調に進行していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
上記親水性COFの研究と並行して、親水性金属クラスターの研究も並行して進める。微細な金属コアをもつ配位子保護金属ナノクラスター(以降、配位子保護金属NCs)は、バルク金属では見られないサイズ特異的な構造・物性・機能を示すことから、新規機能性ナノ材料として高いポテンシャルを有している。それら配位子保護金属NCsの中でも、親水性配位子に保護された金属NCs(以降、親水性金属NCs)は、光線力学的療法における光増感剤としての応用が期待されている。しかしながら、親水性金属NCsを従来増感剤の代替材料として利用してゆく上では、一重項酸素(1O2)の生成効率をさらに向上させることが不可欠である。親水性金属NCsの構成原子数と化学組成を厳密に制御できれば、そうした課題の克服された親水性金属NCsの創出が可能であると思われるが、そのためには、混合物として調製される親水性金属NCsを高分解能にて分離する技術が不可欠となる。本研究では、申請者らの分離技術をさらに発展させることで、様々な化学組成の親水性金属NCsを高分解能にて単離する。それにより、親水性金属NCsにおける化学組成と電子構造の相関を解明するとともに、1O2を高い効率にて生成し得る親水性金属NCsの創製を実現する。これらの研究を通して、本領域の目指す、「水圏機能材料構築のための分子集合体の設計と材料構築及び機能分子の構造構築に関する研究(A01班の目的)」と「水圏機能材料のバイオ・環境機能の開拓(A03班の目的の一つ)」に貢献する。
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