公募研究
新学術領域研究(研究領域提案型)
XENON1T実験より太陽アクシオン起源と解釈可能な信号が初めて得られた.これがアクシオン起源であった場合には,3種類の相互作用(電子,光子,原子核との相互作用)の混合と解釈される.背後の物理を明らかにするためには,相互作用ごとに特化した測定が喫緊である.そこでアクシオンと原子核の相互作用のみに特化した「ISAI実験」を立ち上げた.本研究では,検出器の残留BGの起源である残留放射性同位体を削減することで,極低BG化を達成させる.さらに,より本質的な対策として,検出器であるSOIPIXの駆動に必要な部材を減らすために,ADC等を内蔵する高機能の「デジタルSOIPIX素子」の開発を行う.
2020年6月にXENON1T実験より太陽アクシオン起源と解釈可能な信号が初めて得られた.アクシオン以外の可能性も残るが,アクシオン起源であった場合には,3種類の相互作用(電子,光子,原子核との相互作用)の混合と解釈される.アクシオンの性質を詳しく調べ,背後の物理を明らかにするためには,相互作用ごとに特化した測定が喫緊である.これを受け,アクシオンと原子核の相互作用のみに特化して検証するために,今年度から開始する科研費を2つ得てISAI実験を立ち上げた.研究代表者独自のイベント駆動型X線ピクセル検出器「SOIPIX」と原子番号57の鉄同位体を使い,太陽アクシオン探査を実施する.今年度は,2023年度から開始するISAIコミッショニングの準備およびパスファインダー実験を行った.(1)大型素子XRPIX7を低バックグラウンドのリジッドフレキボードに組み立てた.読み出しシステムを準備し,最適な動作パラメーターの抽出を行った.(2) 無酸素銅や鉄箔ホルダの製作を行い,カメラを構成する部材がほぼ揃った.(3)XRPIXの準備と並行して,Si-PINホトダイオードを用いたパスファインダ実験を行い,カメラ位置でのバックグラウンドを測定した.(4)東大アイソトープセンターのGe検出器を用いて,リジッドフレキボードの残留バックグラウンドの測定を開始した.(5) デジタルXRPIXの開発を進めた,デジタルXRPIXを構成するコンポーネントのうち,ADC TEGについては動作確認を行い,正常にAD変化できることを確認した.またDAC, BGRについてはTEGの試作を行った.
2: おおむね順調に進展している
先行する2つの科研費で行った準備を引き継ぎ,実際に観測に用いる大型素子の組み立てを行うことができた.また,カメラを構成する部品も順調に製作が進んだ.別の科研費で開始したアンチカウンタの製造も順調である.パスファインダ実験も順調に進展し,バックグラウンド環境の測定も行うことができた.以上から2023年度で行う,コミッショニングと初期観測に向けての準備は順調である.また,デジタルXRPIXの開発についても,ADCの動作確認を行うことができ,DACやBGRのTEGの試作,パターン発生部のHDLでのコーディングも順調である.したがって概ね順調と判断した.
2023年度に行う観測には4つのXRPIX7素子を使用する予定である.2022年度に1つ製造を行ったので,残りの3つの製造を行う.東大アイソトープセンターのGe検出器によるリジッドフレキボードの残留バックグラウンドの測定を行う,この3つの製造にフィードバックをさせる.また4つのXRPIX7素子と,アンチカウンタの準備を終了させる.これにより,観測実験への準備はすべて完了であるので,コミッショニングと初期観測を行う予定である.デジタルXRPIXについて,2023年度にADC, DAC, BGRを持つ小型デジタルXRPIXの試作を行う.また,製造のためのウェハの導入も行う予定である.
すべて 2023 2022
すべて 雑誌論文 (8件) (うち国際共著 4件、 査読あり 7件、 オープンアクセス 6件) 学会発表 (30件) (うち国際学会 2件) 図書 (1件)
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