研究領域 | 地下から解き明かす宇宙の歴史と物質の進化 |
研究課題/領域番号 |
22H04577
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研究種目 |
新学術領域研究(研究領域提案型)
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配分区分 | 補助金 |
審査区分 |
理工系
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研究機関 | 東京理科大学 |
研究代表者 |
加藤 ちなみ 東京理科大学, 創域理工学部先端物理学科, 助教 (40850946)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
留保 (2024年度)
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配分額 *注記 |
2,600千円 (直接経費: 2,000千円、間接経費: 600千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | ニュートリノ / ニュートリノ集団振動 / 超新星爆発 / ニュートリノ振動 |
研究開始時の研究の概要 |
大質量星が進化の最後に起こす超新星爆発から放出されるニュートリノは、爆発の内部の高温・高密度下の物理を含んだ貴重な情報源である。本研究では、超新星爆発のメカニズム解明のために超新星ニュートリノ観測に注目し、その現実的な理論予想に向けて課題となっている「ニュートリノ集団振動」をテーマとする。集団振動はニュートリノ同士の相互作用によって誘起され、超新星ニュートリノの観測予想や爆発のダイナミクスに影響を与える可能性がある。そこで、本研究では高密度な物質下におけるニュートリノ集団振動の非線形挙動を調査し、その結果をもとに集団振動が超新星ニュートリノスペクトルに与える影響について議論する。
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研究実績の概要 |
本年度は、超新星爆発や連星中性子合体などの高エネルギー現象において重要視されているニュートリノ集団振動の非線形挙動に関する研究を行った。具体的には、高密度物質下において、物質によるニュートリノの吸収・放出反応がニュートリノ集団振動の非線形挙動に与える影響の調査と、衝突不安定型集団振動によるニュートリノフレーバーのスワップ現象のダイナミクスの解明を行った。 前者の研究では、物質によるニュートリノの吸収・放出反応が集団振動の非線形挙動に与える影響をいくつかの状況下で調査した。結果として、初期フェーズは集団振動による不安定的なフレーバー変換により熱平衡から離脱していき、不安定が落ち着いた後期では物質による吸収・放出反応によって熱平衡状態へ向かっていくという進化が一貫してみられた。この一連の進化にはエネルギー依存性があり、主に高いエネルギーのニュートリノほどより大きなフレーバー変換が起こるため、後期の物質による反応を通して、集団振動がない場合よりもより多くの熱を物質に与えることができることを示した。これは、超新星爆発などのダイナミクスに影響を与える可能性がある重要な結果である。 後者の研究では、ニュートリノと物質の反応によって不安定的にフレーバー変換が起こる衝突不安定型集団振動に注目した研究を行った。そして、「フレーバースワップ」と呼んでいる大変面白い現象が発見された。これは、電子型と重レプトン型のニュートリノが初期状態と終状態で完全に入れ替わるという現象である。電子型と重レプトン型のニュートリノでは超新星爆発などのダイナミクスにおける役割は全くことなるため、これらの関係を大きく変えるフレーバースワップの発見は超新星爆発や連星中性子合体の研究にとって非常に重要である。本研究では、このフレーバースワップの起こりうる条件やダイナミクスを解析的に明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度はニュートリノ集団振動の非線形挙動に関する非常に面白い現象(フレーバースワップ)が発見されたため、当初の予定を変更して本現象の誘発条件やダイナミクスの解明などに取り組んだ。予定は変更したが、本現象の解明は当初の目的である超新星爆発や連星中性子合体のダイナミクスに集団振動が与える影響の調査の一環であり、しっかりと同目標に向かって進展している。
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今後の研究の推進方策 |
今年度も引き続きニュートリノ集団振動の非線形挙動に関する調査を行う予定である。まず、エネルギー交換を行うニュートリノ-物質散乱が集団振動の非線形挙動へ与える影響の調査を行う。具体的に超新星爆発や連星中性子合体においては、電子とニュートリノの散乱がこれに対応している。物質とのエネルギー交換があることにより、吸収・放出反応と同様に非線形挙動が本反応がない場合から大きく変更されると予想される。そこで、電子-ニュートリノ散乱が集団振動の非線形挙動に与える影響の調査を行い、超新星爆発などのダイナミクスへの影響について議論する。 また、非一様なバックグラウンドにおけるニュートリノ集団振動が持つ「乱流的な性質」にも注目する。非一様なニュートリノバックグランドに対してニュートリノ集団振動を取り入れたニュートリノ輸送計算を行うと、準定常になった際に波数空間に特徴的なスペクトルが現れる。このスペクトルは乱流におけるコルモゴロフ型スペクトルと非常に似ている特徴を示しており、乱流理論における解析手法が集団振動に対しても適用可能であると考える。そこで、非一様バックグラウンドにおける集団振動の数値計算を行い、それに対して乱流解析を行うことで、非一様バックグラウンドにおける集団振動の波数スペクトル形成のメカニズムの解明や準定常状態の予想などに取り組む予定である。
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