研究領域 | 地下から解き明かす宇宙の歴史と物質の進化 |
研究課題/領域番号 |
22H04578
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研究種目 |
新学術領域研究(研究領域提案型)
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配分区分 | 補助金 |
審査区分 |
理工系
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研究機関 | 国立天文台 |
研究代表者 |
鷲見 貴生 国立天文台, 重力波プロジェクト, 特任助教 (30822283)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
6,500千円 (直接経費: 5,000千円、間接経費: 1,500千円)
2023年度: 3,250千円 (直接経費: 2,500千円、間接経費: 750千円)
2022年度: 3,250千円 (直接経費: 2,500千円、間接経費: 750千円)
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キーワード | 雷 / 地下実験 / ニュートリノ実験 / 暗黒物質探索実験 / 重力波実験 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、神岡付近で発生する雷雲・落雷を電磁場・音波・放射線など多角的な手法で観測し、その情報を神岡地下で行われているニュートリノ実験、暗黒物質探索実験、重力波実験といった様々な世界最先端の宇宙素粒子実験、および気象研究に活用する。例えば、地下実験では非常に微弱な信号や稀過程を探索するため、落雷による突発性雑音や雷雲による接地電位の変動が問題となりうる。そのためこれらをモニターすることは重要である。また近年、雷雲による放射線現象を研究する高エネルギー大気物理学という分野が発展しており、神岡地下実験と組み合わせることで雷雲起因のニュートリノなど新たな発見が得られると期待できる。
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研究実績の概要 |
2022年度の研究実績は以下の通りである。 磁場観測においては、前回公募課題(20H05256)で構築したデータ取得系の設定(クロック、サンプリング周波数など)を改善し、地上データと地下データをイベントごとに直接比較解析を行った。その結果、地面の表皮効果により期待される高周波ほど減衰するようなイベントの他に、地上と地下でまったく違いがないイベントや、地下の方が信号が大きいイベントなども見られた。このような現象は落雷の位置、伝搬経路、地形などの組み合わせによるものではと考え、現在より詳細な解析を進めている。また、神岡近傍の雷ではないが、2022年1月15日のトンガ海底火山噴火において、これに伴う火山雷の大量発生によって生じた磁場信号を神岡地下で検出した。 音波換装においては、神岡地上の2か所(茂住、跡津)に新たにインフラサウンドセンサーを設置した。またデータ収集・前処理のプログラムを構築し、2022年夏から安定的に観測運用を行っている。雷鳴インフラサウンドイベントを目視レベルで確認することもできており、これを自動化するパイプラインの構築に取り組んでいる。 放射線観測においては、地上に雷雲ガンマ線検出器を設置し、データ取得を行った。本年度は夏季・冬季ともに観測地点直情での雷放電事象はなく、雷雲ガンマ線と思しき事象は見つかっていない。降雨によるラドン娘核線量の増加は確認された。 その他、気象観測および地下水観測は継続しており、計画研究B01班の地下環境中性子フラックス測定との比較・議論も行った。空間電場観測においてはセンサー読み出しの準備中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実績の概要に記載の通り、それぞれの観測を順調に開始もしくは継続できている。解析についても、決定的な成果・結論には至っていないものの多くの知見が得られており、途中の進捗としては妥当と考えられる。 KAGRAの重力波観測開始が当初予定の2022年秋から2023年5月に延期されたため、落雷による雑音の評価は実施できていないが、そのための準備は整っており翌年度中の実施が見込めるため、本研究課題の進捗としては妥当と考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き磁場観測、気象観測、地下水観測、音波観測、放射線観測を継続して行う。また音波観測地点の増強および空間電場観測の開始を実現する。 データ解析においては、落雷位置情報を用いた地上/地下の磁場比較、雷鳴インフラサウンド検知の自動化と位置・エネルギー推定、雷雲ガンマ線探索、およびKAGRA重力波観測における落雷雑音の評価を行う。また、新学術領域内の他の研究課題・研究者との協力も引き続き継続していく。
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