研究領域 | ハイパーマテリアル:補空間が創る新物質科学 |
研究課題/領域番号 |
22H04597
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研究種目 |
新学術領域研究(研究領域提案型)
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配分区分 | 補助金 |
審査区分 |
理工系
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研究機関 | 九州工業大学 |
研究代表者 |
渡辺 真仁 九州工業大学, 大学院工学研究院, 教授 (40334346)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
2022年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
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キーワード | 準結晶 / 近似結晶 / 結晶場 / 磁気秩序 / 希土類 / 磁気異方性 / 希土類原子 / 動的磁気構造因子 / 20面体 / 非共線・非共面磁気構造 |
研究開始時の研究の概要 |
希土類系準結晶と近似結晶の結晶場を理論的に解明し、結晶場基底状態の磁気異方性を明らかにする。磁気異方性の効果を取り入れた有効磁気模型を構築し、20面体、近似結晶、準結晶の磁気構造を解明する。
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研究実績の概要 |
準結晶には並進対称性がなく、周期結晶では許されない回転対称性をもつ。そのような結晶構造のもとでどのような電子状態が実現し、物性を発現するかは不明な点も多く、その解明は現代科学のフロンティアである。特に重要な問題として、準結晶において磁気長距離秩序が実現するか否かはこれまで未解決であった。最近、希土類系準結晶Au65Ga20R15 (R=Tb, Gd)において強磁性長距離秩序が実験により発見され、大きな注目を集めている。 理論的には、これまで準結晶および近似結晶における結晶場の理論が存在せず、強相間電子状態、特に磁性の理解を妨げていた。最近、希土類系準結晶および近似結晶一般の結晶場の理論が点電荷モデルにより研究代表者によって定式化された。これにより、結晶場の微視的な理論解析が可能となった。本年度はこの枠組みをAu-SM-Dy系準結晶(SM=Al, Ga, Si, Ge)および近似結晶に適用し、結晶場の理論解析を行った。これにより、結晶場エネルギー準位および固有状態が理論的に明らかとなった。さらに、結晶場基底状態の磁気モーメントの主軸、すなわち磁気容易軸を理論的に明らかにした。 さらに、結晶場基底状態の磁気異方性をとりいれた有効磁気模型を構築した。これにより、結晶場の効果を正確に考慮した理論解析が初めて可能となった。この理論模型をCd5.7Yb型の準結晶に適用し、基底状態を数値計算により求めた。その結果、20面体の12個の頂点に位置する希土類サイトの磁気モーメントが非共線・非共面的に配列した、フェリ磁性の磁気構造が一様な強磁性秩序を形成することを見出した。本年度はこの強磁性秩序相における動的励起の性質の理論的解明に取り組んだ。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Au-SM-Dy系準結晶(SM=Al, Ga, Si, Ge)および近似結晶の結晶場を点電荷モデルに基づいて理論解析し、結晶場エネルギーと固有状態を求めた。さらに、結晶場基底状態の磁気容易軸を明らかにした。さらに、結晶場基底状態の磁気異方性をとりいれた有効磁気模型を構築し、20面体、近似結晶、準結晶に適用して基底状態の理論解析を進めている。また、有効磁気模型の理論解析により見出した、準結晶の磁気長距離秩序相における動的磁気構造因子の理論解析も進めており、一様な強磁性秩序相における動的磁気励起の性質を理論的に明らかにした。全体的に順調に研究が進捗している。
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今後の研究の推進方策 |
今年度明らかにしたAu-SM-Dy系準結晶の結晶場および結晶場基底状態の磁気異方性を取り入れた有効磁気模型を構築し、準結晶および近似結晶に適用し、磁気構造を理論的に明らかにする。理論解析により得られた磁気構造、および動的磁気構造因子を実験研究者に提示し、今後の実験による磁気構造の観測にむけて、実験研究者と密接に連携して研究を推進していく。
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