研究領域 | 蓄電固体デバイスの創成に向けた界面イオンダイナミクスの科学 |
研究課題/領域番号 |
22H04611
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研究種目 |
新学術領域研究(研究領域提案型)
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配分区分 | 補助金 |
審査区分 |
理工系
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
本山 宗主 九州大学, エネルギー研究教育機構, 准教授 (30705752)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
6,500千円 (直接経費: 5,000千円、間接経費: 1,500千円)
2023年度: 3,250千円 (直接経費: 2,500千円、間接経費: 750千円)
2022年度: 3,250千円 (直接経費: 2,500千円、間接経費: 750千円)
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キーワード | Li金属 / 酸化物系固体電解質 / 析出溶解 / 静水圧 / 酸化物系無機固体電解質 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では電気化学測定を通じ、Li金属と無機固体電解質(SE)の界面近傍で起こる「空孔の発生・拡散・会合」、「空隙の生成・成長・消失」過程に及ぼす静水圧の影響を調べ、解析する。非平衡状態におけるミクロな空隙の動的振る舞いが、マクロな測定値(電流・電圧)に及ぼす影響を理解するための理論を導き、金属とSEから成る固固界面の電極反応速度論を体系化する。本研究の具体的な研究目標は以下の通りである。
1)静水圧環境下で電気化学測定を行う実験手法の確立 2)「空孔の発生・拡散・会合」、「空隙の生成・成長・消失」に及ぼす静水圧の影響を定量解析し、LiとSEから成る固固界面の電極反応速度に関する理論式を導出する。
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研究実績の概要 |
不活性雰囲気を維持したまま、超高静水圧処理装置内で電気化学測定が行える測定システム(装置に適合した大きさのセルの作製、装置内へのセルの移送方法等)を構築した。グローブボックス内でLi6.6La3Zr1.6Ta0.4O12(LLZT)焼結体の両面にLiを蒸着し、Li/LLZT/Li対称セルを構築した。Li/LLZT/Li対称セルを自作のテフロン製治具に固定し、そのままグローブボックス内でラミネート封止した。セルが入ったラミネートパックを超高静水圧処理装置を保有する共同研究者の藪内直明教授(横浜国立大学の)の研究室に送り、測定を行なった。 当初、超高静水圧処理装置内で交流インピーダンス測定を行っても、ノイズが大きく、評価に耐えるインピーダンスデータが取れなかった。そこで、装置内の配線状況を調べ、ノイズ源を除去した。その結果、500 MPaの静水圧を印加しながら、交流インピーダンス測定を行えるようになった。ノイズ源を除去した上で、Liの析出溶解サイクル試験を行った結果、大気圧下に比べ、500 MPaの静水圧下では、過電圧の上昇が抑えられ、サイクル安定性が向上することがわかった。 しかし、500 MPaの静水圧下でもLLZTの短絡が発生することが明らかとなった。これは、対称セルの一方のLi蒸着膜が溶解し、Li箔とLLZTの間にわずかでも空間が生じると、Li箔を押し付けるように圧力が作用しないためと考えられる。(これは一軸圧縮の場合は起こらない。) また、500 MPaを印加する装置に故障が頻発したため、静水圧を180 MPaまで印加できる別の装置を用い、改めて測定を行った。その結果、180 MPaの静水圧下でも短絡抑制効果が認められた。また、静水圧を上昇させるにつれ、界面抵抗(2つのLi/LLZT界面の電荷移動抵抗の和)は減少し、LLZTの抵抗が増大する傾向が認められた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
500 MPaの静水圧環境下でLiの析出溶解サイクル試験を行った。その結果、大気圧下に比べ、過電圧の上昇が抑えられ、サイクル安定性の向上が認められた。すなわち、Liの理想強度(100 MPa程度)より遥かに大きい圧力値の静水圧環境下では、Li/LLZT界面で生じる空隙が即座に消失するため、短絡抑制効果が発現するという計画当初の予想と矛盾しない結果が得られた。
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今後の研究の推進方策 |
静水圧の値を段階的に変え、静水圧が及ぼす影響を評価する。また、Liの析出溶解サイクル試験を行う電流密度とハーフサイクルでの析出溶解時間を系統的に変化させ、静水圧が固固界面のLiの析出溶解反応に及ぼす影響を整理する。
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