研究領域 | 蓄電固体デバイスの創成に向けた界面イオンダイナミクスの科学 |
研究課題/領域番号 |
22H04624
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研究種目 |
新学術領域研究(研究領域提案型)
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配分区分 | 補助金 |
審査区分 |
理工系
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研究機関 | 同志社大学 |
研究代表者 |
土井 貴之 同志社大学, 理工学部, 教授 (30404007)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,940千円 (直接経費: 3,800千円、間接経費: 1,140千円)
2023年度: 2,470千円 (直接経費: 1,900千円、間接経費: 570千円)
2022年度: 2,470千円 (直接経費: 1,900千円、間接経費: 570千円)
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キーワード | 全固体電池 / 界面イオン移動 / リチウムイオン / シリコン負極 / 薄膜 |
研究開始時の研究の概要 |
Si化合物薄膜電極を厚膜化するとLiとの合金化/脱合金化によって生じる応力が増大するが、これを緩和して充放電作動を可能とするために多孔質SiOx薄膜およびSi合金薄膜の組成および形態を検討する。薄膜はRFスパッタリング法により作製する。また、Si化合物薄膜電極と固体電解質の界面に生じる応力を緩和するために、これらの間に固体電解質界面相を導入し、蓄電性能および界面リチウムイオン輸送性能の向上が可能な系を探索する。固体電解質界面相は、予めSi化合物薄膜を電解液中で充放電作動させるか、もしくはスピンコート法により形成し、これを表面が平滑な固体電解質と積層する。
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研究実績の概要 |
全固体電池のエネルギー密度向上には、高い理論容量を持ち低電位で充放電作動するシリコン(Si)負極の使用が効果的であるが、SiはLiとの合金化・脱合金化反応に伴う膨張・収縮の体積変化率が最大300%程度と大きく、その応力が原因でSi負極と固体電解質の界面接合が破壊されるため、充放電サイクル性能が低いことが問題である。酸化物系全固体電池では厚さ1 μm以上のSi負極を充放電サイクルさせることは困難である。そこで、本研究では充放電時の応力を緩和するために気相脱合金法により多孔質Siを作製し、単位面積当たりの放電容量(エネルギー密度)向上を目的として、多孔質Si電極を厚膜化した際の全固体電池特性を調べた。厚さ0.6 μmの緻密なSi薄膜は、1サイクル目に2041 mAh/gの高い放電容量を示したが、20サイクル後には7.1%まで急激に低下した。一方、単位面積あたりのSiの担持量(g/cm2)が等しい厚さ1.2 μmの多孔質Si薄膜は、初回放電容量が1346 mAh/gに留まったが、容量維持率は50サイクル後も85.6%と高く、多孔化により充放電サイクル性能が大幅に改善されることが分かった。さらに2.0 μmtまで厚膜化すると、初期容量は72 mAh/g低下したが、50サイクル後も83.7%の高い放電容量維持率を示し、多孔化により厚膜化が可能であることが実証された。このように、電池活物質の多孔化により、充放電時に活物質内部や固体電解質との界面で生じる応力を緩和することが可能であり、全固体電池のエネルギー密度向上に向けて有効なアプローチであることが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
多孔化技術を発展させて高度な構造制御を行うことが可能となったため、良好な蓄電固体界面の設計に向けて想定以上の見通しが得られた。
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今後の研究の推進方策 |
シリコン多孔体の空隙構造の解析、空隙率の向上、更なる厚膜化。
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