研究領域 | マルチモードオートファジー:多彩な経路と選択性が織り成す自己分解系の理解 |
研究課題/領域番号 |
22H04655
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研究種目 |
新学術領域研究(研究領域提案型)
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配分区分 | 補助金 |
審査区分 |
生物系
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研究機関 | 順天堂大学 |
研究代表者 |
西田 友哉 順天堂大学, 医学部, 准教授 (10581449)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
3,120千円 (直接経費: 2,400千円、間接経費: 720千円)
2023年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2022年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
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キーワード | オートファジー / インスリン / 膵β細胞 / インスリン分泌顆粒 / クリノファジー / 蛍光レポーター / ゲノムワイドスクリーニング / CRISPR/Cas9 / 糖尿病 |
研究開始時の研究の概要 |
膵β細胞内でのインスリン分泌顆粒( Insulin Secretory Granules; ISG)分解の分子機構については未解明であった。我々はそのモニターを可能とする蛍光レポーターを開発した。さらに、CRISPR/Cas9システムと組み合わせ、ゲノムワイドスクリーニングの基礎を確立した。本研究ではISG分解を制御する因子を同定し、個々の因子の機能及び相互作用解析を経て、分解機構の全体像を解明する。さらに、生体内でもISG 分解の評価が可能なモニターマウスを作成してISG分解の評価を行い、同定した制御因子のノックアウトマウスの解析を併せて実施し、ISG分解の持つ病態生理学的意義を解明する。
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研究実績の概要 |
本研究では、インスリン分泌顆粒( Insulin Secretory Granules; ISG)の膵β細胞内分解機構の全容を解明しその病態生理学的意義を明らかにすることを目的としている。 申請者は、膵β細胞由来細胞株を使用し、ISG分解を誘導する適切な条件としてアミノ酸・グルコース飢餓刺激を同定した。次に、そのモニタリングを可能とする蛍光レポーターとしてZnT8-mCherry-EGFPを作製した。当該レポーターはISGがリソソームの酸性環境に取り込まれるとEGFPの蛍光が消退する一方、mCherryの蛍光は残存するため、EGFP/mCherry比の低下によりISG分解を定量することが可能となる。ZnT8-mCherry-EGFPをCRISPR/Cas9システムと組み合わせ、特にマクロオートファジー制御遺伝子に焦点を絞ってノックアウト細胞を作製し、解析を行った。その結果、主要なATG複合体のノックアウトでは、マクロオートファジーの抑制が確認される一方で、レポーターで評価したISG分解の抑制は認められなかった。 この結果から、マクロオートファジーのISG分解への関与は乏しいと考えられたため、ゲノムワイドgRNA導入による遺伝子スクリーニングを実施した。gRNA導入後のアミノ酸・グルコース飢餓刺激によってもISG分解が誘導されないサウ棒群をフローサイトメトリーで濃縮を繰り返し、次世代シークエンサーを用いて導入したgRNAの配列を同定した。この検討においても、マクロオートファジーの制御に関連した遺伝子は同定されなかった。 以上から、ISG分解は従来のマクロオートファジーとは全く異なる機構で制御されていることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
異なる機能複合体であるマクロオートファジー制御因子のノックアウトを用いた検討により、ISG分解の制御にマクロオートファジーの関与が乏しいことが確認できた。また、ゲノムワイドスクリーニングに関しては、2回の実験を行うことで制御因子の同定を試み、それらの遺伝子オントロジー解析を通じてやはりマクロオートファジーとの関連が見られないことが明らかとなった。 これらの進展が見られる一方で、複数の課題が存在する。(1)作製したレポーターを用いたISG分解評価が分解機構の全てを反映したものであるかについては検討の余地がある。分解の形式がリソソームとの膜融合である場合など、形態学的にISG分解を評価できない可能性が考えられる。(2)ゲノムワイドスクリーニングのISG分解不能細胞の濃縮が成功しているかとどうかの検討ができていない。同定された遺伝子を再度、個別に導入することにより、ISG分解が抑制されることを確認する必要がある。また、濃縮過程に関しても、MIN6細胞の増殖は遅く時間を要することから、gRNAの導入と関係なくISG分解の抑制が見られる細胞が紛れ込んでくる可能性が考えられる。したがって、濃縮の効率を上げることによって偽陽性を少なくすることが必要となる。
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今後の研究の推進方策 |
(1)ISG分解の評価方法について再検討する。これまでに報告したZnT8-mCherry-EGFPレポーターでは、ISG分解の評価が十分に行えていない可能性がある。そのため、インスリン分泌顆粒をインスリン分子に対する蛍光レポーターで標識し、さらにリソソームをリソソーム内プロテアーゼに対するレポーターで標識することにより、両者の融合過程をより直接的に観察する。その際には、高分解能であるairscanシステムを用いた超解像共焦点顕微鏡を用いたタイムラプスイメージングを駆使し、リアルタイムでの評価を行う。 (2)リソソームを介した他の分解系の関与を検討する。リソソームによる分解機構に関しては、オートファゴソームのみならずエンドソームや傷害リソソームそのものの分解メカニズムに関する検討が進められている。これらの分子機構に注目し、HOPS複合体やESCRTなど、重要な機能複合体の分子を中心に機能欠損細胞株の作製を進め、(1)と組み合わせてISG分解への影響について検討する。 (3)In vivoでの評価に関する検討を行う。これまでに、生体での全身麻酔下の膵島観察手法について手技を確立していることから、生体での蛍光レポーターを使用したISG分解の直接観察を試みる。
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