研究領域 | マルチモードオートファジー:多彩な経路と選択性が織り成す自己分解系の理解 |
研究課題/領域番号 |
22H04659
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研究種目 |
新学術領域研究(研究領域提案型)
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配分区分 | 補助金 |
審査区分 |
生物系
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研究機関 | 同志社大学 |
研究代表者 |
小林 聡 同志社大学, 生命医科学部, 教授 (50292214)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
5,850千円 (直接経費: 4,500千円、間接経費: 1,350千円)
2023年度: 2,990千円 (直接経費: 2,300千円、間接経費: 690千円)
2022年度: 2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
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キーワード | タンパク質品質管理 / プロテアソーム / オートファジー / 転写制御 / 活性化メカニズム / プロテオスタシス / ユビキチン-プロテアソーム / アグリファジー / 遺伝子発現 / NRF1 / p62 / GABARAPL1 / タンパク質分解 / 選択的オートファジー |
研究開始時の研究の概要 |
細胞内にはタンパク質の品質管理システムが存在し、構造が崩れた異常なものは除去される。この品質管理システムの破綻は、異常なタンパク質の蓄積により神経変性疾患やがんなどを引き起こす。このシステムでは、2つのタンパク質分解システムであるユビキチン-プロテアソーム系とオートファジーが中心的に機能する。本研究では、ユビキチン-プロテアソーム系がタンパク質分解できなくなった場合に、オートファジーが活性化する分子メカニズムを解明する。この知見は、細胞が正常な状態を保つメカニズムの一端の理解につながり、さらには異常なタンパク質の蓄積による上記疾患に対する治療法開発につながることが期待される。
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研究実績の概要 |
ユビキチン-プロテアソーム系とオートファジーは、細胞内プロテオスタシス(タンパク質恒常性)のために、変性した有害なタンパク質を除去する主要なタンパク質分解システムである。プロテアソームの機能不全の場合、細胞は選択的オートファジーの1種であるaggrephagyを活性化することでタンパク質を除去するが、この切替えの分子機構はまだ十分に理解されていなかった。本研究では、プロテアソーム機能不全下でプロテアソーム遺伝子発現を調節することが報告されている転写因子NRF1(NFE2L1)によって、aggrephagyを転写レベルで活性化することを明らかにした。まず、NRF1がオートファジー活性化に関与している可能性を見出した。さらに、ゲノムワイドなトランスクリプトーム解析を実施し、オートファジー関連のp62、GABARAPL1、ULKをNRF1の直接的な標的遺伝子として同定した。そこでNRF1-p62経路の調節機構を解析した結果、NRF1がp62の発現を増加させ、それによってaggrephagyを促進することがわかった。さらに興味深いことに、NRF1は、p62 puncta形成にも関わることを発見した。その詳細なメカニズムは現在解析中である。最後に、NRF1はaggrephagyによるタンパク質分解のためにATG8ファミリータンパク質であるGABARAPL1の発現を上昇することを発見した。我々の発見は、プロテオスタシス維持における、遺伝子調節を介したaggrephagyの新しい活性化メカニズムを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当該年度の成果は、遺伝子調節を介したaggrephagyの新しい活性化メカニズムが明らかにするという当初の研究目的通りに進んでいるため。 具体的な研究成果としては、NRF1がオートファジー活性化に関与することを見出し、さらに、オートファジー関連のp62、GABARAPL1、ULKをNRF1の直接的な標的遺伝子として同定した。NRF1-p62経路の調節機構を解析した結果、NRF1がp62の発現を増加させ、それによってaggrephagyを促進することを明らかにした。また、NRF1はp62 puncta形成にも関わることを発見したが、その詳細なメカニズムは現在解析中である。最後に、NRF1はGABARAPL1の発現を上昇させることで、aggrephagyによるタンパク質分解を促進することを発見した。
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今後の研究の推進方策 |
本研究では、NRF1が選択的オートファジーの1種であるaggrephagyの活性化に関与することが示された。今後の研究方針として、下記2点が重要であると考えている。 1)NRF1によるp62 puncta形成メカニズムの解明 2)NRF1-p62/GABARAPL1経路によるaggrephagy活性化機構のマウス個体での検証 1)に関しては、NRF1が発現誘導する標的遺伝子が、どのようにp62 puncta形成の促進するのか解析する。すでにNRF1標的遺伝子リストをゲノムワイドなトランスクリプトーム解析で同定しているので、その遺伝子リストから解析を進める。 2)に関しては、本研究で同定されたNRF1-p62/GABARAPL1経路によるaggrephagy活性化機構について、今後はマウス個体を用いた検証が必要である。具体的には、肝臓特異的NRF1ノックアウトマウスを我々はすでに作成ずみのため、このマウスにプロテアソーム阻害剤bortezomibを投与することでタンパク質凝集体の蓄積を誘導し、Nrf1ノックダウンによるaggrephagyの機能低下の影響をマウス個体レベルで検証する。 以上の研究を遂行することで、aggrephagyの新たな活性化機構の解明やプロテオスタシス活性化を介した神経変性疾患の治療法開発につながることが期待される。
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