研究領域 | 多様かつ堅牢な細胞形質を支える非ゲノム情報複製機構 |
研究課題/領域番号 |
22H04687
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研究種目 |
新学術領域研究(研究領域提案型)
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配分区分 | 補助金 |
審査区分 |
生物系
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
岸 雄介 東京大学, 定量生命科学研究所, 准教授 (00645236)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
8,580千円 (直接経費: 6,600千円、間接経費: 1,980千円)
2023年度: 4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2022年度: 4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
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キーワード | 神経幹細胞 / クロマチン / Hi-C / シングルセル解析 / Utx / H3K27me3 |
研究開始時の研究の概要 |
組織幹細胞は、発生期を通じてその役割を変化させながら、機能的な組織を構築する。大脳を構築する大脳神経幹細胞は、エピブラスト(胚盤葉上層)から誘導された外胚葉が神経板となり、続いて管状の神経管を形成し、そして最も前側に位置する神経上皮細胞から分化する。本研究では、エピブラストから神経系に誘導されてニューロン・アストロサイトを産生するまでの神経幹細胞の全発生過程における運命転換の基盤となる非ゲノム情報(ポリコーム関連因子、オープンクロマチン領域)の重要性を明らかにすることを目指す。
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研究実績の概要 |
本年度は、ヒストン脱メチル化酵素Utxによる神経幹細胞の非ゲノム制御について解析を進めた。 神経幹細胞の増殖が正しく制御されることは、適切な数のニューロンを産生し、機能的な脳を構築するために必須である。また、脳室に面する脳室体に存在する神経幹細胞は、脳室の制御などを介した脳形成にも寄与する。申請者は抑制性のエピゲノム修飾であるH3K27me3の脱メチル化酵素であるUtxをSox1-Creマウスを用いて神経系で特異的にノックアウトする実験を行ったところ、出産は正常だが、Utx KOマウスは生後1日までにほとんどが致死になることを見出した。致死性の原因を調べるため、胎児の脳切片を作成し観察したところ、脳室が異常に拡張し、水頭症となっていることを見出した。また、神経幹細胞の増殖が有意に低下し、産生されるニューロンの数が低下していた。以上のことから、Utxは神経幹細胞が正しく増殖すること、そして脳室が適切なサイズに保たれることに重要であることがわかった。 それではどのようにしてUtxは神経幹細胞を制御しているのだろうか?そのことを調べるために、Utxノックアウトマウスでの神経幹細胞を回収し、RNA-seqとH3K27me3の分布を調べるためのCUT&Tag実験を実施した。すると、UtxをノックアウトするとDNA複製に関わる遺伝子の発現が低下していること、また発現が低下している遺伝子座において抑制性エピゲノム修飾H3K27me3が増加していることを見出した(Koizumi, FASEB J, 2022)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
神経幹細胞の非ゲノム制御について論文を出版することができた。また、次の論文についての準備も進めているところである。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、神経幹細胞の運命転換におけるクロマチン構造・クロマチン相互作用の重要性についての検討を行う。Hi-C実験などから神経幹細胞の機能を制御するエンハンサーの同定を目指す。
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