研究領域 | 多様かつ堅牢な細胞形質を支える非ゲノム情報複製機構 |
研究課題/領域番号 |
22H04697
|
研究種目 |
新学術領域研究(研究領域提案型)
|
配分区分 | 補助金 |
審査区分 |
生物系
|
研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
高橋 達郎 九州大学, 理学研究院, 教授 (50452420)
|
研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2024-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
|
配分額 *注記 |
8,580千円 (直接経費: 6,600千円、間接経費: 1,980千円)
2023年度: 4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2022年度: 4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
|
キーワード | ミスマッチ修復 / クロマチン / ツメガエル卵抽出液 / DNA複製 / ヒストン修飾 / 塩基アルキル化損傷 |
研究開始時の研究の概要 |
ミスマッチ修復は塩基ミスマッチを修復してゲノム情報の複製正確性を高め、塩基アルキル化損傷にも応答する重要な修復機構である。興味深いことに、ミスマッチ修復の効率はDNAを巻き取る基本構造であるクロマチンの構造、修飾に影響されることが報告されている。これと対応し、ミスマッチ修復機構はミスマッチ周辺のクロマチン構造を排除することができる。本研究では、このクロマチン排除メカニズムがクロマチンの修飾や構造によってどのように影響されるかを、試験管内の再構成実験を用いて解明する。
|
研究実績の概要 |
非ゲノム情報複製はゲノム複製を土台として階層的に動作し、両者は双方向に影響を及ぼし合う。ミスマッチ修復(MMR)はゲノム情報の複製正確性を高め、塩基アルキル化損傷にも応答する重要な修復機構である。本研究では、非ゲノム情報がMMR反応に及ぼす影響を、塩基ミスマッチと塩基アルキル化損傷を対比させつつ解明することを目指した。本研究者はこれまでに、ツメガエル卵核質抽出液を用いて、ミスマッチセンサーであるMutSα複合体がクロマチンリモデリング因子Smarcad1やヒストンシャペロンFACTをDNA上に呼び込み、ミスマッチ周辺のヌクレオソームを排除することを発見していた。さらに本研究者は、この反応の精製タンパク質による再構成を行い、MutSα、Smarcad1がミスマッチに近接したヌクレオソームをリモデルすることを見いだしていた。加えて本研究者は、MMRによる塩基アルキル化損傷応答を、ツメガエル卵核質抽出液を用いて試験管内再現することにも成功していた。本年度は、MutSα、Smarcad1に依存したヌクレオソームリモデリングの分子メカニズムを解析し、これら二因子がヌクレオソームを一方向性に、100 bp以上の長距離にわたって移動させることを、生化学的手法、およびシーケンサーを用いたマッピングによって示した(がん研究所、大学保一博士との共同研究)。さらに塩基アルキル化損傷に伴うミスマッチ修復反応の解析から、予想外にもミスマッチ修復反応における鎖削り込みの方向性を決めるメカニズムを見いだした。これらの成果は、ミスマッチ修復反応がクロマチン構造上で起こる仕組みの理解に寄与する。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度はMutSαとSmarcad1によって起こるクロマチンリモデリングの分子メカニズムをおおよそ理解することに成功した。これによって、FACTなどの補助因子が引き起こす反応の解析の道筋も明確になった。また、塩基アルキル化損傷応答の解析から、予想外にもミスマッチ修復反応の根幹反応である鎖削り込みの方向性決定機構につながる知見を得た。計画通りに進んだ点、当初計画を大きく越えて得られた成果、当初計画通りに進まなかった点を総合すると、おおむね順調に進展していると考えている。
|
今後の研究の推進方策 |
今後は、FACTがリモデリングに果たす役割、およびヒストン修飾など、補助的に働く可能性の高い要素の役割について、試験管内再構成系を用いて解析する。主反応は分かったので、この主反応のキネティクスを指標に、補助機構の役割を調べる。さらに、先年度の解析で予想外に分かったミスマッチ修復反応の鎖削り込み方向性決定機構については、本年度重点的に解析し、論文としてまとめることを目指す。同時にリモデリング解析、塩基アルキル化損傷応答の解析についても論文発表を目指す。
|