研究領域 | 多様かつ堅牢な細胞形質を支える非ゲノム情報複製機構 |
研究課題/領域番号 |
22H04707
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研究種目 |
新学術領域研究(研究領域提案型)
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配分区分 | 補助金 |
審査区分 |
生物系
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研究機関 | 公益財団法人東京都医学総合研究所 |
研究代表者 |
正井 久雄 公益財団法人東京都医学総合研究所, 基礎医科学研究分野, 所長 (40229349)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
8,970千円 (直接経費: 6,900千円、間接経費: 2,070千円)
2023年度: 4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2022年度: 4,420千円 (直接経費: 3,400千円、間接経費: 1,020千円)
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キーワード | グアニン4重鎖 / DNA複製開始 / RNA-DNAハイブリッド / 大腸菌染色体複製 / 環境適応 / グアニン4重鎖構造 / 複製開始 / 大腸菌染色体 / 非ゲノム情報 / 変異 / 組換え |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、非ゲノム情報であるG4/RNA-DNA ハイブリッドが、DNA 複製開始のシグナルとして機能する可能性を検証し、そのメカニズムと生物学的意義について解明する。具体的には、大腸菌のG4/RNA-DNA ハイブリッド依存的複製システムを用いてG4 形成が実際に複製開始に必須かを検証し、複製開始に関与するタンパク質-G4 相互作用を解明する。更にこの複製システムの、生物学的・進化的意義の解明を目指した実験を行う。又、真核細胞においてもG4 依存的DNA複製の可能性を検証する。更に、これらの研究から同定した要素を組み合わせて複製開始を担うことのできる人工レプリコンを開発する。
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研究実績の概要 |
典型的な非B型DNA構造であるグアニン4重鎖(G4)構造は、生物種を問わず普遍的に存在し、その生物学的機能も次々と報告されている。G4は、配列ではなく、形成する核酸形態が重要な役割を果たす。又、G4の形成と崩壊は、生体内でダイナミックに変動している可能性があり、これまで見逃されている重要な非ゲノム情報である。数年前にヒトを含む高等生物の複製起点の近傍に高い頻度でG4形成配列が存在する事が明らかとなり、G4の複製開始における役割が示唆された。研究代表者たちは、G4がDNA複製開始のシグナルとして、あるいは、複製を抑制するクロマチン形成の拠点として機能することを発見した。本研究では、非ゲノム情報としてのG4の細胞内でのダイナミックな形成が、DNA複製開始をどのように制御するか、またその存在がゲノムの安定な維持継承にどのような影響を及ぼすかを解析し、その分子機構と生物学的意義の解明を目指す。本年度、転写プロモーターとG-rich配列(G4形成配列)を連結し、転写に依存して自律的に複製できるユニットを大腸菌ゲノム上で合成生物学的に樹立することに成功した。同様な複製システムが真核細胞で機能するかどうか、また、生物におけるRNA-DNA ハイブリッド依存的なDNA複製システムの生物学的意義を明らかにする。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1) G4/RNA-DNA ハイブリッドに依存したDNA複製機構・生物学的意義の解明 (1)大腸菌の第二のDNA複製開始では、oriT1に存在するG4配列近傍で形成されるRNA-DNA ハイブリッドが重要な役割を果たす可能性を発見した。(2) この複製系はリチウムによる阻害、G4リガンドの影響などから、G4構造の関与が示唆された。(3) T7 RNAポリメラーゼによりG4形成G-rich配列を転写すことによりRNA-DNAハイブリットが効率よく形成され、細胞内およびin vitro(抽出液中)で複製開始が観察された。(4) RNaseH変異株においてRNA-DNA ハイブリッド依存した複製により増殖する場合、変異率が上昇することを発見した。 2)複製開始ユニットの合成生物学的再構成と他システム・生物におけるG4/RNA-DNAハイブリッドによる複製開始の検証 (1) 大腸菌ゲノム上の1箇所のG-rich配列を転写することにより、ゲノム全体の複製、大腸菌の増殖を支持できることを発見した。これは複製開始ユニットを合成生物学的に再構成できることを示す。(2) この複製系はRecAに依存しないが、RNaseHの存在により阻害される。(3) in vitroにおける複製産物の解析から、転写によるRNAから複製が開始していることが示された。(4) 転写依存的複製を動物細胞で検討するため、RNaseH1, RNaseH2の欠損細胞株を樹立した。
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今後の研究の推進方策 |
1) G4/RNA-DNA ハイブリッドに依存したDNA複製機構・生物学的意義の解明 (1) 合成レプリコンの複製がG4に依存するかを、deazadGTPへの置換、リチウムの効果などで検証する。(2) 人工的に形成したR-loop構造を構築し、in vitroでの複製活性を検証する。(3) RNaseH依存性の複製の方向性を決定する。(4) RNA-DNAハイブリッドに依存したDNA複製をRNaseH変異の背景で局所的に誘導し、その部位の変異率を、野生型の複製と比較し、変異率が上昇しているか検討する。 2)複製開始ユニットの合成生物学的再構成と他生物におけるG4/RNA-DNAハイブリッドによる複製開始の検証 (1) 合成複製ユニットの複製を精製タンパク質により再構築する。(2) 本年度樹立したRNaseH欠損の動物細胞において、転写により誘導される一過性複製をDpnI切断により、複製分子を検出する。あるいは、局所的なBrdUの取り込みで複製を検出する。(3)真核細胞のDNA複製の過程において、RNA-DNAハイブリッド依存的DNA複製が、特定の細胞周期に起こっているかを検討する。
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