研究領域 | 細胞システムの自律周期とその変調が駆動する植物の発生 |
研究課題/領域番号 |
22H04716
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研究種目 |
新学術領域研究(研究領域提案型)
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配分区分 | 補助金 |
審査区分 |
生物系
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
中道 範人 名古屋大学, 生命農学研究科, 教授 (90513440)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
7,540千円 (直接経費: 5,800千円、間接経費: 1,740千円)
2023年度: 3,770千円 (直接経費: 2,900千円、間接経費: 870千円)
2022年度: 3,770千円 (直接経費: 2,900千円、間接経費: 870千円)
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キーワード | 植物 / 発生 / 概日時計 / 遺伝子発現ネットワーク / 成長相転換 / 転写因子 / 周期 / 変調 / 花成 |
研究開始時の研究の概要 |
植物が変化する昼夜や季節環境に適応していること, 環境への適応の一環として形態を制御することを考慮すると, 植物はその一生の間絶えず時計を利用して柔軟に発生過程を調節していると考えられる. 本研究は, 申請者が世界に先駆けて開発したユニークな周期調節化合物や整備してきた時計周期変異体の利用によって, これまで見過ごされてきたシロイヌナズナの一生にわたる概日時計による発生制御を明らかにする. 領域内の理論グループとの共同研究にも取り組み, 周期の変調の結果として期待される発生変化を, 周期調節化合物を投与する実験によって実証する.
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研究実績の概要 |
これまでに時計周期変調化合物の処理および周期変異体の解析から、時計は花成ホルモン(FT)に依存しない花芽形成に関与する可能性を見出している。特にPRESUDO-RESPONSE REGULATOR 7 (PRR7)やPRR5の過剰発現体は、茎頂で機能するMADSbox型の花芽誘導転写因子をコードする遺伝子の発現が顕著に上昇していた。 PRR7やPRR5は転写抑制因子として機能することが知られていたが、より包括的にPRR7とPRR5によるMADSbox遺伝子の制御のメカニズムの手がかりを得るため、細胞内の近接標識法によってPRR7の相互作用因子候補を探索した。得られたタンパク質の中に転写抑制活性に関わると想定されるタンパク質を見出した。この因子とPRR7の遺伝学的関係性を調べたところ、因子の変異はPRR7過剰発現体の早咲きなどの表現型をキャンセルした。またこの変異体はPRR7によるMADSbox遺伝子の発現上昇効果を弱めた。 PRR7は朝方の時計関連遺伝子CIRCADIAN CLOCK-ASSOCIATED 1およびそのホモログであるLATE ELONGATED HYPOCOTYLの転写を抑制することが知られていたが、この抑制効果はこの遺伝子の変異によって部分的に解除された。以上のように、PRR7による転写調節や花芽形成制御に必要な因子を見出すことができた。この因子の単独変異も、花成時期の変化が認められた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
時計による成長相転換に関わる新たな経路を見出していたが、その経路の実体は不明であった。本年度は、この経路が恒常的に活性化されていると解釈されるPRR7過剰発現体に着目しつつも、まずはPRR7の分子機能を「相互作用因子」の点から解析したところ、PRR7の転写抑制活性に重要だと推測されるタンパク質が発見された。本研究は、時計による発生イベントの制御の理解を目指したものの、偶然にも時計内部での新たなメカニズムも見出されつつある。新たに分かった分子メカニズムも、時計による発生の制御への経路を考える上で重要な知見となったと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
PRR7には転写誘導活性はないとされるが, PRR7過剰発現体でのMADSbox遺伝子の発現は上昇し, この効果は、PRR7の転写抑制に関わる遺伝子の変異でキャンセルされた. つまり PRR7は間接的にMADSbox遺伝子の発現を制御していると考えられる. この発現誘導の仕組みを理解するために, PRR7-GRやPRR5-GR発現植物を作成しており, 整い次第, トランスクリプトーム解析を実施する. GR融合タンパクの機能を誘導したのちの時系列データの精査から, 新たな「時計―花芽誘導」経路を明らかにする.
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