研究領域 | 細胞システムの自律周期とその変調が駆動する植物の発生 |
研究課題/領域番号 |
22H04730
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研究種目 |
新学術領域研究(研究領域提案型)
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配分区分 | 補助金 |
審査区分 |
生物系
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研究機関 | 福井県立大学 |
研究代表者 |
篠原 秀文 福井県立大学, 生物資源学部, 准教授 (40547022)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
7,540千円 (直接経費: 5,800千円、間接経費: 1,740千円)
2023年度: 3,770千円 (直接経費: 2,900千円、間接経費: 870千円)
2022年度: 3,770千円 (直接経費: 2,900千円、間接経費: 870千円)
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キーワード | 植物 / ゼニゴケ / ペプチドホルモン / 受容体キナーゼ / リガンド-受容体ペア / 受容体 |
研究開始時の研究の概要 |
ゼニゴケ頂端部で特異的に発現するペプチドホルモンの同定と機能解析を通じて、ゼニゴケ頂端部における細胞分裂や細胞分化の調節機構を明らかにする。葉状体分岐、仮根生長、杯状体形成というゼニゴケ特異的な成長制御機構の解明、およびシロイヌナズナ根で機能するペプチドホルモンのゼニゴケオーソログ遺伝子の機能解明を通じて、ペプチドホルモンを介したゼニゴケの新たな細胞間情報伝達機構を明らかにすることを本研究の目的とする。
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研究実績の概要 |
コケ植物ゼニゴケは、周期的な二叉分岐を繰り返しながら平面成長を続け、仮根や杯状体、無性芽などの器官を形成し続ける。この成長には、頂端部の細胞分裂の維持による細胞供給や器官分化のバランス制御が重要であるが、メカニズムは不明な点が多い。被子植物と同様に、ゼニゴケ頂端部の制御にペプチドホルモンと受容体のペアが関わる可能性が考えられたため、ゼニゴケのペプチドホルモンの同定に着手し、ゼニゴケ特有の成長や器官形成に関与する活性を有する3種のペプチドホルモン、およびシロイヌナズナ根で機能するペプチドホルモン2種のゼニゴケオーソログを同定した。これらの遺伝子はすべて頂端部特異的に発現しており、ゼニゴケ頂端細胞の運命変調を司るペプチドホルモン群である可能性が高まった。本研究では、これらゼニゴケペプチドホルモンの情報伝達機構を明らかにすることを目的とした。 当該年度は、ゼニゴケ特異的なペプチドホルモンであるペプチドAの機能解析を進め、ペプチドAノックアウト株が示す分岐頻度が減少する表現型は、ゼニゴケが二叉分岐成長する際に頂端部に形成される器官であるcentral lobeの成長阻害によるものであることを示した。またペプチドAを直接結合する受容体キナーゼを同定し、受容体ノックアウト株が、ペプチドAノックアウトと同様に分岐の頻度が低下し、Central lobeの成長が阻害される表現型を見出した。さらに受容体ノックアウト株はペプチドAペプチドの外的投与に非感受性であることも示した。ペプチドA、受容体とも頂端部で特異的に発現しており、ペプチドAと受容体のペアが、central lobeに作用してゼニゴケ葉状体の分岐を制御するリガンド-受容体ペアであることを示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ゼニゴケ特異的なペプチドホルモンであるペプチドAと受容体のペアが、双方ともゼニゴケ頂端部で特異的に発現することで、central lobeに作用してゼニゴケ葉状体の分岐を制御することを示した。この成果は、ゼニゴケ特異的なペプチドホルモン-受容体ペアによる新しい細胞間情報伝達経路の同定例となったため、論文投稿を準備している。 同じくゼニゴケ特異的なペプチドホルモンであるペプチドBおよびCについても解析を進めている。ペプチドBの外的投与によりゼニゴケ仮根が伸長すること、ペプチドB遺伝子ノックアウト株では仮根の成長が阻害されることを確認しており、ペプチドBがゼニゴケ仮根の成長を正に制御する因子であることを確認している。またペプチドB遺伝子が頂端部と仮根で発現することも確認している。またペプチドC遺伝子ノックアウト株では、無性芽形成の場である杯状体形成が遅れることを確認しており、ペプチドCは杯状体形成を正に制御する因子であることを確認している。またペプチドC遺伝子が頂端部で発現することも確認している。 またシロイヌナズナの根で機能するペプチドホルモン2種のゼニゴケオーソログの機能解析にも着手しており、RGFおよびCIFのゼニゴケオーソログMpRGFおよびMpCIF遺伝子ノックアウト株の作出と表現型解析、および両遺伝子のプロモーターレポーター株の作出と遺伝子発現部位の解析が進行中である。
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今後の研究の推進方策 |
ゼニゴケ特異的なペプチドホルモンであるペプチドBおよびCについて、引き続き機能解析を進める。ペプチドBと仮根伸長との関係性を明らかにするため、過剰発現株や薬剤誘導過剰発現株、仮根特異的プロモーターを用いた異所的発現株の作成と仮根の表現型観察を行う。また仮根の成長制御に関与する植物ホルモンであるオーキシンおよびサイトカイニン関連遺伝子の各種変異株へのペプチドB投与実験を行い、各種ホルモンとのクロストークを確認する。またペプチドCと杯状体形成との関係性を明らかにするため、ペプチドの投与方法を検討するとともに、ペプチドCノックアウト株に頂端部特異的プロモーター下でペプチドC遺伝子を発現させ、杯状体の遅れが相補できるか確認する。加えて双方のペプチドの情報伝達経路解明のため比較トランスクリプトーム解析を行う。ゼニゴケ野生株と、各ペプチド遺伝子ノックアウト株、過剰発現株、ペプチド投与株よりRNAを抽出してRNA-Seqを行い、サンプル間でのGO解析、変動遺伝子のピックアップを行い、情報伝達に関わる因子の同定を目指す。 並行してシロイヌナズナの根で機能するペプチドホルモン2種のゼニゴケオーソログの機能解析も進める。
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