研究領域 | 高速分子動画法によるタンパク質非平衡状態構造解析と分子制御への応用 |
研究課題/領域番号 |
22H04745
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研究種目 |
新学術領域研究(研究領域提案型)
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配分区分 | 補助金 |
審査区分 |
複合領域
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
北尾 彰朗 東京工業大学, 生命理工学院, 教授 (30252422)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
6,630千円 (直接経費: 5,100千円、間接経費: 1,530千円)
2023年度: 3,380千円 (直接経費: 2,600千円、間接経費: 780千円)
2022年度: 3,250千円 (直接経費: 2,500千円、間接経費: 750千円)
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キーワード | アンサンブル / エネルギー地形 / 経路 / 流量 / PaCS-MD/MSM |
研究開始時の研究の概要 |
(1)我々が開発した高効率なシミュレーション法であるPaCS-MD/MSM法を駆使して、構造変化のアンサンブルを生成することで、時分割実験データを補完する1分子データ、アンサンブル、構造変化のエネルギー地形・経路の解析を明らかにする。 (2)分子の結合親和性・キネティックスをPaCS-MD/MSM法などで予測し、更に結合の効果を予想することで、タンパク質を制御する分子の理論的デザイン・改良に寄与する。 (3)得られた結果を統合して、タンパク質立体構造が変化する時系列を多面的に解析し、機能を発揮するメカニズムを解明する。
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研究実績の概要 |
研究目的(1)に関しては、本領域研究で我々が開発したPaCS-MD/MSM法等を応用し、GPCRの一種である代謝型グルタミン酸受容体1型mGlu1を対象に計画研究の清中グループとの共同研究を更に進めた。mGlu1の野生型および変異体T748Wと2種類のリガンド(FITM、FPET)の組み合わせでできる4種類の複合体の構造変化に関して動的立体構造の違いを解析した。その結果、変異型T748Wの場合にFPETとの結合状態においては、特徴的な側鎖2面角の回転が起こることや、塩橋の形成頻度が低下するなど特徴的な振る舞いが確かめられた。また、高速AFMで得られた時系列データに分子シミュレーションで生成した様々な多数の立体構造の中から最適なものを当てはめ、原子解像度時系データを生成する研究では、まずMD計算から得られた原子解像度の立体構造を高速AFMの時系列に当てはめる方法を開発した。次に、これを応用して細菌べん毛タンパク質FlhAの原子解像度の時系列解析を進め、基質輸送と密接にかかわるミリ秒オーダーでの大規模立体構造変化を明らかにすることができた。 (2)に関しては、dPaCS-MD/MSMを用いて、mGlu1からのリガンドの解離シミュレーションを行い、アミノ酸変異とリガンドによって生じる結合親和性の違いを動的立体構造と結合自由エネルギーから定量的に評価した。その結果、4つの組み合わせにおいて、結合自由エネルギー自体にはあまり大きな違いがないことが確かめられた。このことから、FPETがどちらにも結合するものの変異型にとってサイレントアロステリックリガンドとなっていることをうまく説明することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
mGlu1の野生型および変異型T748Wと2種類のリガンドの組み合わせに関する研究や、高速AFMで得られた時系列データに分子シミュレーションで生成した様々な多数の立体構造の中から最適なものを当てはめ原子解像度時系データを生成する研究において、予定した通りの研究が遂行できたので、おおむね順調に進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
今後は昨年度に引き続き、同様の研究を継続する。具体的にはPaCS-MD/MSM法を駆使して構造変化のアンサンブルを生成し、実験との対応関係を調べることで、時分割実験で得られるアンサンブル平均的な時系列と確率過程的に振る舞う個々のタンパク質分子の振る舞いの関係を明らかにすることを目指した研究を行う。立体構造変化や結合や輸送に伴う分子の移動に関わる自由エネルギー地形や各構造変化経路の流量の解析を行い、分子の動きを明らかにする。可能なものについては実験との比較を行い、結果を検証する。結合によってタンパク質の機能を変化させる分子や反応する分子の結合親和性等を予測し、また結合の効果も検証する。具体的には結合の安定性や、結合による機能の変化をシミュレーションから予測する。
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