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光制御型Rasを用いたがん化シグナル伝達機構の原子スケールでの解明

公募研究

研究領域高速分子動画法によるタンパク質非平衡状態構造解析と分子制御への応用
研究課題/領域番号 22H04752
研究種目

新学術領域研究(研究領域提案型)

配分区分補助金
審査区分 複合領域
研究機関神戸大学

研究代表者

島 扶美  神戸大学, 科学技術イノベーション研究科, 教授 (60335445)

研究期間 (年度) 2022-04-01 – 2024-03-31
研究課題ステータス 交付 (2023年度)
配分額 *注記
11,180千円 (直接経費: 8,600千円、間接経費: 2,580千円)
2023年度: 5,720千円 (直接経費: 4,400千円、間接経費: 1,320千円)
2022年度: 5,460千円 (直接経費: 4,200千円、間接経費: 1,260千円)
キーワード時分割構造解析 / 高速分子動画 / がん化シグナル伝達 / 分子動画 / シグナル伝達 / X線自由電子レーザー / 核磁気共鳴法
研究開始時の研究の概要

本研究では、NPEcagedGTP型Rasを用いた先行研究(新学術領域・20H05444;R2~R3年度)で得られた知見「Rasの新規アロステリック構造変化がGTP加水分解反応を誘発・制御する」に係る測定データの解析を完了・研究成果を取り纏めるとともに、(1)量子収率の高い新たな基質GTP(pHPcagedGTPなど)、(2)光応答性Ras蛋白質を設計・使用した新たな光制御法によるRasの酵素触媒反応に基軸を置いた分子動画作製を行う。これにより、がん化シグナル伝達機構を原子スケールで可視化・解明し、最終年度には一連の研究成果を取り纏める。

研究実績の概要

本研究ではがん遺伝子産物Rasにフォーカスし、そのシグナル伝達機構を光制御により原子スケールで解明するために、1)光反応性新規GTPアナログ、2)光反応性Rasタンパク質を設計・作製し、時分割XFEL/SPring-8/NMR測定などの複数の分光法と、分子生物学的手法を駆使して、光制御下でのRasの酵素触媒反応を分子動画作製により可視化するとともに、Rasの生細胞内機能に係る構造ダイナミクスを解析する。得られた知見が、3)シグナル伝達機構解明のための光制御可能な新規分子生物学ツールならびに医薬品開発への応用研究に繋がれば、学際的広がりはもとより社会的インパクトも極めて大きい。よって2022年度は、以下の内容を実施した。
(1)シグナル伝達機構の可視化に適した光反応性新規GTPアナログの選定と入手:pHPcagedGTPからNVOCcagedGTPに変更:①NVOCcagedGTPの合成経路の探索(名古屋大学・清中研究室との共同研究)
(2)Ras/GTPアナログ複合体の結晶化とX線回折による構造確認:pHPcagedGTP・Rasと類似の条件でNVOCcagedGTP・Rasの試験的な結晶化を実施。低分解能ではあるが、当該結晶中において暗状態での自発的なcage離脱が生じていないことを確認。
(3)Rasの酵素触媒反応(パスウェイ)の光制御下NMR測定による外挿:NVOCcagedGTP型Rasの暗状態での初期構造情報を取得するために、1H, 15N_HSQC_NMRを測定し、NPEcagedGTP型Rasとの比較を行った。その結果Gly12のスペクトルに着目すると、R型はNPE(R)cagedGTP型Rasに類似したState 1(Rasの2つのSwitch=薬剤結合ポケット閉鎖)に、一方、S型はポケットが開いたState 2に近い構造をとる可能性が示唆された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

(1)シグナル伝達機構の可視化に適した光反応性新規GTPアナログの選定と入手:
・pHPcagedGTP型RasのX線結晶解析の結果、異なる10条件で作成した結晶のうち分解能が良好であった複数の結晶において、光非照射状態においても光保護基の離脱にともなうGTPの加水分解が起こったと思われるGDP型Rasの電子密度が確認されてしまったため、pHPcagedGTPの使用を断念し、新規GTPアナログNVOCcagedGTPを使用した実験へと速やかに切り替えた。
(2)Ras/GTPアナログ複合体の結晶化とX線回折による構造確認:
・先行研究で使用したNPEcagedGTP(R/S)型Rasならびに、今回新たに作成したNVOCcagedGTP(R/S)型Rasについて、光照射(波長365nm)による光保護基離脱で開始されるGTP加水分解反応の速度を遊離リン酸の検出(GDP型の生成)により比較した。その結果、NVOCcagedGTP型RasについてはR/S型いずれも、NPEcagedGTP型Rasより加水分解の初速が速いことが分かった。一方、pHPcagedGTP型Rasは光非照射下においても徐々に分解しGDP型が産生されることが、生化学ならびに質量分析により明らかになった。
・NVOC(R型)cagedGTP型Rasについて、約300条件で結晶化スクリーニングを行った。その結果、12条件でφ50μM以上のサイズの結晶が得られた。これらについて、光非照射下でSPring-8・BL41XUにおいてX線回折実験を行い(BINDS課題番号:0311)、一部の結晶について(結晶化条件:CS1-15)の構造解析を行った結果、光保護基であるNVOCの電子密度の検出とGTPの加水分解のプロテクトが結晶中で担保されていることが確認できた。

今後の研究の推進方策

・Rasの酵素触媒反応(パスウェイ)の光制御下NMR測定による概想:NVOCcagedGTP型Rasの暗状態での初期構造情報を取得するために、1H, 15N_HSQC_NMRを測定し、NPEcagedGTP型Rasとの比較を行う。
・Rasの酵素触媒反応において現時点で不明なパスウェイ解明のためにキーとなるタイムポイントの同定:2022年度に新たに見出したNVOCcagedGTP結合型Rasの結晶化条件を市販の結晶化スクリーニングキット(約250条件)を用いて最適化する。最適化された条件を用いて結晶化した蛋白質結晶は予備に固体NMRの実験に供し、適切なキーとなるタイムポイントを同定する。
・SACLA/SS-ROXによる上記タイムポイントの時分割動画の作成:上記で決定したタイムポイントにおけるX線回折実験を実施する。
・光反応性RasのNMRによる構造ダイナミクスの解析。

報告書

(1件)
  • 2022 実績報告書
  • 研究成果

    (2件)

すべて 2022

すべて 学会発表 (2件)

  • [学会発表] 低分子量Gタンパク質H-Rasのフリーズトラップ結晶構造解析によるGTPase活性分子メカニズムの追跡2022

    • 著者名/発表者名
      河村高志, 槇野義輝, 長谷川和也, 吉川陽子, 島扶美, 熊坂崇
    • 学会等名
      第95回生化学会大会
    • 関連する報告書
      2022 実績報告書
  • [学会発表] SACLA/SPring-8/NMRを駆使した低分子量G蛋白質Rasno不活性化機構におけるアロステリック構造変化の解明2022

    • 著者名/発表者名
      槇野義輝, 河村高志, 吉川陽子, 南後恵理子, 熊坂崇, 島扶美
    • 学会等名
      第95回生化学会大会
    • 関連する報告書
      2022 実績報告書

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公開日: 2022-04-19   更新日: 2023-12-25  

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