公募研究
新学術領域研究(研究領域提案型)
「奇跡的治癒」が時に生じるのが臨床の場である。脳卒中による重篤な錐体路損傷で完全麻痺だった人々の中には、医師の予想外に回復して、入院治療とリハビリテーション(リハ)後に歩いて退院し、社会生活を送るまでになることがある。こうしたケースが「奇跡」と称されるのは、回復の神経基盤である生体構造の再構成のメカニズムの多様性が科学的に未知だからだ。本研究計画では、脳卒中からの「奇跡的治癒」エピソードとして扱われてきた現象を、超適応-脳の潜在的適応力の再構成-の劇的な表現として捉え、そうした「超回復者」を対象として、神経ネットワークの冗長性に着目した臨床的な研究を行い、「奇跡」を科学的に解明する。
本研究項目では、脳卒中からの「奇跡的治癒」エピソードとして扱われてきた現象を、超適応-脳の潜在的適応力の再構成-の劇的な表現として捉える。そして、その観点から、一部の例外的な脳卒中回復者(「超回復者」)を対象として、神経ネットワークの冗長性に着目した臨床的な研究を行う。この結果として、いわゆる「奇跡」を科学的に解明することを目指す。本研究では、ヒトでの機能的神経ネットワークを非侵襲的かつ定量的に計測する手法として経頭蓋的磁気刺激法(TMS: Transcranial Magnetic Stimulation)を与えて、動的な電磁場パルスの印加に対する脳波(EEG: Electroencephalogram)反応をリアルタイムで計測するTMS-EEG法に加え、経頭蓋的静磁場刺激(tSMS: Transcranial Static Magnetic Stimulation)によって持続的電磁場の印加に対するEEG律動反応の変化をリアルタイムで計測するtSMS-EEG法を用いる。2022年度の成果は以下の通りである。(1) ヒト運動統御に関する研究論文を複数発表した[1, 2]。(2) 脳卒中のリハビリテーション手法を応用して、神経難病のリハビリテーション手法に適用するケースを症例報告した[3, 4]。(3) 超適応に深く関わる「メタ可塑性」および「N-of-1研究」についての総説を発表した[5, 6]。(4) TMS-EEG法について、健常者を対象とした研究を行い、記録解析手法を確立した。(5) 公募班のB05-09(櫻田武)を、ニューロフィードバック手法を、感覚障害のリハビリテーションに用いる新規手法の開発という医学・工学の領域横断的な共同研究を開始した。
2: おおむね順調に進展している
研究1年目には、脳卒中からの「超回復者」を研究することの重要性についての理論的根拠を明確化するとともに、健常者でのTMS-EEG法の記録解析の手法を確立することに成功した。計画通りにおおむね順調に進展している。
2023年度には、脳卒中からの超回復者を対象として、TMS-EEGおよびtSMS-EEGによって神経ネットワークの解析を行う予定である。
すべて 2023 2022
すべて 雑誌論文 (7件) (うち国際共著 2件、 査読あり 5件、 オープンアクセス 5件) 学会発表 (1件)
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