研究領域 | 「生命金属科学」分野の創成による生体内金属動態の統合的研究 |
研究課題/領域番号 |
22H04797
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研究種目 |
新学術領域研究(研究領域提案型)
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配分区分 | 補助金 |
審査区分 |
複合領域
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
天貝 佑太 東北大学, 多元物質科学研究所, 助教 (90773896)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
5,850千円 (直接経費: 4,500千円、間接経費: 1,350千円)
2023年度: 2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
2022年度: 2,990千円 (直接経費: 2,300千円、間接経費: 690千円)
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キーワード | 初期分泌経路 / エクトエンザイム / 亜鉛 / ゴルジ体 |
研究開始時の研究の概要 |
分泌型亜鉛酵素(エクトエンザイム)は、小胞体、ゴルジ体からなる分泌経路を経由する過程で亜鉛と結合し酵素活性を獲得する。エクトエンザイム活性化には亜鉛輸送体が必要であるが、その詳細な分子機構は不明であった。本研究では、複数ある亜鉛輸送体がゴルジ体内の亜鉛濃度分布を制御する機構を高空間分解能で解明するとともに、エクトエンザイムを活性化するプロセスについて細胞生物学と分析化学を組み合わせて解明する。
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研究実績の概要 |
本年度は、特に顕微鏡観察系の改善を行った。40倍空浸対物レンズと、Airyscan2超解像顕微鏡を組み合わせる事で、多検体の生細胞サンプルの高解像度タイムラプス解析できる観察系を確立した。ビオチンの添加により小胞体からゴルジ体へ目的タンパク質を同調輸送できるRUSHシステムを本観察系で解析し、ゴルジ体に局在する複数のZnT亜鉛トランスポーターが、シャペロンタンパク質ERp44のゴルジ体から小胞体への輸送を調節するメカニズムの詳細を解明した。また、コントロールとしてシアリルトランスフェラーゼ6の膜貫通ドメインタンパク質の小胞体からゴルジ体への輸送についても解析したが、ZnTの発現抑制によって変化は見られなかった。このことは、ゴルジ体の亜鉛濃度調節は、小胞体ーゴルジ体輸送全般に影響を与える訳ではない事を意味する。本実験手法は、今後のエクトエンザイム活性化をモニタリングする際にも使用可能である。 ゴルジ体亜鉛濃度分布高分解マップの作成に向けて、既存の亜鉛イメージングプローブの検出方法についてさらなる条件検討を進めた。具体的には、既存の方法では1波長で励起し、その蛍光強度を定量解析していたが、新たな条件では、短波長励起での蛍光強度をさらに検出する事で、レシオ型プローブとして使用できないか検討した。その結果、従来の方法に比べてダイナミックレンジは落ちるものの、レシオ型プローブとして使用可能である事を示唆する結果を得た。今後、上記の多検体サンプル観察法と一連の発現抑制実験を組み合わせる事でゴルジ体中の亜鉛調節メカニズムを解明したい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の計画では今年度中にゴルジ体亜鉛濃度分布の高分解能マッピングを完成する予定であったが、現在までにその条件検討までしか進められていない。また、小胞体からゴルジ体に同調輸送するRUSHアッセイについては、同調の程度が細胞によってばらつきが大きいことが明らかとなり、安定した結果を得るために実験条件や解析方法の検討を重ねる必要があった。ERp44やシアリルトランスフェラーゼをカーゴタンパク質とした解析を重ねた事で、現在では観察系を確立することができた。今後、そのほかのエクトエンザイムについても同様の条件を用いて解析を進める。 以上の進捗状況から、当初の計画よりもやや遅れていると評価した。
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今後の研究の推進方策 |
亜鉛プローブのイメージング方法について、インビトロの解析を進め、定量性とダイナミックレンジについて正確なデータを取得する。その後、生細胞を用いた観察を進めて、ゴルジ体の遊離亜鉛濃度分布をハイスループットに決定する。RUSHアッセイをほかのエクトエンザイムに拡大し、ゴルジ体において亜鉛を獲得する機構についての解析を進める。
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