公募研究
新学術領域研究(研究領域提案型)
本研究では、高精度な第一原理計算・分子動力学計算手法を用いて、呼吸鎖終端酵素であるシトクロムc酸化酵素(CcO)、および、銅・亜鉛スーパーオキシドディスムターゼ1(SOD1)に対して得られている最新の実験結果を検証し、その背後にある反応メカニズムの全貌を明らかにする。特に、2年間の公募研究期間において(1)CcO活性化剤 の作用機序解明、(2)過酸化酸素によって酸化された異常SOD1の構造変化の解明を行い、 生体内金属動態との因果関係を紐解くことで、老化における微量金属の役割を特定する。
本課題では、ミトコンドリアDNA原因での活性酸素(ROS)発生による老化メカニズムにおける主要な金属タンパク酵素であるシトクロムc酸化酵素(CcO)活性化剤のアロステリックな作用機序の解明、およびスーパーオキシドディスムターゼ1(SOD1)の金属除去に伴う構造変化過程の解明を通し、生体内における生命金属動態の分子論的研究を行う。本研究で得られる知見は、老化現象や様々な疾病と生命金属動態との関わりの一端を理論的に解明するものであり、新規治療法や治療薬の開発に寄与することが可能である。本年度は、国立循環器病研究センター新谷らによって発見された新規アロステリック阻害剤とCcOのX線複合体構造から出発して、膜中での分子動力学計算を用いて、その作用機序メカニズムを特定した。この阻害剤はHelix 2と相互作用し、Helix 2の屈曲させることにより、膜内から活性部位への酸素供給を断つことが計算によって示された。また、高電位鉄硫黄タンパク質(HiPIP)の鉄硫黄クラスター周辺の構造環境を変化させ、電子状態および幾何構造に対する周辺のアミノ酸からの影響を解明した。小さなクラスターモデル(FeSクラスターとその周囲のアミノ酸のみ)と、大きなクラスターモデル(FeSクラスターと第2配位圏のアミノ酸を含む)を比較すると、前者のクラスターのサイズは後者よりも大きく膨らんでいることがわかった。つまり、周囲のアミノ酸によってFeSクラスターの幾何構造が大きく制約されていることがわかった。また、Fe原子間でスピンの非局在化と混成軌道形成が確認された。また共同研究として、SOD1については、SO3-の有無による構造の違いの解明に向けて、Apo体の分子動力学シミュレーション、および、Cu、Znサイトの分子力場作成を進めている(A02-1班 古川教授)。次年度に論文化する予定である。
翌年度、交付申請を辞退するため、記入しない。
すべて 2023 2022 その他
すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (8件) (うち国際共著 2件、 査読あり 8件、 オープンアクセス 6件) 学会発表 (8件) (うち国際学会 7件、 招待講演 8件) 備考 (1件)
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