公募研究
新学術領域研究(研究領域提案型)
研究代表者は最近、Fアクチンの反時計方向運動を引き起こすショウジョウバエのミオシンIDおよびシャジクモのミオシンXIがFアクチン集合体であるアクチン・キラルリングを形成することを発見した。アクチン・キラルリングの大きさは細胞の大きさとほぼ同じであり、リング内ではリング幅あたり数百本のFアクチンが束化して反時計方向に運動していた。Fアクチンの集団運動を通しての自己組織化により形成されたアクチン・キラルリングは非常に強固・安定な構造であり,一度形成されると同じ場所で安定に存在した。本研究は細胞キラリティ形成の根源と考えられるアクチン・キラルリング形成・維持の分子機構解明を目的とする。
反時計方向の運動を引き起こすショウジョウバエのミオシンID(DmID)およびシャジクモのミオシンXI(CcXIおよびCbXI-4)が、Fアクチン集合体であるアクチン・キラルリングの生成機構は、以下の1、2の2つの分子機構に要素還元できる。1. DmIDおよびCcXI、CbXI-4がFアクチンを一方向性に湾曲運動させる分子機構2. 一方向性に湾曲運動したFアクチンがアクチン・キラルリングを形成する分子機構これら2つの機構についての分子機構解明を行った。1については、Upper 50kサブドメインおよびLower 50kサブドメインにあるアクチン結合領域の構造が重要であることがわかった。DmIDおよびCcXIのアクチン結合領域にあるCMループとHTH構造は、Fアクチンを繊維軸に沿って運動させる通常のミオシンと比べ、アクチンとの結合が弱いアミノ酸配列で構成されていることが明らかになった。ミオシンのアクチンとの結合箇所はUpper 50kのCMループ、ループ4、ループ2およびLower 50kサブドメインのHTHおよびループ3であるが、CMループとHTHは一方向性に湾曲運動させるため、Fアクチンの繊維軸に対して左側に偏っている。この結合の強さの非対称性がFアクチンを非対称に湾曲させることがわかった。2については、アクチン・キラルリングの形成に必要な条件および形成過程を詳細に明らかにした。必要条件としてはアクチン濃度が0.1mg/mlから0.3mg/mlが最適であった。この濃度で、一方向性に湾曲運動するFアクチンが集団運動することにより、アクチン・キラルリングが形成されることがわかった。
令和5年度が最終年度であるため、記入しない。
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生化学
巻: 95 号: 3 ページ: 374-378
10.14952/SEIKAGAKU.2023.950374
Scientific Reports
巻: 13 号: 1 ページ: 19908-19908
10.1038/s41598-023-47125-5
生物物理
巻: 63 号: 2 ページ: 91-96
10.2142/biophys.63.91