研究領域 | 情報物理学でひもとく生命の秩序と設計原理 |
研究課題/領域番号 |
22H04837
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研究種目 |
新学術領域研究(研究領域提案型)
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配分区分 | 補助金 |
審査区分 |
複合領域
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
田久保 直子 東京大学, アイソトープ総合センター, 特任講師 (60447315)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
留保 (2024年度)
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配分額 *注記 |
3,900千円 (直接経費: 3,000千円、間接経費: 900千円)
2023年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
2022年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
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キーワード | 多細胞動態 / 血管新生 / 細胞動態 / バイオイメージング |
研究開始時の研究の概要 |
本研究の目的は、血管内皮細胞集団のマクロスコピックな動態から血管形成メカニズムを明らかにすることである。具体的には、独自の培養システムを開発して新生血管モデル全体での細胞動態定量観察を行い、血管外部からの細胞流と血管伸長との関係を明らかにする。また、内皮細胞集団が形成する応力場を計測し、細胞群の力学的特性を定量化することで、血管樹状構造と細胞流との力学的相互作用の観点から血管形成メカニズムを明らかにする。さらに、血管外部の細胞流を変化させることで、血管新生を制御する。
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研究実績の概要 |
本研究では、新生血管全体にわたるマクロスコピックな動態を示す細胞集団が血管を形成するメカニズムの解明を目的とした。具体的には、独自の培養システムを開発して新生血管外部を含む血管新生モデル全体での血管内皮細胞動態定量観察を行い、血管外部からの細胞流と血管伸長との関係を明らかにする。また、内皮細胞集団が形成する応力場を計測し、細胞群の力学的特性を定量化することで、血管樹状構造と細胞流との力学的相互作用の観点から血管形成メカニズムを明らかにする。さらに、血管外部の細胞流を変化させることで、血管新生を制御する。 本年度は、血管外部からの細胞流と血管伸長との関係を明らかにするために、独自の培養システムを開発して新生血管モデル全体での細胞動態定量観察を行った。これまでに、C02班竹内一将准教授らとの共同研究を行い、微細加工したジメチルポリシロキサン(PDMS)を用いて細胞外基質の3次元形状制御に成功しており、細胞外基質内でマウス膵臓由来内皮細胞(MS-1)が2次元的な血管様樹状構造を形成することも確認した。本年度は、この培養システムの確立に成功した。開発した培養システムを用いて新生血管モデル全体の内皮細胞動態定量解析を行った。細胞配向や細胞速度場解析を行い、新生血管内外のマクロスコピックな細胞流を定量化した。この結果、新生血管外の細胞流が血管伸長に関係することが示唆された。 本研究成果を第60回日本生物物理学会年会シンポジウムにて発表した(招待講演)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度はC02班竹内一将准教授らとの共同研究を推進し、微細加工したジメチルポリシロキサン(PDMS)を用いて細胞外基質(ECM)の3次元形状制御技術を確立して細胞レベルでフラットなECM端面を得ることに成功した。この技術を用いてマウス膵臓由来内皮細胞(MS-1)が血管様樹状構造を形成する培養システムを確立した。具体的には、細胞培養条件検討を行い、ECM内に細胞が侵入して2次元的な血管様樹状構造を形成することを確認した。この血管新生モデルにおいて内皮細胞動態観察を行った。細胞配向や細胞速度場解析を行い、新生血管内外のマクロスコピックな細胞流を定量化した。この結果、新生血管外の細胞流が血管伸長に関係することが示唆された。 一方、本年度に遂行予定であった血管様構造中における血管構造固有の内皮細胞動態の観察においては、竹内グループとの共同研究でPDMS加工技術を用いたマイクロ流路を作製中である。 また、今年度は対面での第5回領域会議に参加し、多数の領域研究者と交流することができた。自身の研究テーマ関係者だけでなく様々な分野の研究者とつながることができ、研究者としての活動の幅が広がった。 なお、本年度12月より出産・育児のため研究を中断した。
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今後の研究の推進方策 |
第一に、本年度行った血管新生モデルを用いた細胞動態解析を推進する。具体的には、本年度行った実験結果を解析し細胞流がどのように細胞動態や血管伸長に寄与するかを定量的に明らかにする。次に、血管樹状構造形成にはマクロスコピックな細胞流の力学的相互作用が関係すると仮定し、内皮細胞集団が形成する応力場の解析を行う。応力場は細胞配向より算出する予定であるが、不十分な場合は牽引力顕微鏡による計測も検討する。本研究では、特に新生血管の先端や分岐点など血管構造の特異点での細胞流と細胞外基質(ECM)の力学的相互作用に着目し、血管樹状構造形成メカニズムを明らかにする。以上の結果を論文にまとめる。 第二に、血管様構造中における血管構造固有の内皮細胞動態の観察を行う。血管新生における集団内皮細胞動態を定量的に明らかにするために、制御された血管様構造中での内皮細胞動態の定量観察を行う。具体的には、本年度より竹内グループとの共同研究で開発中のPDMS加工技術を用いたマイクロ流路にECMを充填して血管内皮細胞を培養し、その動態をライブイメージングにて観察する。マイクロ流路の幅を血管程度(~10 μm)から徐々に拡張することによって、擬1次元から2次元的に構造が変化する際の細胞流の変化を観察する。特に、ECM有無で内皮細胞動態がどのように変化するか確認する。次に、分岐したマイクロ流路を作製し、分岐構造による細胞流の変化を観察する。以上の定量観察により、血管構造中に固有な内皮細胞動態を明らかにする。
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