研究領域 | 人間機械共生社会を目指した対話知能システム学 |
研究課題/領域番号 |
22H04858
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研究種目 |
新学術領域研究(研究領域提案型)
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配分区分 | 補助金 |
審査区分 |
複合領域
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
升森 敦士 東京大学, 大学院総合文化研究科, 特任研究員 (10870165)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
10,790千円 (直接経費: 8,300千円、間接経費: 2,490千円)
2023年度: 5,070千円 (直接経費: 3,900千円、間接経費: 1,170千円)
2022年度: 5,720千円 (直接経費: 4,400千円、間接経費: 1,320千円)
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キーワード | ヒューマノイド / 模倣 / 自己モデル / 自律性 / ミラーシステム / Imitation / Mimicking / Variational autoencoder / Humanoid robot / Neural network / エージェンシー |
研究開始時の研究の概要 |
人はコミュニケーションを通して社会的なスキルを発達させていく。特に他者の模倣は、新生児が周囲の人の表情や動きのまねをする新生児模倣に始まり、発達のプロセスのなかでも重要な役割を果たす。このような模倣を中心としたコミュニケーションを通して社会環境で他者と共生可能な自己を形成していく。本研究では、模倣を中心としたコミュニケーションを通して自己のモデルを構築し、その自己モデルを参照することで他者の行為や感情の推定を行うモデルを設計する。そのモデルをヒューマノイドに実装して検証し、人の社会で共生可能な対話型知能を構築することを目的とする。
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研究実績の概要 |
本年度は、主に二つの実験について進めた。一つ目の実験は、これまでの研究で用いてきた模倣システムにVariational Autoencoder (VAE) を用いた概念形成をもとにした行為の目的を模倣するためのImitationの回路を追加した実験である。Mimickingモードでは、関節角度を推定することで、人が「どのように」動くかを再現する。Imitationモードでは、変分オートエンコーダ(VAE)の潜在空間の各クラスターの中心を身体運動の概念として位置付け、その象徴的な身体運動を生成することで、人の行為の意味を再現しようとする。実験の結果、Mimickingだけ、Imitationだけで模倣するよりも、これらの戦略を使い分けることで、VAEの潜在空間のクラスターが安定して、かつ身体動作のクラスターと対応することが示された。機械的なHowの模倣(Mimicking)と、身体動作の意味的なWhatの模倣(Imitation)を選択的に使用することで、身体運動の概念形成につながり、さらにそれらの記憶から新たな動きをの探索が生じるといったように発展的に概念形成をおこなっていくことが示唆された。これらの研究成果について国際学会ALIFE2023で発表した。 二つ目の実験は、共通言語を持たないヒューマノイドと人がコミュニケーションを通して共通言語を獲得していく実験である。この実験では、ヒューマノイドが人に何かしらのタスクをおこなって欲しいという意図を持っている状況で、人がヒューマノイドの意図を推定しながら行動していくというフレームワークである。この実験の結果、シンプルなタスクの場合は、人とヒューマノイドの間に身振りや発話による共通言語が生じることが確認できてきている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
模倣を通した自己モデルの獲得、および、人とのコミュニケーションを通した共通言語の獲得という二つの実験について研究を進めることができた。前者の研究成果は国内研究会と国際学会ALIFE2024で発表を行った。また、これらの実験システムについて、文化庁メディア芸術祭大阪中之島展、文化庁メディア芸術祭25周年記念展で公開実験として展示を行うなどアウトリーチ活動も多数行った。研究計画の変更はあったものの、順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
本研究プロジェクトを開始した後に、大規模言語モデルの性能が非常に高くなり研究が盛んに行われるようになってきている、対話知能システムの研究を進めるうえで、このような人と同等以上の対話能力を持ち始めた大規模言語モデルを使用することは非常に重要であると考えられることから、今後は予定していた計画を修正し、大規模言語モデルとヒューマノイドを結つけた対話知能に関する研究を行うことを計画している。
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