研究領域 | 超地球生命体を解き明かすポストコッホ機能生態学 |
研究課題/領域番号 |
22H04879
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研究種目 |
新学術領域研究(研究領域提案型)
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配分区分 | 補助金 |
審査区分 |
複合領域
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
浦山 俊一 筑波大学, 生命環境系, 助教 (50736220)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
7,150千円 (直接経費: 5,500千円、間接経費: 1,650千円)
2023年度: 2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
2022年度: 4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
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キーワード | RNAウイルス / dsRNA / 糸状菌 / 生態 / ウイルス / 持続型RNAウイルス / 圃場 / 環境 / マイコウイルス |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、研究圃場で見出した宿主糸状菌と共存しているRNAウイルスの機能を、室内実験とシミュレーション実験を用いて解明することを目指す。 一般にRNAウイルスは病原体として認識されているが、多くの微生物RNAウイルスは生物に明確な病気を引き起こすことなく、宿主生物と共存している可能性が、近年の環境ウイルス研究の発展により明らかになった。本研究では、研究圃場におけるこのようなRNAウイルスの動態解析から予想されたRNAウイルスの機能を、室内実験によって検証し、数理モデルとして表現することを目指す。これにより、明確な病気を引き起こさないRNAウイルスの生態中での役割に迫る。
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研究実績の概要 |
本研究は、これまでに明らかにしたRNAウイルスの圃場動態とそこから推定されるRNAウイルスの機能を、室内実験で繋ぐことを目指している。これを実現するには、ウイルスの機能に由来する宿主集団内でのウイルス保持率変動に加え、機能以外に由来する保持率変動要因も把握する必要がある。そのため、本研究では①圃場から分離した糸状菌―RNAウイルスセットのうち、環境中での動態が確認でき、特徴的な動態を示すものについてウイルス機能を解析すること、および②宿主を殺さないRNAウイルスの宿主集団内保持率変動要因の洗い出し、の2点が重要なポイントとなる。 先ずウイルスの機能解析に向け、新たな菌株―RNAウイルスのセットについて、機能解析実験に必要な菌株の樹立を進め、解析に使用する3セット中1セットについては準備が整いつつある。先の研究で確立していた菌株については残念ながらRNAウイルスが失われてしまったため、より安定的な維持が可能なウイルスを対象に準備を進めている。 集団内でのRNAウイルス保持率変動要因については、ウイルスの伝播・脱離と、ウイルス機能発現による宿主菌の適応度変化の2要因が重要であると予想される。これを検証しつつ、それぞれの影響を可視化できる実験系を用い、上記2点が主要な保持率変動要因であることを明らかにしつつある。この成果については論文発表の準備を進めている。 本研究で掲げている数理モデルの構築については上記実験データを考慮する必要があり、初年度は特に進展しなかった。しかし、対象を表現する数理モデルの基本構造は確立済みであり、最終年度の後半に最新データを取り入れたモデルを構築する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度は、糸状菌集団中で持続型RNAウイルスの保持率が変動する要因を特定可能な実験系を用い、モデル系を用いた重要要素の洗い出しを進めた。本研究により、宿主集団内でのウイルス保持率変動に大きく寄与する要因が明らかになり、最終年度に予定している分離菌株を用いた集団培養実験を実施し、そのデータからウイルス機能による影響を抽出する準備が整いつつある。 一方、準備していた株からウイルスが失われてしまい、それ以外の菌株を用いて再度ラボ内実験用の菌株樹立を進めたため、菌株樹立については想定より進展が遅れている。しかし、集団培養実験系の簡素化に成功しており、期待される研究の加速を考慮すると目標達成は十分可能であると考える。
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今後の研究の推進方策 |
当初計画通り、圃場で観察された宿主糸状菌―持続型RNAウイルスの動態がどのような原因で起きているのかを明らかにするため、分離した宿主糸状菌―持続型RNAウイルスのセットを用いた表現型解析を実施する。 これまでのモデルを用いた集団培養実験では多くのデータを取得したが、その蓄積の結果焦点を絞った解析が可能になった。実際、これまでの実験系では3週間以上かかったものが、1週間程度で一度の実験を行えるようになっている。このような経験と蓄積に基づくスピードアップを随所で取り入れることでさらなる推進を図る。
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