研究領域 | 「当事者化」人間行動科学:相互作用する個体脳と世界の法則性と物語性の理解 |
研究課題/領域番号 |
22H05210
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研究種目 |
学術変革領域研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
審査区分 |
学術変革領域研究区分(Ⅰ)
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
大黒 達也 東京大学, 大学院情報理工学系研究科, 特任講師 (60886464)
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研究期間 (年度) |
2022-06-16 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
7,540千円 (直接経費: 5,800千円、間接経費: 1,740千円)
2023年度: 3,770千円 (直接経費: 2,900千円、間接経費: 870千円)
2022年度: 3,770千円 (直接経費: 2,900千円、間接経費: 870千円)
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キーワード | 共感 / 内受容感覚 / 身体性 / 気づき / 個性 / 音声 / 情動 / 距離 / 反実仮想 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は,大集団オンライン実験と神経科学実験によって,視聴覚情報(災害動画や音)に対する当事者化の認知基盤を統一的に理解する.具体的には次の2つの研究項目を設定する.【項目1】反実仮想や当事者フィードバックを用いた当事者化メカニズム解明に向けた大集団オンライン実験.【項目2】当事者化に関わる脳・外/内受容感覚システム解明に向けた神経科学実験.そして,これらの知見を用いて当事者化をサポートする手法を開発する.本研究を通して、皆が社会的当事者として真に個性や価値観を共有し合える多様性社会へ貢献する.
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研究実績の概要 |
申請者はまず,聴覚情報(災害や自然音)の当事者化に必要な認知基盤(情動配分)を検証した.その結果,共感,同情,興味,称賛,郷愁のような社会的情動が,当事者性を強めるために重要な情動成分である可能性が示唆された. さらに申請者は,研究計画班の熊谷,綾屋らとともに,研究者(定型発達者)が実験参加者(定型発達者や自閉スペクトラム症者)と会話している際の音声を調べた(大黒,熊谷,綾屋,長井, 2020).音声解析手法は,申請者によって新たに開発した音のリズム階層を可視化するモデルを使用した.これにより,プロソディ,音節,音素といった,音声リズムの階層構造を可視化することができた.研究の結果,実験参加者(対話者)の発話特性に気づいた研究者は,自身の発話を,自閉スペクトラム症者を含む対話者の発話特性に似せて会話していることがわかった(Daikoku, Ayaya, Kumagaya, Nagai, 2023).当事者研究では,少数派側が多数派の法則性の不一致に気づくことが重要と示されてきた(熊谷, 2020).申請者の研究は,多数派側も少数派の法則性との不一致に「気づく」ことで,自発的に相手の特性に合わせるといった,ある種の当事者化行動を示している.この気づきを促す方法として先行研究では,自己や他者の内受容感覚を理解し「共感」を高めることが大切だと示唆している(Imafuku et al., 2020; Fikushima et al., 2011).本課題の他の研究でも,当事者化を起こす要素として共感が重要であることを示した(Daikoku, under rev).これらの結果を受け,申請者は,触覚を通して内受容感覚知覚を高めるデバイスを開発した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
音に対する情動反応を解析することにより,当事者化に必要な情動成分を明らかにすることが目的であったが,新たに,相手への歩み寄りに関係したプロセスを,本研究で新たに開発した音声解析モデルによって明らかにした.また,共感や当事者化には内受容感覚が重要であるという仮説を導き出し,それを検証するための,内受容感覚共有デバイスを開発できた.これらは,本来の計画を超えた成果である.
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今後の研究の推進方策 |
申請者は,本研究を通して,触覚を通して内受容感覚知覚を高めるデバイスを開発した.そして,このデバイスを使って不一致の気づきと共感を高め,当事者化行動を促進できないかと考えた.よって,今後2年間では,これまでの2年間の公募研究で開発したデバイスをさらに改良し,自身や他者の内受容感覚を理解できるシステムを構築する.それを用いて会話することで,対話者の発話特性に自発的に気づき,相手に合わせた当事者化行動を促進するかを明らかにする.
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