研究領域 | 「当事者化」人間行動科学:相互作用する個体脳と世界の法則性と物語性の理解 |
研究課題/領域番号 |
22H05224
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研究種目 |
学術変革領域研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
審査区分 |
学術変革領域研究区分(Ⅰ)
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研究機関 | 帝京大学 |
研究代表者 |
柳原 真 帝京大学, 先端総合研究機構, 講師 (60392156)
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研究期間 (年度) |
2022-06-16 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
7,800千円 (直接経費: 6,000千円、間接経費: 1,800千円)
2023年度: 3,900千円 (直接経費: 3,000千円、間接経費: 900千円)
2022年度: 3,900千円 (直接経費: 3,000千円、間接経費: 900千円)
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キーワード | 小鳥 / 歌学習 / 当事者化 / 歌 / 聴覚 / 運動 / ドーパミン / 聴覚学習 / 運動学習 |
研究開始時の研究の概要 |
小鳥の歌学習は、臨界期における幼鳥が親子間の一回性のエピソードを通して歌の法則性を内在化し、自らも発声を通してコミュニケーションの主体として当事者化する過程といえる。本研究では、中脳ドーパミン神経に焦点をあて、当事者化を支える脳基盤を分子・細胞・神経回路レベルから明らかにする。さらに、社会的隔離による学習障害からの回復を試み、生理学・薬理学・行動学的実験を通して当事者化の実体に迫る。
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研究実績の概要 |
小鳥の歌学習は、臨界期における幼鳥が親子間の一回性のエピソードを通して歌の法則性を内在化し、自らも発声を通してコミュニケーションの主体として当事者化する過程である。本研究では、中脳ドーパミン神経に焦点をあて、当事者化を支える脳基盤を分子・細胞・神経回路レベルから明らかにすることを目的とする。本年度は、当初の計画に沿って、「当事者化の初期段階である親鳥の歌を記憶として内在化する聴覚学習に、高次聴覚野のドーパミンD1受容体の活性化が関与する」との作業仮説を実験により検証した。高次聴覚野から神経活動を計測している最中にドーパミンD1アゴニストを局所投与することで歌に対する聴覚応答が顕著に増強することを見出した。次に、一回性のエピソードが大脳聴覚野の神経回路をどのように変化させるのかを明らかにするために、生後の発達期に父親鳥から隔離飼育することで、親子間の聴覚エピソードの経験をはく奪した幼鳥を使って実験をおこなった。幼鳥の大脳聴覚野から神経活動を計測し、特定の歌の提示とD1アゴニストの投与を組み合わせることで、親子間の一回性聴覚エピソードを代替し、歌の記憶形成が進むかどうかを生理実験によって確かめた。その結果、D1アゴニストの投与直後に提示した特定の歌に対する聴覚応答は顕著に増強し、その応答の増強は少なくとも1時間は持続した。これに対し、D1アゴニストと組み合わせなかった別の歌に対する応答には変化が見られなかった。このことから、親子間の一回性のエピソードを通して歌の法則性を内在化する過程に、ドーパミンD1受容体の活性化が関与することが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の研究計画に沿って研究をおこない、歌法則の内在化にD1受容体の活性化が関わることを見出した。以上より、予定通り研究は順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き小鳥の歌学習の当事者化を支える神経基盤の解明に向けて、歌法則性の内在化過程に関する神経メカニズムの解析を進める。
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