研究領域 | デジタル化による高度精密有機合成の新展開 |
研究課題/領域番号 |
22H05330
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研究種目 |
学術変革領域研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
審査区分 |
学術変革領域研究区分(Ⅱ)
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
美多 剛 北海道大学, 化学反応創成研究拠点, 教授 (00548183)
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研究期間 (年度) |
2022-06-16 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
8,060千円 (直接経費: 6,200千円、間接経費: 1,860千円)
2023年度: 4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2022年度: 4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
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キーワード | カルボキシル化 / 機械学習 / ファインバブル / フロー装置 / 可視光レドック触媒 / 情報科学 / ラジカル反応 / カルボキシル化反応 / ヘテロ芳香環 / 電解反応 / 不斉合成 / エナンチオ選択性 |
研究開始時の研究の概要 |
申請者の研究グループでは最近、電解還元反応を用いることで、CO2が一電子還元されて生じるCO2のラジカルアニオン種が、インドールを初めとするヘテロ芳香環に脱芳香族化を伴いながら導入され、条件によってはさらにもう一分子のCO2と効率的に反応するダブル/モノカルボキシル化反応の開発に成功している。本カルボキシル化反応では、一挙に2分子または1分子のCO2が、安定で反応性の低いヘテロ芳香環に導入され、合成的価値の高い様々なカルボン酸誘導体を合成できる画期的な反応である。この反応の反応性や選択性の向上には、情報科学の利用が役立つことが期待されるため本研究で実施する。
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研究実績の概要 |
情報科学を効率的に利用し、電解ラジカル反応の検討を行った。CO2を用いる不斉電解カルボキシル化はこれまでにいくつか報告されているが、90% eeを超える高エナンチオ選択的な電解カルボキシル化に関しては達成されておらず未解決の課題である。そこで、高い立体選択性で進行する電解カルボキシル化反応の開発を機械学習を取り入れ実施した。エナンチオ選択的な反応として、二座軸不斉リン配位子-パラジウム触媒によるアリル位カルボキシル化を実施したところ、分岐型成績体が中程度の不斉収率で得られた。二座軸不斉リン配位子の電子的、および立体的要因を数値化したものを記述子として用い、機械学習を用いて不斉収率の向上に取り組んだ。HOMO, LUMO, HOMO-LUMOギャップ、配位挟角、二面角、配位子円錐角 、31P NMRのシフト値、%V Free、%V Buriedを記述子として、より高い不斉収率の不斉配位子を予測することが可能であった(63.3% ee)。この配位子を用いて実際に実験を行ったところ、同様の値である62% eeが達成されたものの、それ以上の不斉収率は達成できなかったため、配位子の構造的をダイナミックに変化させて検討を行った。しかしながら、57% eeで頭打ちとなり、これ以上不斉収率を向上させることができなかった。ただ、機械学習が有機合成化学で使用できるツールであることを確認することができた。また、別途β-アミノ酸の合成を目指して、ファインバブルフロー装置の使い方を修得して、CO2を可視光照射下ファインバブルすることで、アミンとアルケンから32%で目的のβ-アミノ酸を得ることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和4年度は、情報科学を活用してエナンチオ選択性な電解カルボキシル化反応の開発に取り組んだ。最初に、軸不斉二座リン配位子-パラジウム触媒によるアリル位カルボキシル化反応を実施し、分岐型成績体が中程度の不斉収率で得られた。その後、電子的、および立体的要因を数値化した記述子を用い、機械学習を活用して不斉収率の向上に取り組んだ。機械学習によって高い不斉収率が予測された配位子(63.3% ee)を用いて実際に実験を行ったところ、62% eeという同程度の値が得られた。しかし、それ以上の不斉収率は得られなかったため、立体構造が異なる配位子を網羅的に試した。その結果、57% eeで頭打ちであり、それ以上の不斉収率の向上は観測されなかった。しかし、機械学習を有機合成化学に応用することができることがわかったため、今後もこの手法を活用する。また、別途β-アミノ酸の合成を目指して、CO2のファインバブルフロー装置の使い方を修得したことも、本プロジェクトの成果である。これにより、今後の研究においても、より効率的な気体の導入法の実現もできるようになった。このように、令和4年度は機械学習を活用することでエナンチオ選択性な電解カルボキシル化反応の開発を進めることができた。さらに、気体の導入手法に関しても新たな手法を手に入れることができたため、今後の進展が期待される。
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今後の研究の推進方策 |
令和5年度は光反応、および電解反応のデジタル化を引き続き取り組む。具体的にはファインバブルフロー装置を購入したため、可視光照射下、ファインバブル発生装置でCO2のファインバブルを発生させ、フローユニットに導入しカルボキシル化反応を行う。フロー装置を用いることで、均一な反応条件の設定が可能であることことから、精度良くデータを収集することができる。具体的にはファインバブルフロー装置を用いて、光ラジカルカルボキシル化反応により、窒素とアルケンを内包した化合物を用いてβ-アミノ酸の合成を行う。令和4年度の検討では、32%の収率で対応するβ-アミノ酸が得られることがわかっているため機械学習を組み込んで収率向上を狙う。また、電解装置を用いた還元的カルボキシル化反応では電子求引性基が導入されたナフタレンにおいて、モノカルボキシル化が選択的に進行することを確認しているため、このデジタル化に向けた検討を行う。加えて、光電子移動触媒/HAT触媒の2触媒共存下で、ギ酸塩からCO2のラジカルアニオンを発生させることが可能で、この活性種が様々なジエンに付加し環化することを新たに見出したことから、本反応条件や基質展開においても機械学習を用いて最も良い反応条件、基質を見出す。
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