研究領域 | デジタル化による高度精密有機合成の新展開 |
研究課題/領域番号 |
22H05331
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研究種目 |
学術変革領域研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
審査区分 |
学術変革領域研究区分(Ⅱ)
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
増田 侑亮 北海道大学, 理学研究院, 助教 (20822307)
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研究期間 (年度) |
2022-06-16 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
8,060千円 (直接経費: 6,200千円、間接経費: 1,860千円)
2023年度: 4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2022年度: 4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
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キーワード | アルケン / ホスホニウム / 光酸化還元触媒 / 自動合成 / 機械学習 / Wittig反応 / データサイエンス |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、アルケニルホスホニウム塩を鍵中間体とする官能基化アルケンの統一的合成法を確立する。光や金属触媒によって発現される特異な選択性を量子化学計算および機械学習により理解し、アルケニルホスホニウムの新規官能基化法を開発する。開発した反応をコードモジュールとし、Wittigオレフィン化反応と組み合わせることで、アルケン類の統一的かつ網羅的な合成法へと昇華する。データサイエンスを駆動力として条件の最適化を行い、フローシステムによる多様なアルケンの完全自動合成を目指す。
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研究実績の概要 |
研究計画に従い、まずはビニルホスホニウム塩を用いた有機分子の炭素ー水素結合アルキル化反応の開発を行った。その結果、アルコールおよびアミンのα位炭素ー水素結合のホスホニオアルキル化反応が光酸化還元触媒の存在下で効率よく進行することを見出した。この反応は続くWittig反応と組み合わせることで、ホモアリルアルコールおよびホモアリルアミンの効率的合成プロトコルとなることもわかった。同時に、本反応を官能基評価キットによって評価し、反応データを収集することで、領域のデータベース構築に貢献した。また、研究目標であるアルケンの自動合成の達成に向けて、この光反応がフロー合成に適用可能であることも確かめた。他のビニルホスホニウムの反応として、不飽和カルボニル化合物の共存による2重付加反応の開発にも着手している。2種類の電子不足アルケンに対して連続的かつ選択的に付加反応を行うことは従来の合成手法では困難であったが、本反応ではビニルホスホニウムの特異なカチオン性によって配列選択的に反応が進行することがわかっており、引き続き検討を行う予定である。これらの反応はアルケニルホスホニウム塩の使用で、従来の選択性・反応性を変革した例であり、領域の研究目的に合致した研究成果であると考えている。引き続き、アルケニルホスホニウムを鍵とする反応開発を進めるとともに、機械学習やデータサイエンスを利用して、これらの反応をモジュールとするアルケンの自動合成へと展開する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の研究計画どおり、ビニルホスホニウムを鍵中間体とする反応の開発を行った。すでに光反応とWittig反応を組み合わせたホモアリルアルコールの合成プロトコルを確立し、学術論文として発表した。原料をアルコールからアミン、エーテル、アルデヒドなどに変えても反応が進行することを確かめており、多様なアルケンの合成プロトコルとして利用できると考えている。さらに光によるアルコールα位のアルキル化反応はフロー合成に適用可能であることも確かめており、連続フロー反応によるアルケン合成への足がかりを作った。以上の結果は、2カ年の研究計画の達成度として50%程度に達していると判断し、初年度の研究進捗としては概ね順調に進展しているとした。また、不飽和カルボニル化合物とビニルホスホニウムへの連続付加反応は、当初の予想を超えた結果であり、次年度も引き続き検討を続ける予定である。
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今後の研究の推進方策 |
今後は「ビニルホスホニウムを鍵とするアルケン合成法の開発」および「アルケンの自動合成への展開」の2つを軸に研究を推進する計画である。すでに、新たな反応としてビニルホスホニウムを用いたアルデヒド炭素ー水素結合の変換反応および配列選択的2重付加反応の開発に成功しており、これらの反応を続くWittig反応と組み合わせることで、本プロトコルによって合成可能なアルケンの種類を拡張する予定である。またビニルホスホニウムに塩基を作用することで、リン上置換基の転位が進行することもわかっており、置換様式の異なるアルケン合成プロトコルについても検討を行っていく。次に、開発したビニルホスホニウムを鍵とするアルケン合成法について、それぞれのフロー化を行う。すでに光反応のフロー化には成功しているため、続くWittig反応との連続反応を検討する。連続反応では反応条件がより多様となることから、温度・時間・当量関係などの数値化可能なパラメータをもとに機械学習を用いたパラレル最適化を行うことで、効率的に反応条件の検討を行っていく。同時に基質毎の反応条件をデータとして蓄積することで、新たな反応基質に対してはより効率的に最適条件を割り出すことができると考えている。ビニルホスホニウムを鍵とするアルケン合成においてフロー合成化と基質範囲の拡大が実現できれば、望みのアルケンを自動合成するシステムの構築に向けて検討を開始する予定である。
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