研究領域 | デジタル化による高度精密有機合成の新展開 |
研究課題/領域番号 |
22H05370
|
研究種目 |
学術変革領域研究(A)
|
配分区分 | 補助金 |
審査区分 |
学術変革領域研究区分(Ⅱ)
|
研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
國信 洋一郎 九州大学, 先導物質化学研究所, 教授 (40372685)
|
研究期間 (年度) |
2022-06-16 – 2024-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
|
配分額 *注記 |
8,060千円 (直接経費: 6,200千円、間接経費: 1,860千円)
2023年度: 4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2022年度: 4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
|
キーワード | C-H結合変換 / 位置選択性 / エナンチオ選択性 / 非共有結合性相互作用 / データサイエンス |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、我々が精力的に研究を行ってきた位置選択的なC-H結合変換反応開発の経験と知見を活かし、触媒と光学活性な添加剤、基質と光学活性な添加剤、触媒と基質、それぞれの間に働く非共有結合性相互作用を利用することで、位置選択的かつエナンチオ選択的なC-H結合変換反応を開発する。反応開発で得られるポジティブおよびネガティブなデータをデータベースに提供し、機械学習により提供される触媒設計指針を実験にフィードバックし、再び触媒の合成と反応について検討する、という一連の作業を繰り返すことで、高い位置選択性やエナンチオ選択性を有するC-H結合変換反応を開発する。
|
研究実績の概要 |
本研究では、触媒と光学活性な添加剤、基質と光学活性な添加剤、触媒と基質、それぞれの間に働く非共有結合性相互作用を利用することで、位置選択的かつエナンチオ選択的なC-H結合変換反応を開発することを目的としている。反応開発で得られるポジティブおよびネガティブなデータをデータベースに提供し、データサイエンスを活用するためにA03班の研究者と共同研究を行い、機械学習により提供される触媒設計指針を実験にフィードバックし、再び触媒の合成と反応について検討する、という一連の作業を繰り返すことで、高い位置選択性やエナンチオ選択性を有するC-H結合変換反応を開発する。 我々の最近の報告(ACS Catal. 2022, 12, 3058)において得られた知見をもとに、負電荷を有する金属触媒を利用することで、正電荷を有するアンモニウム基をもつアミノ酸やペプチドの位置選択的なC(sp3)-Hアルキル化反応の開発に成功した。この反応では、触媒と基質間での静電相互作用により、触媒が基質中の正電荷を帯びた官能基近傍のC(sp3)-H結合に接近することで、位置選択的なベンジルラジカルの形成を伴って反応が進行したものと考えている。また、糖類の位置選択的なC(sp3)-Hアルキル化反応の開発に成功した。かさ高い金属光触媒とコンパクトな有機光触媒を使い分けることで、反応点をスイッチできることを明らかにした。 その他にも、独自に開発した三座配位子を有するイリジウム触媒を用いるC(sp3)-Hボリル化反応や、六員環ヘテロ芳香環の求核的な活性化を利用するピリジンやキノリン類の3位選択的なトリフルオロメチル化反応、アニリン誘導体の炭素-窒素結合切断を伴うボリル化反応や脱アミノ化反応の開発に成功した。また、近赤外発光や二重発光を示すπ共役系分子の創製に成功した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2022年度は、本研究における最終目標であるデータサイエンスを活用した触媒設計および合成に基づく高い位置選択性およびエナンチオ選択性を有するC-H結合変換反応の開発に向けて、いくつかの位置選択的なC(sp3)-H結合変換反応を開発することができた。まず、触媒と基質間に働く非共有結合性相互作用を利用することにより、アミノ酸やペプチドの位置選択的なC(sp3)-H結合変換反応を実現した。また、金属光触媒や有機光触媒を用いる糖類の位置選択的なC(sp3)-H結合変換反応の開発にも成功し、それら二種類の触媒を使い分けることで反応点をスイッチできることも明らかにした。 以上の結果より、本研究はおおむね順調に進展しているものと考えている。
|
今後の研究の推進方策 |
2022年度に引き続き、C(sp3)-H結合変換反応におけるエナンチオ選択性制御法の開発を目的に研究を行う。本研究では、異なる二つの触媒デザインによるエナンチオ選択的なC(sp3)-H結合変換反応の開発を行う。1つ目のアプローチとして、アニオン性を有するデカタングステン酸触媒(TBADT)にカチオン性の光学活性な有機化合物を添加し、お互いの静電相互作用により触媒まわりに不斉環境を構築することで、エナンチオ選択的なC(sp3)-H結合変換反応を実現することを想定している。もう一つのエナンチオ選択性制御法として、光学活性なLewis酸もしくはBronsted酸を用いて反応剤を活性化する方法を考えている。この反応系では、光学活性な酸により反応剤まわりに不斉環境が構築されるため、反応性が向上した反応剤への基質由来のアルキルラジカルのエナンチオ選択的な付加反応が進行するものと想定している。
|