研究領域 | デジタル化による高度精密有機合成の新展開 |
研究課題/領域番号 |
22H05380
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研究種目 |
学術変革領域研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
審査区分 |
学術変革領域研究区分(Ⅱ)
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
藤波 美起登 早稲田大学, 理工学術院, 次席研究員 (50875391)
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研究期間 (年度) |
2022-06-16 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
7,020千円 (直接経費: 5,400千円、間接経費: 1,620千円)
2023年度: 3,510千円 (直接経費: 2,700千円、間接経費: 810千円)
2022年度: 3,510千円 (直接経費: 2,700千円、間接経費: 810千円)
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キーワード | 量子化学計算 / 機械学習 / 有機金属錯体 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、有機合成に不可欠な有機金属錯体触媒に着目し、金属錯体の物性、反応性を表現するのに有効な記述子を探索する。まず、種々の中心金属、配位子、配位子を修飾する官能基の組み合わせから金属錯体構造を生成し、量子化学計算による有機金属錯体データベースを構築する。次に、機械学習を用いたデータ解析および機械学習が獲得した関数を解釈する技術を用いて、金属錯体の性質に寄与する中心金属、配位子、官能基の物理化学的な記述子を探索する。
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研究実績の概要 |
本研究は、有機合成において重要な役割を果たす有機金属錯体触媒に着目し、有機金属錯体を構成する中心金属、配位子、基質について、錯体の物性、反応性に関係する物理化学的記述子を量子化学計算と機械学習を活用して探索する。これによって、錯体の部分構造に対する連続値による表現方法を見出すことが目的である。これは、所望の反応を実現する配位子や基質の最適化を計算機により支援する方法の開発へと発展が期待される。2022年度は錯体の量子化学計算データベースの構築を順次進めるとともに、データ解析、機械学習手法の基礎部分を実装しその有効性を評価した。 これまでに、種々の中心金属と配位子の組み合わせによる有機金属錯体構造に関する量子化学計算データベースの構築を進めてきた。機械学習を用いたデータ解析および機械学習が獲得した関数を解釈する技術を実装した。反応性を議論する際に重要となる金属錯体の安定性をテストケースとして解析手法の妥当性を評価した。量子化学計算に依らない情報に基づく記述子、量子化学計算から得られる情報に基づく量子化学的記述子、それぞれを適用した場合の錯体の安定性の予測精度を比較した。量子化学的記述子を適用することでその予測精度が大幅に改善することを確認した。また、データ解析を通して、化学の観点からも妥当な記述子が有効に寄与していることが見出された。 また、申請時点では未定だった計画として、反応条件最適化および分子設計に関連して、領域内で実験研究者との共同研究を年度の後半より複数開始した。予備的な検討を通じて、実際の反応条件最適化や所望の物性を有する分子の設計に向けた技術開発を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
種々の金属と配位子の組み合わせから、2000程度の金属錯体に対して量子化学計算データベースを構築した。このデータセットに対して、錯体の安定性に関する解析と予測を行うことで、データ解析と機械学習に関する基礎部分を実装した。量子化学的な記述子の適用による予測精度の改善を確認し、予測に寄与する記述子の定量的解析が可能であることを見出した。 申請時点で計画されていなかった内容として、反応条件最適化および分子設計に関連して領域の実験研究者との共同研究を多数開始した。分子設計では、量子化学計算の強みが発揮される分子の励起状態に関連した研究を進めている。予備的な検討において計算による分子設計の有効性を示唆する結果が得られており、より詳細な解析と評価の後、実際に実験にて分子の合成および評価を行う計画である。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度より構築してきた有機金属錯体構造の量子化学計算データベースをさらに拡張する。これまでに、データ解析を行うために金属、配位子を大きく変更した有機金属錯体の計算を行ってきた。しかし、今日の反応設計に実際に応用可能なデータベースとするためには、配位子や基質のわずかな構造変化に関する情報を含む、より精緻なデータを収集する必要があるとわかった。そこで、金属錯体の範囲を限定し、パラジウム金属とリン配位子の金属錯体に関する計算を中心に行う。世界の研究状況を鑑みた独自性の観点から、基質の数値表現について重点的に検討する。金属と結合する基質部位の物理化学的記述子を検討し、金属錯体の安定性との関係を評価する。 また、構築したデータベースや機械学習モデルを実験研究者に提供し、有効に活用してもらうための方策も検討する必要があると考えるに至った。反応条件最適化の考え方から、配位子に対応して高い反応性を有する基質、基質に対応して反応を促進する配位子を推薦する手法の開発などの活用方法が考えられる。配位子、基質の数値表現で反応性を記述可能な事例を明らかにするとともに、反応性の予測に必要な機械学習手法や、説明に必要な物理化学的記述子を明らかにすることを目指す。また、実験化学者がデータベースの情報や機械学習を使いこなすためのシステムの開発にも新たに着手する。 また、反応条件最適化および分子設計に関連して領域の実験研究者との共同研究を推進する。
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