公募研究
学術変革領域研究(A)
脳は、最も制御が難しく、脳機能を制御できる超越分子システムはまだ開発されていない。高分子を自由に脳へ届けるデバイスは、中枢疾患治療、健康長寿の促進、脳機能の改変、脳の再生、など生物を陵駕・超越できる画期的な超越分子システムである。本研究では、バイオ分子、有機化合物とマイクロデバイスの技術を組み合わせた実用化に資する無細胞分子システムを確立し、脳機能を制御するための基盤技術を構築する。
脳がナノ粒子を取り込む確率を上げるため、脳の細胞に選択的に高発現している膜タンパク質を探索することは重要である。これまで、標的タンパク質を限定的にその絶対発現量を定量するquantitative Targeted Absolute Proteomics(qTAP法)は開発してきているが、上述の目的を達成するためには、数に制限なく、網羅的に膜タンパク質の絶対発現量を定量できる技術が必要である。従来の網羅的絶対定量法は、可溶性タンパク質は比較的正確に定量できるが、膜タンパク質の定量に不向きであった。我々は、膜タンパク質を最適に可溶化・変性させる技術を確立し、さらに、精度の良い高精度LC-MS/MS(SWATH)測定および高感度・高精度ペプチド選択アルゴリズムを組み合わせることによって、膜タンパク質を含めて、網羅的に数千種類から1万種類のタンパク質の絶対存在量(mole)を一斉に定量できる方法を確立した。本法を用いて、中枢関門細胞に選択的かつ高発現する膜タンパク質を数十種類見出した。文献報告等に基づいて、これら膜タンパク質群の中で、エンドサイトーシスやトランスサイト―シスするタンパク質を絞り込んだ。リガンド修飾ナノ粒子を投与した結果、リガンド非修飾粒子に比べて、中枢関門細胞に顕著に取り込まれることを明らかにした。さらに、目的遺伝子が効率的に翻訳されていることも示した。これらの知見は、高発現する膜タンパク質を標的とすることによって、選択的かつ効率的に遺伝子や核酸を中枢関門に届けることができることを実証するものである。
令和5年度が最終年度であるため、記入しない。
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