研究領域 | 生物を陵駕する無細胞分子システムのボトムアップ構築学 |
研究課題/領域番号 |
22H05394
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研究種目 |
学術変革領域研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
審査区分 |
学術変革領域研究区分(Ⅱ)
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研究機関 | 島根大学 |
研究代表者 |
森本 展行 島根大学, 学術研究院機能強化推進学系, 教授 (00313263)
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研究期間 (年度) |
2022-09-30 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
9,620千円 (直接経費: 7,400千円、間接経費: 2,220千円)
2023年度: 4,810千円 (直接経費: 3,700千円、間接経費: 1,110千円)
2022年度: 4,810千円 (直接経費: 3,700千円、間接経費: 1,110千円)
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キーワード | ポリマーベシクル / 刺激応答性 / ナノリアクター |
研究開始時の研究の概要 |
サイズ効果から化学反応を著しく高めるナノリアクターは分離・精製・高次反応という点で課題が残る。本研究では、微小体積空間の融合・分裂を繰り返し操作し、多段階反応を制御するナノリアクターの創製を目指す。微小体積空間は、細胞膜中で流動性を示すグリセロ脂質を温度応答性ポリマー両末端へ修飾して二分子膜型ポリマーベシクルを調製し、これを利用する。反応性分子を内包させたポリマーベシクルの熱刺激から、その融合・分離の制御を試みる。融合に伴う内包分子の混合から反応を開始させ、ベシクルの分裂や解離から目的物を回収する。この一連の操作を多段階反応に適用し、高速ナノリアクターとしての有効性を検証する。
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研究実績の概要 |
熱応答性ポリマーであるポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)の両末端にジアシルグリセロールを修飾したテレケリックポリマーから二分子膜型ポリマーベシクルを調製できること、このポリマーベシクル溶液の相転移温度を挟んでの加熱・冷却よりベシクル間が融合・解離してサイズが可逆的に変化することを示してきた。ここでは、細胞サイズリポソームの膜中にこのテレケリックポリマーを挿入、混合ベシクルとして刺激による融合制御の可能性を検討した。まず、リン脂質(DOPC)に対してポリマーが0から70mol%までの値を検討したところ、ポリマー組成が10mol%を超えるとベシクルは調製されるものの、膜ではなく内部にポリマーが多く存在していることが示唆された。そのため、混合ベシクル中におけるポリマーのモル比は1mol%以下で調製することとした。次に0.1mol%のポリマー存在下、非存在下でリポソームの脂質組成が2種類(DOPC:コレステロールが4:1およびDOPC:DPPC:コレステロールが2:2:1)の4群を準備し、混合ベシクルを調製、加熱処理によりベシクル間の融合、解離が制御されるかについて検討を行った。DOPCとコレステロールのみのベシクルだとほとんど接触が見られず接触しても破裂や接着して界面を共有した状態であったが、ポリマーが存在することでベシクル間の著しい凝集が引き起こされた。さらに脂質組成にDPPCが含有されている場合においてベシクル間の融合が観察された。DOPCとコレステロールのみの場合は融合したように見受けられても界面が残存していた。この差はリポソーム中で相分離構造を形成できる脂質組成が融合促進に寄与すると考えられる。これらの結果は今後ベシクル内包物の混合や分離へとその展開が期待されるが、破裂するリポソームも多く、また融合後のベシクル分裂には成功しておらず、今後の課題である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本応募研究は10月に採択が決定したが、全く同時期に島根大学への異動と重なり、研究環境の整備に時間を要した。特に排気施設を有した実験室の整備が遅れたため、今年度に予定していた低温刺激融合型のポリマー合成について遅れをとっている。
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今後の研究の推進方策 |
1. 混合ベシクルの熱刺激融合条件最適化 テレケリックポリマーの分子量とDOPC:DPPC組成比に着目して検討を続ける。また異種物質を内包した混合ベシクル溶液を混合し、加温した際に(1)ベシクル間融合に基づく物質移動の惹起、(2)ベシクル内での化学反応誘起およびその反応速度、(3)反応溶液冷却時の分離挙動の制御、についてそれぞれ検討する。 2. 冷却融合型ポリマーベシクルの調製とキャラクタリゼーション 両方向に伸長する連鎖移動剤から可逆付加連鎖移動重合し、両末端へのグリセロ脂質の修飾からテレケリック型のポリマーを合成する。スルホベタイン(SB)ポリマーは塩強度に対して異なる応答性を示すモノマーを選択して用い、トリフルオロエタノール中で重合し、二分子膜型ポリマーベシクルの調製を試みる。脂質のアルキル鎖長と水溶液中でのポリマーの温度応答性から処理温度の最適化とサイズ制御を試みる。得られたポリマーベシクルは、そのサイズと二分子膜構造の確認を動的光散乱測定と透過型電子顕微鏡観察、また疎水場に取り込ませた蛍光プローブを用いた蛍光偏光解消法より解析し、混合ベシクルの調製や融合・分離の制御を試みる。
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