研究領域 | 生物を陵駕する無細胞分子システムのボトムアップ構築学 |
研究課題/領域番号 |
22H05422
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研究種目 |
学術変革領域研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
審査区分 |
学術変革領域研究区分(Ⅱ)
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
仲本 正彦 大阪大学, 大学院工学研究科, 助教 (30883003)
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研究期間 (年度) |
2022-06-16 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
9,620千円 (直接経費: 7,400千円、間接経費: 2,220千円)
2023年度: 4,810千円 (直接経費: 3,700千円、間接経費: 1,110千円)
2022年度: 4,810千円 (直接経費: 3,700千円、間接経費: 1,110千円)
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キーワード | ハイドロゲル / 生体高分子応答ゲル / 過渡的応答 / 酵素阻害 / シグナル伝達 / 非平衡応答 / 生体高分子応答材料 / 分子認識 / 刺激応答性ハイドロゲル / ハイドロゲルー酵素複合体 / 過渡的体積相転移 |
研究開始時の研究の概要 |
生体様のダイナミック性を有する代謝サイクル模倣ハイドロゲルを材料基盤として、本来の生物学的プロセスでは関連性のない生物学的イベントをカスケード化する『無細胞シグナル伝達システム』の構築および材料設計方法論の体系化を目的とする。本研究課題は、疾患を始めとする重要な生命現象をダイナミックに制御する材料や、酵素反応のカスケード化による診断、検出デバイスとして実社会に質する機能性材料としての応用性を有する。
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研究実績の概要 |
本研究課題は、申請請者独自の設計概念に基づく『生体高分子に応答した非平衡応答を示す代謝サイクル模倣ハイドロゲル』を材料基盤として、材料設計方法論の体系化、および社会に質する機能性材料としての汎用性・応用性を提示することを目標としている。生体内の多くのプロセスは酵素に依存していることから、酵素を燃料として非平衡応答を示すハイドロゲル材料は非平衡条件で駆動する生命現象を制御するバイオマテリアルとしての大きな可能性を持つ。本年度は、高い生体適合性を有する2-Hydroxypropyl methacrylamideおよび架橋剤としてN,N'-methylenebismethacrylamideからなるハイドロゲルを母体として、負電荷モノマー(methacrylic acid)およびタンパク質分解酵素モノマー(acrylated trypsin)を導入することで、標的酵素として選択したリゾチームに対する親和性および分解性を有するハイドロゲルを作製した。本ハイドロゲルはリゾチームの添加に応答して、過渡的な体積変動を生じることがわかった。また、過渡的な体積変化応答に際して、燃料リゾチームの摂取、分解およびリゾチーム酵素活性の消失が生じることも明らかとなった。更に過渡的な体積変動によって、ハイドロゲルの機械的強度が一時的に変化することも明らかとなった。以上のように、生理学的に活性な酵素を化学燃料として材料の過渡的体積変動および機械的強度変化に変換するハイドロゲルの開発を達成した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
標的とする酵素を燃料として過渡的体積応答および過渡的な機械的強度変動を示すハイドロゲルを作製することが出来た。加えて、化学組成の違いがハイドロゲルの過渡的体積変動に及ぼす影響を系統的に評価することで、生体高分子を燃料として過渡的応答を生じるハイドロゲルを設計するための指針を明らかにすることが出来た。一方で、バルクハイドロゲル材料を用いることに起因する応答性の遅さが課題となっている。また、体積変動に伴う物質徐放による別酵素反応の誘起に関しては未だ達成されていない。
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今後の研究の推進方策 |
バルクハイドロゲルの応答性の遅さを改善するためにマイクロもしくはナノスケールまで材料のサイズダウンを図ることで迅速な応答速度の実現を目指す。加えて、導入する機能性官能基の最適化(親和性部位および分解部位)により分子設計を洗練させることで、生体分子を燃料としたアミノ酸誘導体の縮合反応およびペプチド加水分解反応を化学反応ネットワークとして散逸的応答を示すハイドロゲル材料への展開を予定している。当該マイクロ/ナノハイドロゲルの設計指針確立および、これら材料を用いた生体分子燃料に駆動された物質徐放によって系内の別酵素反応を誘起する『無細胞シグナル伝達システム』の実証を目指す。
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