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RNAプロファイルをその場で自動計測・判別する診断用分子システムの構築

公募研究

研究領域生物を陵駕する無細胞分子システムのボトムアップ構築学
研究課題/領域番号 22H05440
研究種目

学術変革領域研究(A)

配分区分補助金
審査区分 学術変革領域研究区分(Ⅱ)
研究機関国立研究開発法人海洋研究開発機構

研究代表者

小宮 健  国立研究開発法人海洋研究開発機構, 超先鋭研究開発部門(超先鋭研究開発プログラム), 研究員 (20396790)

研究期間 (年度) 2022-06-16 – 2024-03-31
研究課題ステータス 交付 (2023年度)
配分額 *注記
9,620千円 (直接経費: 7,400千円、間接経費: 2,220千円)
2023年度: 4,810千円 (直接経費: 3,700千円、間接経費: 1,110千円)
2022年度: 4,810千円 (直接経費: 3,700千円、間接経費: 1,110千円)
キーワード無細胞分子システム / DNAコンピューティング / RNAプロファイル
研究開始時の研究の概要

本研究課題「RNAプロファイルをその場で自動計測・判別する診断用分子システムの構築」では、高度な機器を使用することなく微量なmRNAおよびマイクロRNA(miRNA)の存在量を計測し、そのパターン情報を処理して生物の生理状態やヒトの疾患を高精度に判別できる、情報処理機能を持った無細胞分子システムを構築する。構築した分子システムを海水および血清サンプル等に適用し、魚類等の生理状態の判別から精密な早期医療診断まで広範囲な有用性を実証する。研究代表者がこれまでに開発してきた反応をマイクロサイズの空間内で統合して、高感度にRNAを計測・判別するプログラミング可能な分子システムを実現する。

研究実績の概要

本研究課題では、高度な機器を使用することなく微量なmRNAおよびマイクロRNA (miRNA)の存在量を計測し、そのパターン情報を処理して生物の生理状態やヒトの疾患を高精度に判別できる、情報処理機能を持った無細胞分子システムの構築を目指している。例えばがん患者の血中ではpMオーダーのmiRNAが循環していることが報告されており、37°Cに置くだけでRNAプロファイルをその場で自動計測・判別する分子システムを実現するため、初年度はまず、構成要素であるmiRNAおよびmRNA検出を行うシグナルDNA増幅反応の高感度化に取り組んだ。最終的にはマイクロサイズの微小空間内でシグナルDNA増幅反応を実施して、微小空間内に1分子存在するRNA のデジタル計測を可能にする計画であり、増幅反応を非特異増幅が起こりにくい機構に改変した。モデル配列としての短鎖DNAを検出対象とする反応で、pMオーダーの感度で増幅を行うことに成功したが、シグナルDNA増幅を確認するための蛍光プローブについて、従来用いられているプローブ物質では十分な輝度の発光や、実用性が高い低コストな検出の実現が困難であることが判明した。そこで、新たなプローブ物質や計測機器を用いた検討を実施して、当初計画の達成に十分な輝度性能が得られることを確認した。シグナル増幅反応は逆転写を行わずにmiRNAをそのまま検出できるため、生体のmiRNAおよびmRNA配列を検出対象とする増幅反応の性能検証を進めている。バルク溶液中での性能をリポソームや液滴等の微小空間内で再現するための検討を今後に実施して、高感度なRNA検出を達成する。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

DNAポリメラーゼとニッキング酵素を用いるシグナルDNA増幅反応について、増幅したいシグナルDNAの鋳型配列をニッキング酵素の認識サイトの両側に持つDNAを用いた場合に、指数的な高速増幅を実現できるが、検出対象の核酸が存在しなくても非特異的な増幅が容易に起こることが知られている。微小空間内では、非特異増幅が開始すると短時間で高濃度にまでDNAが増幅されてしまうため、バルク溶液中よりも深刻な問題となる。そこで、複数のシグナルDNA配列を順次生成するカスケード型の反応機構に改変し、十分な増幅速度性能が確保できるかを検証した。実験を行った条件下では、指数型の増幅よりは増幅速度が劣るものの、微小空間内でのRNA検出には十分な性能が得られることが示唆された。また、指数型では必要となる人工核酸を使用しなくとも非特異増幅が抑制できることを実証し、人工核酸の導入にかかる時間とコストを削減することができた。
バルク溶液中および微小空間内での増幅反応の計測において、一般的に用いられる機器の蛍光感度性能に起因して、微小空間内での増幅反応ではより高輝度に発光することが求められるが、従来用いられているDNAを蛍光色素で修飾したプローブは高価である。増幅反応に使用できることが知られている、安価でシグナルDNA配列特異的に結合する物質について測定したところ、蛍光色素修飾DNAプローブよりも低輝度であることが判明した。そこで本研究課題では、シグナルDNA増幅反応に適したプローブ物質を実験で検討し、高価な蛍光色素修飾DNAプローブと同等の輝度で発光する物質を特定した。これは、海水および血清サンプル等を用いて、その場でRNAプロファイルを計測・判別する分子システムの実用化に向けて有用な成果である。

今後の研究の推進方策

反応溶液を直径5マイクロメートル程度の微小空間内に封入すると、1分子存在するRNA の濃度は数十pMに相当する。低濃度RNA溶液の計測では、微小空間内に存在するRNA分子は高々1分子であり、RNAの存在に応じて発光したリポソームや液滴等の微小空間の個数を数え上げれば、高感度検出とともにデジタル計測も可能である。本研究課題ではこれまでの検討により、モデルDNA配列を検出対象として十分な感度・速度および倍率で増幅が行えることや、安価なプローブ物質でシグナルDNAの増幅を配列特異的に確認できることを実証している。今後は均一サイズのリポソームや液滴を作成する機器を用いて、微小空間内で逆転写を行わずにmiRNAを検出対象とするシグナルDNA増幅反応を実施するほか、さらに他の反応と組み合わせてmRNAの増幅検出も実現する。
その上で、37°Cに置くだけで複数種類のmRNA、およびmiRNAをそれぞれ計測して、生理状態の判別や医療診断が行える無細胞分子システムを構築するという最終目標を達成するため、もう一つの構成要素である情報処理反応との統合に取り組む。分子反応で情報を処理するというコンセプトの実証にとどまらず、構築した分子システムを海水および血清サンプル等に適用し、非侵襲的に得られる少量のサンプルを用いて、魚類等の生理機能に関連するmRNAや、がんのバイオマーカーとして期待されているmiRNAを計測する。生理状態の判別から精密な早期医療診断までがその場で簡便に実施できる、新規な生体計測・医療診断技術としての広範囲な有用性の実証に向けて実験検討を進める。

報告書

(1件)
  • 2022 実績報告書
  • 研究成果

    (8件)

すべて 2024 2023 2022 その他

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (4件) 図書 (1件) 備考 (1件)

  • [雑誌論文] Characterization of Cascaded DNA Generation Reaction for Amplifying DNA Signal2024

    • 著者名/発表者名
      Komiya, K., Noda, C., Yamamura, M
    • 雑誌名

      New Generation Computing

      巻: - 号: 2 ページ: 305-305

    • DOI

      10.1007/s00354-024-00249-2

    • 関連する報告書
      2022 実績報告書
    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Molecular programming2022

    • 著者名/発表者名
      Ken Komiya
    • 雑誌名

      Encyclopedia of Robotics (M. H. Ang, O. Khatib, B. Siciliano Eds.)

      巻: - ページ: 1-7

    • DOI

      10.1007/978-3-642-41610-1_210-1

    • ISBN
      9783642416101
    • 関連する報告書
      2022 実績報告書
    • 査読あり
  • [学会発表] 分子ロボット研究者はなぜ未来について考えるのか2023

    • 著者名/発表者名
      小宮健
    • 学会等名
      分子ロボット倫理シンポジウム「分子ロボットELSI論点モデル・ライフコースモデルの先へ:科学コミュニケーション実践をつうじた論点 モデルの構築」
    • 関連する報告書
      2022 実績報告書
  • [学会発表] Experimental Investigation of Extended Nucleic Acid Generation Circuits for DNA-based Signal Transduction2022

    • 著者名/発表者名
      Ken Komiya, Chizuru Noda
    • 学会等名
      CBI学会2022年大会
    • 関連する報告書
      2022 実績報告書
  • [学会発表] Characterization of Nucleic Acid Generation Circuits for DNA-based Signal Transduction2022

    • 著者名/発表者名
      Ken Komiya, Chizuru Noda
    • 学会等名
      第60回日本生物物理学会年会
    • 関連する報告書
      2022 実績報告書
  • [学会発表] 10年後の分子ロボット倫理研究に向けて2022

    • 著者名/発表者名
      小宮健
    • 学会等名
      第6回分子ロボティクス年次大会
    • 関連する報告書
      2022 実績報告書
  • [図書] Design Theory of Molecular Robots (in Molecular Robotics -An Introduction (S. Murata Eds.))2022

    • 著者名/発表者名
      Takashi Nakakuki, Ibuki Kawamata, Satoshi Kobayashi, Ken Komiya, Nathanael Aubert-Kato, Shun- ichi Azuma, Gutmann Gregory Spence, Akihiko Konagaya, Yukiko Yamauchi, Yasuhiro Suzuki, Ken Sugawara
    • 総ページ数
      46
    • 出版者
      Springer Singapore
    • ISBN
      9789811939860
    • 関連する報告書
      2022 実績報告書
  • [備考] IoMグループ

    • URL

      https://bio-inspired.chemistry.jpn.com/%e6%9c%80%e8%bf%91%e3%81%ae%e3%83%8b%e3%83%a5%e3%83%bc%e3%82%b9/

    • 関連する報告書
      2022 実績報告書

URL: 

公開日: 2022-06-20   更新日: 2024-12-25  

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