研究領域 | 2.5次元物質科学:社会変革に向けた物質科学のパラダイムシフト |
研究課題/領域番号 |
22H05459
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研究種目 |
学術変革領域研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
審査区分 |
学術変革領域研究区分(Ⅱ)
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
高橋 康史 名古屋大学, 工学研究科, 教授 (90624841)
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研究期間 (年度) |
2022-06-16 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
6,760千円 (直接経費: 5,200千円、間接経費: 1,560千円)
2023年度: 3,380千円 (直接経費: 2,600千円、間接経費: 780千円)
2022年度: 3,380千円 (直接経費: 2,600千円、間接経費: 780千円)
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キーワード | 電気化学イメージング / ナノピペット / 触媒活性サイト / 触媒活性 / ガラスナノピペット |
研究開始時の研究の概要 |
2次元材料の触媒活性向上に向けて、モアレ、歪、欠陥、ドーピング、ヘテロジャンクションの形成など様々な試みがなされてきた。このような構造を巧みに利用した触媒開発において、触媒能と構造の関係性の理解は喫緊の課題である。本研究では、電気化学イメージング技術である走査型電気化学セル顕微鏡(SECCM)を用いて2.5次元材料の触媒活性サイトを、実空間で電気化学的に可視化する。
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研究実績の概要 |
2次元材料は、安価かつ大量合成が可能であり、近年、水素発生反応(HER)の触媒としてもう目されている。しかし、白金と比較すると以前として触媒活性が低く、2次元材料の触媒活性向上に向けて、3次元構造体への担持や、触媒能のさらなる向上に向けて、モアレ、歪、欠陥、ドーピング、ヘテロジャンクションの形成など様々な試みがなされてきた。このような構造を巧みに利用した触媒開発において、触媒能と構造の関係性の理解は喫緊の課題である。特に、現状の計測技術は、溶液中において分子の吸着解離に起因した化学反応をとらえる時空間分解能を有さないことが構造最適化を妨げている。本研究では、申請者が独自開発を進めてきた電気化学イメージング技術である走査型電気化学セル顕微鏡(SECCM)を用いて2.5次元材料の触媒活性サイトを、実空間で電気化学的に可視化した。SECCMは、電解液を充填したガラスナノピペットに参照極を挿入し、試料表面にナノスケールの電気化学セルを形成することで、ナノスケール電気化学計測を実現可能である。また、走査型プローブ顕微鏡のプローブ技術を活用することで、電気化学イメージを取得することができる。各計測点においてサイクリックボルタンメトリーを計測することで、触媒活性の違い(過電圧やターフェル勾配)を見積もることにも成功している。特に、ナノチューブ状やヤヌス型(上面と下面で異なる元素からなる)の触媒の計測を行い、歪みに由来した水素発生反応の違いが計測できつつある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
SECCMを活用して、サブマイクロスケールのMoS2やヘテロナノシートの水素発生活性を可視化し、エッジや歪みなど構造特異的な触媒活性を可視化することに成功した。本領域内の共同研究として、東京都立大学の宮田准教授、中西助教のグループ、蓬田助教、東北大学加藤准教授らとの共同研究により、さらに、歪みの影響の詳細を解析するため、上面と下面で異なる元素から構成されたナノシートの計測や、歪みを緩和させた状態で水素発生反応の触媒能がどのように変化するか評価したところ、歪みの影響により水素発生反応が更新していることを電気化学イメージングにより明らかにすることができた。また、ナノチューブ状のダイカルコゲナイト材料についても評価を行った。さらに、九州大学の吾郷教授らとの共同研究により、MoS2ナノリボンの水素発生反応の触媒活性についても同様に電気イメージングにより、活性サイトを可視化することに成功押した。このような電気化学イメージングにより得られた知見を材料側にフィードバックし、エッジと同様の特徴を有する材料の合成を共同研究者に依頼し、従来の2次元ナノシートをはるかに凌駕する高い触媒を有する材料の開発につなげることができた。
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今後の研究の推進方策 |
従来のナノシートのサイズを調整することで、触媒能を向上させる試みだけでなく、効率的に表面積に対するエッジの割合が大きい試料や、エッジと同様の構造をテラスに有するナノシート材料の評価を行うことで、構造を巧みに活用した触媒開発に資する計測情報を取得する。また、構造と触媒能の関係に関しても、どのような構造でどの様な反応がボトルネックとなっているかを明らかにし、材料開発にフィードバックする。さらに、DFT等計算科学を活用することで、反応の疎過程を理解し、反応速度を向上させるための戦略を検討する。固液界面での反応は、大気中の計測から得られる情報では、予想することが困難であり、SECCMを用いた局所的な触媒活性評価技術を活用することで、高効率な材料開発を効率的に進めることが可能な設計指針を構築していく。 SECCMそのものについても、高解像度なイメージングを実現するためのナノピペットの微細化、ナノピペットと試料との距離を制御するために使用する電流シグナルのシグナルノイズ比の向上、微小電流計測器の高精度化、計測アルゴリズムの改良などを進める予定である。
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