研究領域 | 2.5次元物質科学:社会変革に向けた物質科学のパラダイムシフト |
研究課題/領域番号 |
22H05469
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研究種目 |
学術変革領域研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
審査区分 |
学術変革領域研究区分(Ⅱ)
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研究機関 | 東京都立大学 |
研究代表者 |
柳 和宏 東京都立大学, 理学研究科, 教授 (30415757)
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研究期間 (年度) |
2022-06-16 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
6,760千円 (直接経費: 5,200千円、間接経費: 1,560千円)
2023年度: 3,380千円 (直接経費: 2,600千円、間接経費: 780千円)
2022年度: 3,380千円 (直接経費: 2,600千円、間接経費: 780千円)
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キーワード | 原子層 / 時間領域サーモリフレクタンス / 格子不整合界面 / インターカレーション / 熱輸送 / 電荷輸送 / 積層制御 / ファンデルワールス界面 / 熱電変換 |
研究開始時の研究の概要 |
原子層物質を人為的に積層することにより形成される格子不整合な二次元ナノ界面は、顕著な断熱性を示す。この二次元界面は、高性能熱電変換や異方性熱輸送など新たな機能創出に繋がる可能性を秘めているが、その断熱性と電気伝導・熱起電力特性との関係は全く分かっていない。そこで本研究では、金を温度計金属として用いた時間領域サーモリフレクタンス法という申請者独自の熱輸送測定と、原子層積層技術・垂直デバイス作製技術を駆使し、系統的に界面構造を変化させた格子不整合二次元界面を対象に、その熱伝導・電気伝導の相関の解明し、また、熱起電力との関係を解き明かす為の端緒を得る。
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研究実績の概要 |
人為的に原子層物質を積層することにより形成される格子不整合な二次元ナノ界面は、顕著な断熱性を示す。この二次元界面は、高性能熱電変換や異方性熱輸送など新たな機能創出に繋がる可能性を秘めているが、その断熱性と電気伝導・熱起電力特性との関係は全く分かっていない。そこで本研究では、金を温度計金属として用いた時間領域サーモリフレクタンス法(TDTR法)という申請者独自の熱輸送測定と、原子層積層技術・垂直デバイス作製技術を駆使し、系統的に界面構造を変化させた格子不整合二次元界面を対象に、その熱伝導・電気伝導・熱起電力の相関を明らかにする。また、インターカレーションによるイオンの挿入が、界面熱及び電荷輸送に与える影響を解き明かし、両輸送を電界で制御する為の指針を得ることが目標である。今年度は以下の三つの課題、課題1 ホモ・ヘテロ大面積積層における熱・電荷輸送の相関の解明、課題2 格子不整合積層における熱・電荷輸送の相関の界面、課題3 電気化学的手法などを組み合わせた熱・電荷輸送の制御の探索、について研究を進めた。課題1に関しては、MoS2、WS2の大面積単層試料の転写積層を4層それぞれ行い比較を行った。試料転写においてクラック等が生じ、上部・下部金電極のショートする傾向が見られ、熱輸送については議論できる可能性があるものの、熱・電荷輸送を構造に基づいて議論することは困難であることが分かった。よって同一試料に対してアニーリング処理等の界面構造を系統的に変化させる方向で、熱・電荷輸送の相関を議論する課題2に取り組み、現在、予備的データが得られている状況である。まだ課題3を通して、導電性ポリマーや有機半導体材料に対して、電気化学や温度による構造転移を利用した熱・電荷輸送の相関の解明を進めており、これも熱輸送の可逆変調が可能と示唆される予備的データが得ることに成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
4層積層したホモ・ヘテロ界面系において、熱・電荷輸送の相関を構造に基づいて議論することや、原子層におけるインターカレーションを通して熱・電荷輸送の相関解明は、一定の進捗やその理解を進められたものの未だ未達成である。しかし、熱処理を通した界面構造の変化を熱・電荷輸送の相関で理解するアプローチに着眼し、研究を着実に進めている。また、導電性ポリマーや有機半導体材料系における構造変化を通した熱・電荷輸送の変調に関して新たな知見も得られており、研究はおおむね順調に進展していると評価している。
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今後の研究の推進方策 |
以下の三つの課題、課題1 ホモ・ヘテロ大面積積層における熱・電荷輸送の相関の解明、課題2 格子不整合積層における熱・電荷輸送の相関の界面、課題3 電気化学的手法などを組み合わせた熱・電荷輸送の制御の探索、を着実に進める為、今年度は次の方策を立てている。 課題1に関しては、大面積試料の場合は必然的にクラック等が生じてしまう為、単一ドメイン試料で行う必要がある。よって、顕微TDTR系の構築が必要不可欠である為、顕微TDTR測定系を完成させ、その後、単一ドメイン試料に対する研究を進める。また顕微の場合は試料位置の確認の精度を向上させる必要があり、試料チャンバについて新たなものの作成を行う。 課題2に対しては、大面積試料においても熱処理等のパラメータで、一定の議論が可能であり、今年度はその研究課題をまとめる。 課題3に対しては、共同研究を通して、予備的知見から、有機半導体材料系の温度相転移や、導電性ポリマー系におけるインターカレーションによる構造変化を通して、熱輸送が可逆変化可能であることが示唆されている。原子層系におけるインターカレーションに関する課題も含め、今年度もこの知見に基づいて、再現性や電荷輸送との相関も含めて研究を推進していく。
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