研究領域 | クロススケール新生物学 |
研究課題/領域番号 |
22H05523
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研究種目 |
学術変革領域研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
審査区分 |
学術変革領域研究区分(Ⅲ)
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
丹羽 伸介 東北大学, 学際科学フロンティア研究所, 准教授 (30714985)
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研究期間 (年度) |
2022-06-16 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
9,360千円 (直接経費: 7,200千円、間接経費: 2,160千円)
2023年度: 4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2022年度: 4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
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キーワード | 軸索輸送 / KIF5A / キネシン / 微小管 / ALS |
研究開始時の研究の概要 |
キネシンスーパーファミリーは細胞内輸送を担う分子モータータンパク質である。キネシンスーパーファミリーの中でもKIF5Aと呼ばれる分子に異常が起こり凝集すると筋萎縮性側索硬化症(ALS)と呼ばれる疾患が引き起こされる。健常人型のKIF5AであってもKIF5Aが複数集まった不定型の複合体が形成される傾向がある。本研究ではKIF5Aがなぜこのような不定型の複合体を形成するのかを細胞内での機能に着目して解析する。それに加え、KIF5Aがどのようにこの複合体を形成するのかをクライオ電子顕微鏡を用いた構造解析で明らかにする。
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研究実績の概要 |
KIF5Aはキネシンスーパーファミリーのモータータンパク質で、神経細胞内でミトコンドリア、リソソーム、RNA複合体といったさまざまな荷物を軸索輸送している。KIF5Aの変異は、家族性および弧発性の筋萎縮性側索硬化症(ALS)を引き起こすことが知られている。複数のALS変異が見つかっているが、これらALS変異のほとんどはKIF5Aのイントロンにあり、KIF5A mRNAのミススプライシングを誘発する。その結果、ヒトKIF5AではKIF5Aの貨物結合尾部ドメインをコードするエクソン27をスプライシングアウトすることに繋がる。そのため、ALSはKIF5Aの機能喪失によって引き起こされると考えられてきた。私たちの本年度に実施した研究の結果、ALS型KIF5Aは神経細胞内で凝集を引き起こすことがわかった。不思議なことに精製したALS型KIF5Aは、野生型KIF5Aよりも微小管上を活発に運動することがわかった。精製したALS型KIF5Aは試験管内の実験で凝集体を形成しやすかった。さらに、ALS型KIF5Aを発現させた線虫の神経細胞では、軸索の細断、軸索の迷走、神経細胞そのものの変性と言った形態的な異常が見られた。これらのデータから、ALSに関連するKIF5Aの変異は、単純な機能喪失型変異ではなく、毒性のある機能獲得型変異であることが示唆された。 また、計画班に協力し、微小管がCAMSAP2と呼ばれるタンパク質から重合する様子を観察することに成功した。さらにKLP-12とよばれる微小管の重合を止めるユニークなモーターがその活性を発揮するメカニズムを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
疾患モデル線虫を作成しただけでなくその表現型解析も終了し、既にKIF5AがALSを引き起こすメカニズムを明らかにした最初の論文を発表することに成功している。
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今後の研究の推進方策 |
野生型KIF5Aを過剰発現した線虫を用いてKIF5Aが凝集を引き起こすような変異体を単離することを目指す。このような変異体を作成することができればいかにして細胞は凝集から身を守っているのかを明らかにすることができる。
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