研究領域 | クロススケール新生物学 |
研究課題/領域番号 |
22H05551
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研究種目 |
学術変革領域研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
審査区分 |
学術変革領域研究区分(Ⅲ)
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研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
柊元 睦子 国立研究開発法人理化学研究所, 生命機能科学研究センター, 上級技師 (30321756)
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研究期間 (年度) |
2022-06-16 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
9,360千円 (直接経費: 7,200千円、間接経費: 2,160千円)
2023年度: 4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2022年度: 4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
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キーワード | クライオ電子顕微鏡 / Gタンパク質 / GEF / DOCK / Rho / 細胞骨格制御 / 細胞骨格 |
研究開始時の研究の概要 |
細胞運動は、免疫応答や神経血管形成など生体内で重要な役割を果たすとともに、がんの浸潤や転移にも関連している。DOCK (Dedicator of cytokinesis)は、アクチン細胞骨格制御シグナル伝達に重要なGタンパク質Rac、Cdc42を活性化し、細胞の形態変化やがん細胞の運動を促進するグアニンヌクレオチド交換因子(GEF)である。本研究では、DOCKとGタンパク質が機能する細胞膜近傍でのこれらのタンパク質複合体(メゾ複雑体)の動的構造を、クライオ電子顕微鏡構造に基づくクロススケール計測により解析する。
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研究実績の概要 |
グアニンヌクレオチド交換因子DOCK5は、足場タンパク質ELMO1と結合して、細胞骨格制御に重要なGタンパク質Rac1を活性化し、細胞の形態変化やがん浸潤を促進する。申請者は、DOCK5-ELMO1-Rac1複合体のクライオ電子顕微鏡構造を決定し、Gタンパク質の効率的な活性化に必要なDOCK5-ELMO1複合体の構造を明らかにしたが、その細胞内での機能に関わる分子動態については不明である。本研究では、DOCK5-ELMO1をはじめとするDOCK細胞骨格制御因子の分子メカニズムを、クライオ電子顕微鏡単粒子解析などのクロススケール計測により解明することを目的とした。 今年度は、ELMO-DOCK軸の上流制御因子を用いたin vitroアッセイ系を構築し、活性型RhoGの添加によりELMO1-DOCK5のRac1に対するヌクレオチド交換活性を促進できることを見出した。アッセイ条件に基づき、クライオ電子顕微鏡サンプルを調製し、単粒子解析を行なった結果、活性化因子としてRhoGが結合したELMO1-DOCK5-Rac1複合体の構造を初めて決定することができた。さらに、Gタンパク質を含まないELMO1-DOCK5の構造も同じ手法で決定した。これらの構造および構造に基づく変異体の生化学的解析により、RhoG結合に伴うELMO1-DOCK5の構造変化と、活性制御に関わる新たなタンパク質間相互作用が明らかになった。 DOCKファミリー分子の中でもユニークな基質特異性を持つDOCK10の触媒ドメインと、基質となるGタンパク質Rac1またはCdc42の両方との複合体の結晶構造解析により、その構造動態の詳細を明らかにした。さらに、構造に基づく部位特異的変異により、DOCK10の特定の残基がCdc42/Rac1二重特異性を決定することが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
上述のように、クライオ電子顕微鏡を用いた単粒子解析により、DOCK5-ELMO1の活性化状態および不活性化状態における構造ダイナミクスを明らかにすることができた。また、今回開発したサンプル調製法を用いて、DOCK5とは異なるサブファミリーに属するDOCK分子の構造ダイナミクスも現在解析中である。 当初予定していたDOCK複合体とGタンパク質を脂質二重膜に再構成するシステムについては、DOCK5-ELMO1とRac1が小型ユニラメラベシクル(SUV)で再構成できることをin vitroアッセイや電気泳動で確認することができた。
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今後の研究の推進方策 |
現在解析中のDOCK-Cサブファミリー分子の構造を変異タンパク質を用いた生化学実験により検証する。また、本学術変革領域研究の共同研究として、脂質膜の存在下でのDOCKとGタンパク質の分子動力学シミュレーションを推進する予定である。
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