研究領域 | 新興硫黄生物学が拓く生命原理変革 |
研究課題/領域番号 |
22H05556
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研究種目 |
学術変革領域研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
審査区分 |
学術変革領域研究区分(Ⅲ)
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
小林 麻己人 筑波大学, 医学医療系, 准教授 (50254941)
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研究期間 (年度) |
2022-06-16 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2023年度: 2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
2022年度: 2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
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キーワード | 超硫黄分子 / 動物発生 / 量的変化 / ゼブラフィッシュ / 時空間特異的 / 遺伝子破壊 / 時空間特異的量的変化 / ケミカルプローブ |
研究開始時の研究の概要 |
超硫黄分子は生命体に有益な効果をもたらすと同時に有害な影響も与える。動物発生の各過程においても重要な機能を果たしていると予想されるが、ほとんど研究がなされていない。本研究の目的は、動物発生における超硫黄分子の機能ともに、その時空間特異的な量的変化を解明することである。戦略にはゼブラフィッシュを活用する。研究代表者はゼブラフィッシュを用いた発生学研究と抗酸化研究に長年従事し、また近年、超硫黄分子の研究も開始しており、本研究遂行の準備は整っている。本研究は、動物発生を超硫黄分子という新しい切り口で理解する点とゼブラフィッシュを超硫黄分子研究に活用する点で、「硫黄生物学」研究領域の推進に貢献する。
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研究実績の概要 |
超硫黄分子は生命体に有益な効果をもたらすと同時に有害な影響も与える。動物発生の各過程においても重要な機能を果たしていると予想されるが、これまでほとんど研究がなされていない。本研究では、動物発生における超硫黄分子の機能を明らかにするとともに、その時空間特異的な量的変化を解明することを目的とした。戦略には、発生が早く、薬剤処理・ライブイメージング・遺伝学的解析が簡便・迅速にできるゼブラフィッシュを活用することにした。具体的には、1)ゼブラフィッシュ胚・稚魚における超硫黄分子量を増減させ、その影響を観察すること、2)ゼブラフィッシュ胚・稚魚の透明性を活かして、発生に応じて変化する各組織における時空間特異的な超硫黄分子量を測定すること、を2年間で行う計画とした。 初年度はまず、動物発生に対する内因性超硫黄分子量減少の影響を見るために、超硫黄分子を作り出す3種の酵素(CARS2、CBS、CTH)の遺伝子破壊ゼブラフィッシュ系統の作成に取り組んだ。ゼブラフィッシュにはCBSとCTH遺伝子が二つずつあり、cars2、cbsa、cbsb、cth、cthlの5遺伝子の遺伝子破壊をCRSPR-Cas9法で試みた。その結果、全て成功し、現在そのF2世代を育成しているところである。一方、発生過程に伴う超硫黄分子量の時空間特異的変化の測定を、入手可能な既存ケミカルプローブを用いて試みた。その結果、ケミカルプローブ種により、発光の臓器特異性が異なるという興味深い知見が得られ、特定臓器のみを強く光らすプローブを見いだすことにも成功した。このことは、超硫黄分子が特定の臓器形成もしくは臓器機能発揮に何らかの働きを行っている可能性を示唆するものとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
理由を二つ挙げる。 一つ目は、予定した遺伝子破壊が全て成功したことことである。ホモ破壊胚・稚魚を用いた遺伝子破壊の影響解析まではできていないが、F0世代へのCRISPR RNA注入からF2世代の成魚育成まで最短でも9ヶ月かかることを考えると予定した全ての遺伝子破壊系統の作出に成功したことは順調と言える。残念なことは、cars2の超硫黄分子合成活性のみを破壊したノックイン系統の作出が成功していない点でこれは二年目の最重要課題に掲げる。 二つ目は、超硫黄分子を検出しうるケミカルプローブを用いた解析系のセットアップができ、実際にこれを用いて何らかの時空間特異的な量的変化を見いだしたことである。
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今後の研究の推進方策 |
まず、各種遺伝子破壊系統のF2成魚を育成し、これを交配させて作らせるF3胚・稚魚で、遺伝子破壊の影響を観察する。具体的には、超硫黄分子検出用のケミカルプローブを用いて超硫黄分子量の時空間特異的な量的変動を測定するとともに、変動した臓器を中心に、発生異常がないか、各種臓器マーカーを用いて調べる。異常を示した臓器があった場合、新たに超硫黄分子を添加することで表現型が回復するか否かを調べる。微妙な表現型しか示さなかった遺伝子破壊系統があった場合には、1個体RNA-seq法を駆使した異常発生過程の探索を行う。また、表現型がまったく検出されなかった場合には、遺伝子破壊系統同士を交配し、二重破壊系統、三重破壊系統等を作出する。 既存のケミカルプローブでは、超硫黄分子種の特定までは難しいので、超硫黄分子種を特定できる変革領域の他の研究グループと共同研究し、発生過程に沿った超硫分子種の質的変化を質量分析により明らかにする。質量分析では空間的変化はわからないという弱点があるので、もし特定超硫黄分子種のみを検出できるケミカルプローブを開発した研究グループがあれば、これと共同研究し、ゼブラフィッシュ胚・稚魚に活用する。 一方、極度に高い抗酸化状態のため稚魚で致死となるKeap1a;Keap1b二重破壊系統における超硫黄分子量も測定し、稚魚での致死性との相関を検討する。同系統はcbsbの発現が亢進しており、また硫黄酸化に関わるSQR やETHE1 の発現も激増している。
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