研究領域 | 新興硫黄生物学が拓く生命原理変革 |
研究課題/領域番号 |
22H05567
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研究種目 |
学術変革領域研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
審査区分 |
学術変革領域研究区分(Ⅲ)
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研究機関 | 奈良先端科学技術大学院大学 |
研究代表者 |
宮崎 亮次 奈良先端科学技術大学院大学, 先端科学技術研究科, 助教 (30827564)
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研究期間 (年度) |
2022-06-16 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
7,020千円 (直接経費: 5,400千円、間接経費: 1,620千円)
2023年度: 3,510千円 (直接経費: 2,700千円、間接経費: 810千円)
2022年度: 3,510千円 (直接経費: 2,700千円、間接経費: 810千円)
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キーワード | チオ硫酸トランスポーター / 硫黄転移酵素 / X線結晶構造解析 / in vivo光架橋解析 / 硫黄 / チオ硫酸イオン / YeeE / YeeD |
研究開始時の研究の概要 |
硫黄は生物にとって必須の元素の一つである。植物や細菌は環境中から無機硫黄を同化してシステイン等を合成することが可能であり、硫黄の地球環境循環において重要な役割を果たす。本研究では、我々の研究グループが構造と機能を明らかにした新奇チオ硫酸トランスポーターYeeEとそのパートナー因子である硫黄転移酵素に着目する。そして、構造解析や詳細な機能解析からそれら複合体の立体構造やそれらと基質との相互作用の詳細を解析し、YeeE等が持つ保存されたシステイン残基とチオ硫酸イオン間の硫黄特異的な相互作用に由来する独自のメカニズムを解明する。
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研究実績の概要 |
硫黄は生物にとって必須元素の一つである。細菌等は環境中から無機硫黄を取り込み、システイン等の有機硫黄を合成することが可能である。申請者のグループは、膜タンパク質YeeEがチオ硫酸イオンの取り込みに関わることを示し、その構造・機能を明らかにした。加えて、YeeEと協働してチオ硫酸イオンの分解に関わると推測される細胞質の硫黄転移酵素YeeDともチオ硫酸イオンの取り込みに重要であると見出している。しかし、それらがどのように協働するかは分かっておらず、また、YeeE等が持つ機能に重要な保存されたシステイン残基の具体的な役割も依然として不明であった。 本研究では、YeeE、YeeDによる細菌のチオ硫酸イオンの取り込み機構を解明すべく研究を進めた。精製YeeEを用いた解析からYeeE単体でチオ硫酸イオンを取り込むことができることを示唆する結果を得た。また、精製YeeDを用いた解析から、YeeDが保存されたシステイン残基を用いてチオ硫酸イオンと直接反応して、それを分解することを示した。YeeEとYeeDの協働機構を解明するために、これらをリンカー配列で融合したタンパク質を構築し、その複合体構造をX線結晶構造解析で達成し、YeeE-YeeD複合体の立体構造を解明した。解かれた立体構造に基づいた変異解析から、細胞内でもこの構造を取りうることを示した。このYeeE-YeeD複合体構造では、YeeD活性部位システインはYeeEの出口に配置され、YeeEのチオ硫酸イオンの輸送に関わる3つのシステインと同様に等間隔で並んでいた。そのため、YeeDの活性部位のシステイン残基はチオ硫酸イオンの分解だけではなく輸送にも関わることが示唆された。 以上の結果などから、YeeEとYeeDが保存されたシステイン残基を利用して細胞質へとチオ硫酸イオンを輸送・分解する機構を明らかにすることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
細菌等は環境中から必須元素の一つである硫黄原として無機硫黄を外界から取り込み、システイン等の有機硫黄を合成することができる。申請者のグループは、膜タンパク質YeeEと細胞質タンパク質YeeEが協働してチオ硫酸イオンの取り込みと分解に重要であると見出している。しかし、それらがどのように協働するかは分かっておらず、また、YeeE等が持つ機能に重要な保存されたシステイン残基の具体的な役割も依然として不明であった。 当該年度は、YeeE、YeeDによる細菌のチオ硫酸イオンの取り込み機構を解明すべく研究を進めた。精製YeeE、YeeDを用いた解析からそれぞれがチオ硫酸イオンの取り込みと分解に働くことを見出した。YeeEとYeeDの協働機構を解明するために、これらをリンカー配列で融合したタンパク質を構築し、その複合体構造をX線結晶構造解析で達成し、YeeE-YeeD複合体の立体構造を決定した。このYeeE-YeeD複合体構造では、YeeD活性部位システインはYeeEの出口に配置され、YeeEのチオ硫酸イオンの輸送に関わる3つのシステインと同様に等間隔で並び、YeeDの活性部位のシステイン残基がチオ硫酸イオンの分解だけではなく輸送にも関わることが示唆された。 以上のように、YeeEとYeeDが保存されたシステイン残基を利用して細胞質へとチオ硫酸イオンを輸送・分解する機構についての大きな手がかりが得られ、研究が順調に進展したと考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
当該年度の研究では、精製YeeEとYeeDを用いたin vitro解析系を構築し、さらに、YeeE-YeeD複合体の立体構造を決定した。 今後はその実験系や決定した立体構造情報を活用し、YeeE-YeeD立体構造に基づいた変異解析などを行うことで、YeeEとYeeDによるチオ硫酸イオンの取り込みと分解過程の分子機構を原子レベルで解明することを目指す。
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