研究領域 | 非ドメイン型バイオポリマーの生物学:生物の柔軟な機能獲得戦略 |
研究課題/領域番号 |
22H05589
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研究種目 |
学術変革領域研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
審査区分 |
学術変革領域研究区分(Ⅲ)
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
矢野 真人 新潟大学, 医歯学系, 准教授 (20445414)
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研究期間 (年度) |
2022-06-16 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
9,360千円 (直接経費: 7,200千円、間接経費: 2,160千円)
2023年度: 4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2022年度: 4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
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キーワード | RNA結合蛋白質 / 低分子化合物 / ストレス顆粒 / 核小体 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究課題は、機能の全く異なる非膜オルガネラ間を遷移する仕組みに関わる新規非ドメイン型ハブ分子と低分子化合物の探索を行い、その分子動態およびその細胞機能と生理学的意義の解明を行う。さらに、この非膜オルガネラ間の遷移の操作技術の開発および蛋白質凝集体形成の緩和作用法の開発を目指すものである。
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研究実績の概要 |
本研究課題は、機能の全く異なる非膜オルガネラ間を遷移する仕組みに関わる新規非ドメイン型ハブ分子と低分子化合物の探索を行い、その分子動態およびその細胞機能と生理学的意義の解明を行うものである。我々は、神経変性における病原性凝集体形成の原因遺伝子をコードするFUS蛋白質が、DNA損傷およびDNA-PK活性の阻害条件下で、まず核小体へリクルートされ、その後、細胞質ストレス顆粒へ遷移、局在化することを見出した。特に、この細胞質ストレス顆粒への局在は、DNA-PKによるFUSのN末に存在する12箇所のリン酸化反応に感受性であることが分かった。リン酸化ミミック型のVenusタグFUS-12Asp変異体では、本刺激においてもストレス顆粒への移行を示さない事、また非リン酸化ミミック型のFUS-12Ala変異体では、DNA損傷刺激のみでもストレス顆粒への移行を示す。一方で、FUSの核小体への移行性は、DNA-PKによるリン酸化依存性が確認されなかった。さらに、Venus-FUS-P525L融合蛋白質およびストレス顆粒マーカーであるtdTomato-G3BP1融合蛋白質の安定発現細胞株を用いて、DNA損傷およびDNA-PK阻害下で起こるストレス顆粒の係留を阻害する低分子化合物のスクリーニングを行い、23種類を取得した。得られた低分子化合物群は、DNA損傷およびDNA-PK活性の阻害条件下において、内在性FUSのストレス顆粒への移行を阻害する一方で、ストレス顆粒形成自体には影響を示さないことを実証した。今後は、FUS蛋白質の細胞内動態を制御する非ドメイン型ハブ分子や低分子化合物に着目し、詳細なFUSの分子動態およびその細胞機能と生理学的意義の解明を目指し、非膜オルガネラ間遷移の操作技術および蛋白質凝集体形成の緩和手法の開発を目指す。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度までの研究で、FUS蛋白質のDNA損傷刺激、DNA-PK阻害剤におけるストレス顆粒へのリン酸化の影響を、12箇所のリン酸化変異型や3種類のALS変異型を用いた検証で明らかにする事ができた。ところが、核小体へのFUS蛋白質の移行性については、リン酸化変異体やALS変異型においてもリン酸化の依存性を示さない事が分かった。一方で、ここまでのFUS蛋白質動態を制御しうる分子群の探索研究では、FUS蛋白質の細胞質ストレス顆粒への局在を阻害する低分子化合物群、およびFUS変異を有するiPS細胞由来運動ニューロンのトランスクリプトーム情報に対する影響度を示すRNA制御因子群(非ドメイン型ハブ分子と呼ぶ)の取得が進んでおり概ね順調に進展している。今後、この両者の分子群の詳細な機能解析をする事で、FUS蛋白質および様々な神経変性疾患に関わる分子群の非膜オルガネラ間を遷移する仕組みを明らかにしたい。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題は、非膜オルガネラ間を遷移する仕組みに関わる非ドメイン型ハブ分子と低分子化合物の探索を行い、その分子動態およびその細胞機能と生理学的意義の解明のため、以下の3つの項目の研究計画を実施する。さらに、この非膜オルガネラ間遷移の操作技術の開発および蛋白質凝集体形成の緩和手法の開発を目指すものである。 ①天然変性領域を持つRNA結合蛋白質群間ネットワークの上位因子の探索 FUS変異に伴うトランスクリプトーム情報に対し、強いインパクトを示し、かつ天然変性スコアの高いRNA制御因子をリスト化する。上位因子の中で、非ドメイン型の構造を持たないハブ分子群を探索し、生化学的な細胞内分画実験および細胞生物学的解析を行い、分子特性の解析を行う。次に、これまで見出しているFUS蛋白質のDNA損傷刺激、DNA-PK阻害剤の作用により核小体キャップ、細胞質ストレス顆粒へと遷移するタイムコースにおける非ドメイン型ハブ分子の役割を明らかにする。 ② 非膜オルガナネラ間の遷移を制御する低分子化合物スクリーニング 内在性FUSのストレス顆粒への移行の阻害効果を示す化合物群の分子検証を行う。FUSの核小体への移行の検証および化合物が及ぼす細胞内シグナル、蛋白質分解系やオートファジーへの影響を精査する。 上記①②で同定したで同定した非ドメイン型ハブ分子の発現による制御および化合物を用いて、FUSおよび新規非ドメイン型ハブ分子の非膜オルガネラ間の遷移機構および蛋白質凝集体形成への関与を検証する。さらに、ヒトiPS由来の運動ニューロン変性モデルや新しく動物モデルを作成し、本研究計画で発見された分子群における細胞機能の役割の検証を行う。以上の解析により、細胞内非膜オルガナネラ間の分子遷移の操作と意義を、分子レベルから生理機能までを明らかにする。
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