公募研究
学術変革領域研究(A)
ヘテロクロマチン因子として同定したAHDC1がヘテロクロマチンが形成する核内構造を変形するユニークな分子機能を見出した。AHDC1がもつヘテロクロマチン核内構造変形活性が、細胞内でどのような働きをしているのかについて、様々な角度から探索する。さらに、AHDC1と起源を同じくし、同じ長さ、同様に天然変性領域が全長にわたって分布している2つのタンパク質について、分子機能、細胞機能を指標とした互換性も交えて解析する。また、AHDC1に変異がある神経発達障害を持つXia-Gibbs症候群が報告されており、本研究により明らかとなる分子機能、細胞機能の延長線上でXia-Gibbs症候群の病因を議論する。
本課題では、これまで私たちが見出してきたAHDC1の分子機能を手掛かりに、AHDC1が細胞内でどのような働きをしているのかについて、様々な 角度から探索する。具体的には、AHDC1が影響を与える高次クロマチン構造に着目して、AHDC1の機能が亢進あるいは低下した時のクロマチン機能に関する表現型の探索を行う。本年度は、ヒト大腸がん由来培養細胞HCT116細胞において、AHDC1の恒常的なノックアウト株を樹立した。細胞周期についてFACS解析を行ったところ、野生型株とAHDC1ノックアウト株との間には顕著な差はなかった。また、X線や薬剤によりDNA損傷を与えたときの細胞周期の進行をFACS法により、損傷部位の数や程度をRPA、gamma-H2AXによる間接蛍光抗体法により解析したが、野生型とAHDC1ノックアウト株との間には顕著な差はなかった。しかしながら、X線や薬剤によりDNA損傷を与えたときの生存率をコロニー系性能により評価したところ、AHDC1ノックアウト株はX線、ある種の薬剤に対して有為な感受性を示すことが明らかになった。これらのことから、AHDC1はヒト細胞において、ゲノム上の限られた領域の限られた種類のDNA損傷の修復に寄与していることが示唆された。
2: おおむね順調に進展している
HCT116ヒト培養細胞でAHDC1ノックアウト細胞株を樹立し、細胞周期、DNA損傷応答に関する表現型の探索をさまざまな観点から検討し、DNA損傷修復において脆弱になっている可能性が示唆された。マウス細胞においても、AHDC1のDNA損傷修復への関与が示唆されており、今後、AHDC1のクロマチン上での機能とメカニズムを明らかにする着眼点が得られた。
本年度の解析により、AHDC1はゲノム上の限られた領域の限られた種類のDNA損傷の修復に寄与していることが示唆された。AHDC1は、ヒト、マウスともにセントロメア領域に多く存在することから、セントロメア領域の繰り返し配列での損傷修復に関与することを作業仮設として解析を進める、
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すべて 雑誌論文 (8件) (うち国際共著 3件、 査読あり 8件、 オープンアクセス 6件) 学会発表 (7件)
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