研究領域 | 非ドメイン型バイオポリマーの生物学:生物の柔軟な機能獲得戦略 |
研究課題/領域番号 |
22H05608
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研究種目 |
学術変革領域研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
審査区分 |
学術変革領域研究区分(Ⅲ)
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研究機関 | 公益財団法人がん研究会 |
研究代表者 |
野澤 竜介 公益財団法人がん研究会, がん研究所 実験病理部, 研究員 (70868710)
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研究期間 (年度) |
2022-06-16 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
9,360千円 (直接経費: 7,200千円、間接経費: 2,160千円)
2023年度: 4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2022年度: 4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
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キーワード | 非コードRNA / 染色体分配 / がん / セントロメア / クロマチン / RNA / Aurora B / 超解像解析 / 分裂期 / 繰り返し配列 |
研究開始時の研究の概要 |
セントロメアは、分裂期において染色体分配に必要な様々なタンパク質をその局所に呼び込み、生化学的な反応を担う様々な微小環境を作り出す。しかし、それらがどのような制御を受けて形成されるのかについては不明な点が多い。これまでに分裂期のセントロメアにRNAポリメラーゼIIが局在し、その転写活性が染色体分配に重要な役割を果たしていることが観察されている。そこで本課題では、セントロメア微小環境の形成メカニズムの理解を目指し、セントロメアへのタンパク質の集合動態について、セントロメアから転写されるRNAの役割とその制御を明らかにする。
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研究実績の概要 |
これまでに、クロマチン分子として知られるHP1は、分裂期のセントロメアにおいて、正確な染色体分配に必須なAurora Bキナーゼを含む染色体パッセンジャー複合体 (CPC)に結合し、その機能を制御することを明らかにしてきた。さらなる解析から、クロマチン分子として知られるHP1が転写依存的に分裂期のセントロメアに局在することを見出した。これらを踏まえて令和4年度は、HP1に着目し、HP1のセントロメア微小環境の形成における役割と、HP1とRNAとの関係について検討した。 1) オーキシン・デグロンシステムを用いて、HP1を急速に分解できるヒト培養細胞を作製し、HP1を分解した時のCPCの機能や局在を解析した。その結果、HP1の分解により、Aurora Bの基質である動原体タンパク質のリン酸化の程度が顕著に低下したことに加え、CPCの構成タンパク質であるINCENPの局在もまた有意に減弱した。これらの結果から、HP1はCPCのセントロメアへの濃縮を促進する役割を持つことが示唆された。 2) HP1のセントロメア局在にRNAが直接的に寄与するかどうかを明らかにするために、分裂期の細胞に対してRNase A処理を行った。その結果、HP1だけでなくCPCのセントロメア局在は減弱した。この結果は、オーキシン・デグロンシステムを用いてHP1を分解した時の観察結果とよく一致する。また、HP1の減弱の程度は、CPCと比較してより顕著であった。これらの結果から、RNAは、Aurora Bキナーゼが機能する微小環境の重要な構成分子であり、特にHP1のセントロメア局在に寄与することが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
オーキシン・デグロンシステムを導入することで、細胞内のHP1を30分以内に検出限界以下まで分解することが可能となり、これまでは困難であった分裂期特異的なHP1の機能解析を進めることができたため。また、セントロメア微小環境の形成におけるRNAの役割の一端が見えてきており、どのようなRNAが寄与するのかを明らかにすることで、セントロメアの機能制御を理解するための新たな足掛かりが得られると期待される。
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今後の研究の推進方策 |
どのようなRNAがHP1のセントロメア局在に寄与するのか、そのRNAを同定することを試みる。同定された標的RNAについて、細胞周期における発現制御や局在観察を進める。加えて、がん細胞ではHP1のセントロメア局在が損なわれているため、がん細胞での標的RNAの制御についての解析も併せて進めたい。
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