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力学的細胞間相互作用によるタイリングパターン制御機構の解明

公募研究

研究領域競合的コミュニケーションから迫る多細胞生命システムの自律性
研究課題/領域番号 22H05621
研究種目

学術変革領域研究(A)

配分区分補助金
審査区分 学術変革領域研究区分(Ⅲ)
研究機関金沢大学

研究代表者

佐藤 純  金沢大学, 新学術創成研究機構, 教授 (30345235)

研究期間 (年度) 2022-06-16 – 2024-03-31
研究課題ステータス 交付 (2023年度)
配分額 *注記
11,050千円 (直接経費: 8,500千円、間接経費: 2,550千円)
2023年度: 5,590千円 (直接経費: 4,300千円、間接経費: 1,290千円)
2022年度: 5,460千円 (直接経費: 4,200千円、間接経費: 1,260千円)
キーワードタイリング / ショウジョウバエ / 複眼 / 力 / アクチン繊維 / 力学的細胞間相互作用 / 個眼 / 放射状アクチン繊維 / 力学的細胞競合
研究開始時の研究の概要

多くの細胞競合研究において、シグナル分子を介した細胞間相互作用が着目されているが、細胞間に働く物理的な力によって生じる力学的細胞競合機構の存在も明らかにされている。しかし、このような力学的細胞競合が正常な発生過程においてどのような働きをしているのか、特に発生過程のパターン形成における役割はほとんど分かっていない。本研究ではショウジョウバエの複眼を構成する個眼どうしが細胞内圧によって押し合うことで、規則正しい6角形タイリングパターンを形成する現象に着目し、力学的細胞間相互作用によるパターン形成機構を解明する。

研究実績の概要

多細胞生物の発生過程において、細胞はシグナル分子を介した相互作用だけでなく、物理的な力によって力学的に競合する。しかし、このような力学的細胞競合が正常な発生過程においてどのように働いているのか、その機構は不明である。本研究ではショウジョウバエの複眼を構成する個眼が押し合うことで、規則正しい6角形タイルパターンを形成する現象に着目する。個眼細胞内には放射状に配置したアクチン繊維が見られ、その収縮力・伸長力が個眼の形状を制御すると考えられる。放射状アクチンを介した力のフィードバックの分子基盤を解明するため、以下の点を明らかにした。
1 超解像ライブイメージングによる放射状アクチンを構成する蛋白質局在: 様々なアクチン繊維結合蛋白質のGFP融合系統を入手し、これらの系統を用いた超解像ライブイメージングにより、放射状アクチンを構成する蛋白質の時空間的な変化を明らかにした。2 レーザーアブレーションによる力の測定: 細胞膜や細胞質の一部をレーザーアブレーションによって破壊し、その力学応答を調べた。3 RNAiによるアクチン結合分子の機能解析: RNAiスクリーニングにより、放射状アクチンの伸長に必要な因子および放射状アクチンによる力の制御機構に関与する候補分子を探索した。4 磁気ビーズを使った外力付与実験: 蛍光磁気ビーズを網膜上に配置した状態でライブイメージング中に磁場を与え、外力を加えた時の細胞の応答を解析することを試みた。細胞表面の固さをAFMを用いて計測することを試みた。5 アクチン繊維のナノスケール構造の解明: 放射状アクチン繊維のナノスケール構造を明らかにするため、細胞内AFMや透過型電子顕微鏡を用いた解析に取り組んだ。6 細胞形態の数理モデルとして一般的に用いられるバーテックスモデルに細胞を回転させる力を導入したシミュレーションを行った。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

アクチン繊維が発生する力が外力に応答して変化する現象はこれまで人工的な系において示されているが、本研究ではショウジョウバエ複眼の発生過程に着目し、生体内においてアクチン繊維による力制御の構造的基盤を解明する。成長する複眼を構成する個眼細胞内には放射状に配列したアクチン繊維が見られ、これが収縮力・伸長力を発生するとともに、外力に応答すると考えられる。この放射状アクチン繊維のナノスケール構造および力学的応答の構造的基盤は不明である。本研究では超解像顕微鏡、透過型電子顕微鏡を組み合わせ、放射状アクチンが外力に応答して収縮力・伸長力を変化させる構造基盤を解明することを目指す。
超解像ライブイメージングの撮影条件を検討することで、従来よりも遙かに高速に撮影することに成功した。その結果、放射状アクチンが個眼の内側から外側に向かって流れるような挙動を示すこと、また、アクチン繊維の乱雑な配列が徐々に整列し、平行に揃うとともに、個眼細胞の形態が凹から凸へと変化する様子を見出している。細胞質中のレーザーアブレーションから、放射状アクチン繊維が個眼の細胞膜を押したり引いたりする可能性が示唆されており、この結果はバーテックスモデルに細胞膜の回転力を導入したシミュレーション結果と一致している。RNAiスクリーニングも順調に進展しており、興味深い候補遺伝子が同定されている。磁気ビーズを使った外力付与やAFM・透過型電子顕微鏡を用いた解析は現在検討中となっているが、全体としては順調に進展していると言えるだろう。

今後の研究の推進方策

放射状アクチンを介した力のフィードバックの分子基盤を解明するため、以下の解析を進める。
1 超解像ライブイメージングによる放射状アクチンの挙動の解析: 超解像ライブイメージングによって放射状アクチンと細胞膜を同時に撮影し、両者の時空間的な対応関係を明らかにする。2 レーザーアブレーションによる力の測定: 細胞膜や細胞質の一部を様々なパターンで破壊し、その力学応答を解析する。3 RNAiによるアクチン結合分子の機能解析: RNAiスクリーニングにより得られた候補分子の変異体を用い、RNAiによる表現型と比較する。これら候補分子の発現パターンを調べ、放射状アクチンとの関係性を解析する。4 磁気ビーズを使った外力付与実験: 蛍光磁気ビーズを網膜上に配置した状態でライブイメージング中に磁場を与え、外力を加えた時の細胞の応答を解析することを試みる。蛍光顕微鏡とAFMを組み合わせた装置を用い、細胞表面の固さをAFMを用いて計測すること、さらに細胞内の固さ測定を試みる。5 アクチン繊維のナノスケール構造の解明: 放射状アクチン繊維のナノスケール構造を明らかにするため、細胞内AFMや透過型電子顕微鏡を用いた解析に取り組む。6 細胞形態の数理モデルとして用いられるバーテックスモデルに細胞膜の曲率を組み込んだBubbly Vertex Modelを用いて、複眼における細胞形態のシミュレーションを試みる。

報告書

(1件)
  • 2022 実績報告書
  • 研究成果

    (11件)

すべて 2023 2022 その他

すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 4件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 3件、 招待講演 1件) 図書 (1件) 備考 (1件)

  • [国際共同研究] Oxford University(英国)

    • 関連する報告書
      2022 実績報告書
  • [雑誌論文] Identification of genes regulating stimulus-dependent synaptic assembly in <i>Drosophila</i> using an automated synapse quantification system2022

    • 著者名/発表者名
      Osaka Jiro、Yasuda Haruka、Watanuki Yusuke、Kato Yuya、Nitta Yohei、Sugie Atsushi、Sato Makoto、Suzuki Takashi
    • 雑誌名

      Genes & Genetic Systems

      巻: 97 号: 6 ページ: 297-309

    • DOI

      10.1266/ggs.22-00114

    • ISSN
      1341-7568, 1880-5779
    • 年月日
      2022-12-01
    • 関連する報告書
      2022 実績報告書
    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Cutting edge technologies expose the temporal regulation of neurogenesis in the Drosophila nervous system2022

    • 著者名/発表者名
      Sato M., and Suzuki, T.
    • 雑誌名

      Fly

      巻: 16 号: 1 ページ: 222-232

    • DOI

      10.1080/19336934.2022.2073158

    • 関連する報告書
      2022 実績報告書
    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Tiling mechanisms of the Drosophila compound eye through geometrical tessellation2022

    • 著者名/発表者名
      Takashi Hayashi, Takeshi Tomomizu, Takamichi Sushida, Masakazu Akiyama, Shin-Ichiro Ei, Makoto Sato
    • 雑誌名

      Current Biology

      巻: 32 号: 9 ページ: 1-9

    • DOI

      10.1016/j.cub.2022.03.046

    • 関連する報告書
      2022 実績報告書
    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Quantitative analysis of the roles of <scp>IRM</scp> cell adhesion molecules in column formation in the fly brain2022

    • 著者名/発表者名
      Lee Yunfei、Wang Miaoxing、Imamura Kousuke、Sato Makoto
    • 雑誌名

      Development, Growth &amp; Differentiation

      巻: 65 号: 1 ページ: 37-47

    • DOI

      10.1111/dgd.12834

    • 関連する報告書
      2022 実績報告書
    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] Tiling mechanisms of the compound eye through geometrical tessellation2023

    • 著者名/発表者名
      Hayashi, T., Sushida, T., Akiyama, M., Ei, S., Sato, M.
    • 学会等名
      64th Annual Drosophila Research Conference
    • 関連する報告書
      2022 実績報告書
    • 国際学会
  • [学会発表] 幾何学分割による複眼のタイリング機構2022

    • 著者名/発表者名
      佐藤 純
    • 学会等名
      日本視覚学会
    • 関連する報告書
      2022 実績報告書
    • 招待講演
  • [学会発表] Tiling mechanisms of the compound eye through geometrical tessellation2022

    • 著者名/発表者名
      Hayashi, T., Sushida, T., Akiyama, M., Ei, S., Sato, M.
    • 学会等名
      Neuro2022
    • 関連する報告書
      2022 実績報告書
    • 国際学会
  • [学会発表] Bi-directional Eph/Ephrin signaling organizes the columnar structure under the control of Neurexin in the fly brain2022

    • 著者名/発表者名
      Wang, M., Sato, M.
    • 学会等名
      Japanese Society of Developmental Biologists
    • 関連する報告書
      2022 実績報告書
    • 国際学会
  • [図書] Getting Started in Mathematical Life Sciences ~From MATLAB programming to computer simulations~2023

    • 著者名/発表者名
      Makoto Sato
    • 総ページ数
      190
    • 出版者
      Springer
    • ISBN
      9789811982569
    • 関連する報告書
      2022 実績報告書
  • [備考]

    • URL

      https://fsosato.w3.kanazawa-u.ac.jp/index.html

    • 関連する報告書
      2022 実績報告書

URL: 

公開日: 2022-06-20   更新日: 2024-12-25  

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