研究領域 | ジオラマ環境で覚醒する原生知能を定式化する細胞行動力学 |
研究課題/領域番号 |
22H05669
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研究種目 |
学術変革領域研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
審査区分 |
学術変革領域研究区分(Ⅳ)
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
深澤 遊 東北大学, 農学研究科, 助教 (30594808)
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研究期間 (年度) |
2022-06-16 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
5,720千円 (直接経費: 4,400千円、間接経費: 1,320千円)
2023年度: 2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
2022年度: 2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
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キーワード | 菌類 / 菌糸 / 行動 / 知能 / シグナル伝達 / 菌糸体 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、人工的に調整したマイクロコズムにおいて菌糸体に様々な刺激を与え、それに応じて形成される菌糸ネットワークの構造を定量化するとともに、菌糸体内部における情報伝達物質・電気信号の分布の測定、遺伝子発現のエピジェネティックな変化を検出することにより、刺激に対する菌糸体の行動と情報の保持・伝達の関係を定量的に明らかにすることを目指す。具体的には、(1)画像解析によるネットワーク構造の定量化、(2)蛍光バイオマーカータンパク質による情報伝達物質のバイオイメージング、(3)DNA修飾の検出、(4)菌糸体の動態シミュレーションモデルの開発を行う。
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研究実績の概要 |
本研究では木材腐朽性担子菌類チャカワタケ(Phanerochaete velutina)の培養菌糸体を用い、さまざまな培養条件での菌糸体の成長、行動、分解特性を調べた。まず、基本的な木材分解活性を他の4種の木材腐朽菌と比較し、他種と同様に8ヶ月で16%程度の重量減少を8立方cmのアカマツ材にもたらすことがわかった(Fukasawa & Kaga 2022)。また、土壌培地上で接種源の角材から新しい木材への移動に関して、木材までの距離が菌糸体の行動に与える影響を調べ。その結果、近い木材には完全に菌糸体が移動してしまうが遠い木材には完全に移動せず、2つの木材を繋ぐように菌糸束を存続させることがわかった(Fukasawa & Ishii 2023)。これは資源の距離に応じた菌類の採餌効率を反映した行動だと考えられる。こういった採餌のコストと利益の差し引きに応じた「最適採餌戦略」は動物においてよく研究されてきているが、菌類においても同様に採餌のコストと利益に応じた行動をとっている可能性が示唆された。 次に、野外の森林の地下に菌糸ネットワークを張り巡らせている菌根菌を対象として、生物のシグナル伝達によく用いられている電気的な活性を測定した。東北大学川渡フィールドセンターのコナラが優占する森林の林床に発生していた外生共生菌オオキツネタケ(Laccaria bicolor)の子実体(キノコ)6本に電極を設置して電位変化を測定したところ、降雨に伴いキノコの電位が増加した。時系列因果解析の結果、キノコ間に方向性のある有意な電位の伝達が見られた(Fukasawa et al. 2023)。これは地下の菌糸を介した電気的シグナル伝達の存在を示唆しているのかもしれない。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初予定していた土壌培地を用いた実験方法を使い、チャカワタケ菌糸体の刺激に応じた様々な行動特性を新たに発見することができた。木材分解力を他の木材腐朽菌と比較したうえ、木材までの距離が菌糸体の行動に与える影響を明らかにした。また、当初想定していなかったキノコに直接電極を設置する方法と時系列因果分析を組み合わせることにより、野外でキノコの電位伝達と考えられる現象を測定することに成功した。
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今後の研究の推進方策 |
チャカワタケ菌株へカルシウムイオンバイオマーカータンパク質の遺伝子を導入するための形質転換実験を継続して、形質転換菌株の作出を目指す。
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