研究領域 | ジオラマ環境で覚醒する原生知能を定式化する細胞行動力学 |
研究課題/領域番号 |
22H05681
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研究種目 |
学術変革領域研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
審査区分 |
学術変革領域研究区分(Ⅳ)
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研究機関 | 島根大学 |
研究代表者 |
広橋 教貴 島根大学, 学術研究院農生命科学系, 教授 (90376997)
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研究期間 (年度) |
2022-06-16 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
5,720千円 (直接経費: 4,400千円、間接経費: 1,320千円)
2023年度: 2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
2022年度: 2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
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キーワード | 走光性 / 海洋ゴミ / 甲殻類 / ウミホタル / 走光性反転 / ハイスピード運動解析 / 大規模データ解析 |
研究開始時の研究の概要 |
「光」は動植物に行動や運動のベクトルを与え、個体のみならず集群さらに生態系を動かすエネルギーとなっており、走光性はシアノバクテリアから脊椎動物まで生命進化で一貫して維持されてきた。また動物における「走光性の逆転現象」は古くから知られ、概日リズムによるものから1秒以内で惹起されるものまで多様である。我々は近年、アルテミアノープリウス幼生において、海洋ゴミの主要成分であるタイヤゴムに含まれる不揮発性水溶性化合物が極めて低い濃度で瞬時に走光性を正から負へと逆転させることを見いだした。このメカニズムを明らかにするとともに海洋廃棄ゴムの成分が生態系へ与えるインパクトを検証する。
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研究実績の概要 |
「光」は動植物に行動や運動にベクトルを与え、個体のみならず集群さらに生態系を動かすエネルギーとなっている。その代表例である走光性はシアノバクテリアから脊椎動物まで生命進化で一貫して維持された形質と言える。「走光性の逆転現象」は古くから知られ、地球最大規模のバイオマス移動にも関わる。海洋ゴミに含まれる物質が海洋プランクトンの走光性運動を攪乱し、それが海洋生態系に与えるインパクトを明らかにする。ミリ秒の運動ダイナミックスからジオラマ環境下での再現、更には海洋環境測定により、スケールレス・ボーダーレスなアプローチを展開する。今年度は、甲殻類ウミホタルをメインに用いて実験を行った。ウミホタルは隠岐の島都万地区で採集し、これを夏から翌3月まで松江キャンパスの研究室で定温(23oC)、恒暗下で飼育する飼育室を設置した。これにより実験可能な期間がこれまでの4ヶ月から半年に延長された。ウミホタルの走光性反転について、新たに分かったことは次の通りである。①嫌気条件に置くと負から正へ逆転する。②11月以降自然明暗環境下で正の走光性を示す割合が増える。③この個体に負→正に逆転を誘起する次亜塩素酸を添加しても正→負には逆転しない。以上より、ウミホタルの走光性逆転は野外環境のごく自然の変化でも起こりえること、大型甲殻類で知られている概日周期による走光性逆転に類似して、年周期のような季節変動が起こる可能性が分かった。今年度は遊泳付属肢のハイスピード運動解析の装置を小型化し、さらにパソコン制御システムを改良し、より簡便・迅速に撮影できるようにした。また、ハイスピード撮影後の運動解析においてもImageJソフトだけで水かき運動の周波数、角度を自動測定できるようにした。これによりこれまで一部手作業であった部分が無くなり、大規模なデータ解析が可能となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
実験遂行の全般的な部分で、やはりまだコロナによる行動制限の影響が少なからずあったが、計画していた実験の基礎となる、装置・システムの見直しと改良が出来た。これによって、大規模なデータ解析が容易となることが期待できる。
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今後の研究の推進方策 |
ウミホタルについては当該年度の予備的な実験結果を検証し、さらにこれまでの結果と合わせて論文とする。今後の計画として、2023年度前半はアルテミアの走光性実験をメインに行い、夏以降に再びウミホタルをつかった実験を行う。これによってノープリウス眼をもつ甲殻類2種において、共通する走光性の制御機構の理解解明に努める。
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