研究領域 | ジオラマ環境で覚醒する原生知能を定式化する細胞行動力学 |
研究課題/領域番号 |
22H05690
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研究種目 |
学術変革領域研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
審査区分 |
学術変革領域研究区分(Ⅳ)
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研究機関 | 芝浦工業大学 |
研究代表者 |
吉村 建二郎 芝浦工業大学, システム理工学部, 教授 (10230806)
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研究期間 (年度) |
2022-06-16 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
5,720千円 (直接経費: 4,400千円、間接経費: 1,320千円)
2023年度: 2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
2022年度: 2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
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キーワード | 走性 / 温度受容 / TRPチャネル / 単細胞生物 / クラミドモナス / 繊毛 / 細胞運動 / 機械受容 |
研究開始時の研究の概要 |
繊毛は、機械刺激などさまざまな刺激に応じて運動を調節し、生理機能を果たしている。クラミドモナスは、遊泳中に障害物に衝突すると、繊毛の打ち方を逆転させ後退遊泳し障害物を避けるが、この回避反応には繊毛基部に発現するTRPチャネルのひとつであるTRP11が必須である。本研究では、TRP11ノックアウト株を用いて、TRP11によって起こる回避反応以外のさまざまな機械反応を明らかにする。さらに、改変TRP11分子の作成と解析により、TRP11の機能の分子メカニズムを解明する。本研究によって、機械受容による繊毛の出力制御のメカニズムが解明され、繊毛関連疾患の理解に繋がると期待される。
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研究実績の概要 |
温度は、酵素反応速度や生体物質の物性に影響を与えるので、生物にとって最重要な環境因子のひとつである。そのため、多くの単細胞生物は好ましい温度に集まる行動、すなわち「走熱性」を示す。本研究ではクラミドモナスの走熱性のメカニズムの解明を目標に研究を行った。 本年度では、走熱性の温度センサーの探索を行った。動物の温度センサーとしてTRPチャネルが知られているので、クラミドモナスの既知のTRPチャネルのノックアウト細胞で走熱性を検定した。その結果、TRP2の変異体は走熱性を示さないことを見出した。TRP2を野生株に戻し交配し、その子孫の表現型と遺伝子型を調べたところ、走熱性をしまさないという表現型がTRP2の変異とリンクしていることが確認できた。遊泳速度の温度依存性を調べたところ、野生株は温度が高いほど遊泳速度は速かったが、TRP2ノックアウト株ではほとんど遊泳速度は速くならなかった。遊泳の自発的な方向転換の頻度の温度依存性も、野生株にはあったが、TRP2変異体にはなかった。したがって、TRP2は走熱性に必要な温度感受性TRPチャネルであると考えられる。 クラミドモナスは、いままでの実験条件では負の走熱性しか示さなかったが、培養条件や走熱性実験のときの溶液や光環境によって、走熱性の強弱や向きが変化することを見出した。詳細については研究を継続している。 クラミドモナスの走熱性における運動制御を調べる目的で、広い視野で温度勾配下をクラミドモナスがどのように至適温度に集まるかを撮影できる装置の開発を進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画では、本年度では以下の3つの計画があった。 (1) クラミドモナスの走熱性の向きと集合温度に影響する環境要因の解明 (2) クラミドモナスが走熱性を示すときの細胞行動の解明 (3) クラミドモナスの走熱性の温度センサーの解明 研究実績の概要で述べたように、いずれの計画でも想定していた進捗を達成している。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の3つの実験についてそれぞれ推進方策を述べる。 (1) クラミドモナスの走熱性の向きと集合温度に影響する環境要因の解明:培養条件、実験液、実験の光環境により走熱性の強弱と向きが変わることが分かってきたので、さらに解明を進める。走熱性のメカニズムと関連させ、各条件における遊泳速度や自発的な方向転換の温度依存性を調べる。 (2) クラミドモナスが走熱性を示すときの細胞行動の解明:温度勾配下の細胞の行動を観察する技術的な目途はついたので、実験装置の完成を目指す。データを取得し、解析を行う。 (3) クラミドモナスの走熱性の温度センサーの解明:TRP2が温度センサーであることを支持するデータが得られたので、電気生理学的実験ができるよう、ほ乳類培養細胞での実験を検討する。共同実験も検討する。TRP2の作動機構を分子レベルで解明するため、TRP2によるレスキュー実験を進める。
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