研究概要 |
植物に数多く存在するLRR型受容体キナーゼには機能的に興味深い分子群が見出されており注目を集めているが, 大半がリガンド未知のまま残されている. 我々はリガンド-受容体の直接的な結合を指標として, ペプチドシグナルを直接結合する受容体の同定を通じて, 植物のかたちづくりに関わる細胞間情報伝達系の解明することを目的とし, 以下の成果を挙げた. ①生理活性を完全に維持したアラビノシル化CLV3ペプチド[Ara3] CLV3の化学合成を達成した. また糖鎖の長さがCLV3ペプチドの生理活性に重要であることを示した. 加えて[Ara3] CLV3のコンフォメーション解析を行い, 糖鎖が付加することでCLV3ペプチドのC末端領域の立体構造が変化することを見出し, 立体構造の変化がCLV3のCLV1への結合を強めていることが推測された. この成果を論文として発表した(Shinohara and Matsubayashi (2013) Plant Cell Physiol. 54 369-374). ②光反応性[Ara3] CLV3ペプチドを用いたフォトアフィニティーラベルを行い, CLV3ペプチドがCLV1に加えてBAM1にも直接結合することを見出した. 競合実験の結果, CLV1の場合以上にCLV3のアラビノシル化修飾がBAM1への結合に重要であることを確認した, BAM1がもうひとつのCLV3受容体であることを確認するためbam1変異体の解析を行った. clv1 bam1二重変異株は茎頂が著しく肥大し, clv3変異株の茎頂と同程度の大きさを示した. またclvl bam1二重変異株はCLV3ペプチド非感受性であり, CLV3ペプチド投与により茎頂の肥大を回復できないこと, CLV3ペプチド投与によりMUSの発現量が減少しないことを確認した. これらの結果より, 茎頂メリステムにおけるCLV3ペプチドの受容体としてBAM1がCLV1と重複して機能していることを示した.
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